国内のShopify経済圏拡大 大手ブランドも狙う2023年事業戦略

ECのミカタ編集部

左からShopify Japan株式会社パートナーシップ兼事業開発部長 徳満泰彰氏、Shopify Japan株式会社シニア セールスリード 伊田聡輔氏、Shopify Japan株式会社カントリー・マネージャー 太原真氏

世界最大級のコマースプラットフォーム、Shopify(ショッピファイ)の日本法人Shopify Japan 株式会社(本社:東京都渋谷区)が2023年2月6日、リモートで「事業戦略記者説明会」を行った。同社は2023年の注力領域として、「大手のブランドが使えるような体制作り」「国内事業者との提携」「国内の人材投資」の3点を挙げた。

カナダのスノーボード販売サイトが出発点

カナダのオタワに拠点を置く多国籍Eコマース企業Shopifyの日本法人、Shopify Japan 株式会社が「事業戦略記者説明会」を行った。

2006年にトビアス・ルケ氏がカナダでスノーボード用品のオンラインショップ「Snow devil」を開設し、その後Eコマース用サイトの改良を重ね、Shopifyとして事業を転換。いまや米国のEコマース全体で10%シェアを占める。一方、2017年に設立されたShopify Japan株式会社は、新興ECプラットフォームとして「BASE」や「STORES」とともに脚光を浴び、越境ECに強い外資系プラットフォームとして着実にシェアを拡大してきた。

そんなShopify Japanは2023年、どこを目指すのか。

コロナ禍でも堅調な伸びを示すShopify Japan(※左は事業者数、右は流通総額)

コロナ禍におけるEC市場状況の変化

カントリー・マネージャー太原真氏は、「コロナ後の市場状況は大きく3つの点で大きく変わっている」と話す。

「1つ目は、顧客ニーズの多様化。今は物ではなく体験やサービスを求めている顧客が多い。2つ目は、コロナが生んだデジタル消費者が実店舗で求めているショッピング体験。3つ目は、多くの企業が持っているスクラッチ(スクラッチ:オリジナルのシステムをゼロから開発すること)の変化の必要性」と太原氏。

企業の多くがスクラッチでECサイトの構築を行っているが、システムのメンテナンス費用やセキュリティ、スピードを考慮するとコスト面で負担が大きい。今後小売企業・事業を成長させていくためには、消費者が求める体験・サービスへの投資や開発、エンゲージメント向上に時間や人をフォーカスさせることが求められるが、その時にスクラッチのプラットフォームは、最大のボトルネックになると予測。「これに対応していくための日本での最適なコマースプラットフォームがShopify」(太原氏)とした。

2023年の注力領域は3点

続いてShopify Japan株式会社シニア セールスリード 伊田聡輔氏が、2023年の注力領域について語った。伊田氏によると注力領域は大きく以下の3つ。

1.大手のブランドやエンタープライズと言われる大規模企業、あるいは多少複雑なビジネス構成を持っている事業者をShopify上でサポートするための体制作り
2.Shopify上でビジネスをする事業者をサポートするための国内事業者、国内外部事業者との協力提携
3.Shopifyの日本市場に対する人、物、金の投資

注力領域[1]…大手がShopify上でビジネスをできる環境作り

「大手がShopify上でビジネスをできる環境作り」については、「Shopify Plusの本格展開」「Commerce Components by Shopifyの体制作り」の2点が大きなテーマだという。

Shopifyの利用料金は月額33ドルから、月額2000ドルまでいろんなプランがあるが、Shopify Plusは一番上の月額2000ドルのプラン。海外でビジネスをしたり、EC外部のITシステムと連携をとったり、チェックアウトのプロセスを自分たちで違う形に修正したいなどのニーズに応えられたりするプランで、全過程でShopify Japanの社員の担当がつきサポートすることが大きな特色。これを国内で本格展開していく。

実際にShopify Plusを国内で導入する場合には、ほぼ9割以上の事業者が何らかの形でShopifyパートナーの会社のサポート、あるいは協力を得ながら進めていく形になる。このShopify Plusのプランに高い実績を持つShopifyパートナーは2021年度では国内12社、22年末には8社増えて国内全体で20社に上る。

「Shopify Japanが日本の事業者の営業担当を採用したのが、2021年の11月。1年ちょっとでこのように日本を代表する知名度の高いブランドがShopify Plus上でのビジネスを始めたということで、これはかなり弊社としても手応えを感じているところ」(伊田氏)

Shopify Plusのパートナー20社

もう1つのテーマは「Commerce Components by Shopifyの体制作り」だ。Commerce Components by Shopifyは2023年1月に本社で初めて製品サービスを発表したサービス。EコマースのShopifyを作るために必要な、あらゆるバックエンドの情報データを一括で管理するオールインワンのサービスだ。

だがビジネスが複雑なってくると、このオールインワンはいらないという事業者が出てくる。「代表的な例ではストアフロントは自分たちで開発したいからバックエンドのデータベースだけ使わせてくれとか、データベースの方も注文情報と商品情報だけ使ってユーザーデータベースはちょっと外から持ってきたいとか。つまりオールインワンではなく、バラバラにShopifyを導入したいというニーズにお応えするのがコマースComponentだ」(伊田氏)

このサービスを実際に提供できるよう、今年1年間で準備を整える考えだ。

注力領域[2]…事業者との協力提携

伊田氏によると、Shopifyが日本で事業をしていく上で提携を進めなければいけない地場の事業者カテゴリーは「配送」と「決済」。

例えば配送の場合「明日の午後2時から4時までの間に、クール宅急便で届けてほしい」といった、日本特有のニーズがある。決済も、例えばコンビニ決済のような日本特有のサービスがあり、こうしたものをスムーズにShopify上で組み合わせて利用できる環境を整えることが非常に重要だ。2022年はこの配送と決済の両方で、かなり目に見える成果が挙げられたという。

配送は、日本郵便や三井物産の協力を得て、Plus Shippingというサービスを2022年10月にローンチしたことが大きい。また決済は、2021年に決済事業者(payment gate)がShopify上での支払いの手続きを簡単に実装できるような枠組み「パートナーpaymentプラットフォーム」を作った。この枠組みの中で国内の複数の決済事業者が、Shopify上でのビジネスに参画しているという。

もう1つ決済に関しては2022年にGMO インターネットグループで総合的な決済関連サービスおよび金融関連サービスを提供するGMO ペイメントゲートウェイ株式会社(東京都渋谷区)と連携も開始。Shopifyのマーチャント(事業者)向けに、クレジットカード決済およびコンビニエンスストア決済のサービスの提供を開始した。そのおかげで「他のプラットフォームからShopifyに乗り換えてビジネスを展開される際も、payment gateを変える必要がなくなった。かなりインパクトのある事業展開だったのでは」と伊田氏は振り返る。

注力領域[3]…日本市場に対する投資

最後にShopify Japanの投資について伊田氏は「2022年で日本語によるサービスサポートがかなりできるようになった。それが当社のようなグローバル企業にとっては一つの大きなベンチマーク。今後は事業者に関連するファンクションを日本ベースの日本語を喋れる社員でそろえたい」とした。

2023年、Shopify Japanがますます日本国内で躍進するのか、注目が集まりそうだ。


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