保税倉庫とは?メリットや費用、利用までの手順をわかりやすく解説!
国内外でECサイトが日常的に利用される今、日本での生産・販売だけでなく海外展開を視野に入れているEC事業者も多いのではないでしょうか?
今後もニーズが増していくと予想される越境ECですが、仮に海外から商品を取り寄せて日本国内で販売しようとする場合、輸入手続きが済んでいない商品をどのように保管するかという問題が挙げられます。
そこで今回は、保税の状態で外国貨物を保管できる「保税倉庫」の概要をはじめ、メリットや具体的な利用方法を解説していきます。
■目次
・保税倉庫とは?
・保税倉庫のメリット
・保税倉庫の利用方法とは?
・保税倉庫の保管料はいくらかかる?
・保税倉庫を利用する際に気を付けること
・まとめ
保税倉庫とは?
保税倉庫とは、「保税地域」や「保税蔵置場」とも呼ばれ、外国から届いた貨物の関税が一時的に留保された状態で保管できる倉庫のことを指します。法の制限がある「保税地域」を設置することで、貿易の秩序維持をはじめ、関税の徴収の確保や文化交流を図ることが目的です。
「保税倉庫」の他にも、「保税展示場」「保税工場」「総合保税地域」「指定保税地域」の5種類があり、保税地域であれば、貨物に課税が課されない状態で、さまざまな活動ができます。
保税地域の種類や機能の詳細は以下の通りです。
保税展示場は国際規模で開催される博覧会などの会場として提供され、関税が課されないまま外国商品の展示が許可されています。保税工場も同様で、外国貨物に関税を課さないまま、工場で加工や製造ができる場所です。
保税倉庫(保税蔵置場)や保税展示場、保税工場が持つ機能を活用できる地域として、関税長が許可した場所を「総合保税地域」と言います。
また、保税倉庫に保管することが難しい大型の貨物や、特殊な形状の貨物を一時的に保管する場所を「指定保税地域」と言い、主に税関所の近くに設置されるケースが多いです。
保税倉庫のメリット
では、課税が課されないまま保管できる保税倉庫を利用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
大きく3つのメリットがありますので、それぞれ解説していきます。
輸送の効率化
保税倉庫では、国内に輸入させるまでの申告をはじめとする輸入通関処理や、検品、加工、出荷などの工程をすべて行うことが可能です。輸入通関後、出荷までの工程を1か所にすることで、無駄な貨物の移動がなくなりスムーズな出荷が実現します。
それだけでなく、出荷のために貨物を移動させる手間や、輸送のコストが削減できるなどのメリットがあります。
高セキュリティーで安全に保管できる
先述したように、保税倉庫は税関の管轄のもと、外国貨物を保管するため法の規制によって安全に保管することができます。
通関手続きの途中で商品が破損したり、商品が汚れるといった心配や保税倉庫のセキュリティ対策も徹底しているため安心です。大切な貨物を安全に保管できるということは、その後の取引きを円滑に進めることができるでしょう。
経費削減
保税倉庫に保管された外国貨物は、輸入させる必要が出るまで関税や消費税が発生しません。
そのため、先に税金を支払う必要がないので経費を削減できますし、万が一、トラブルによって保税倉庫から輸出元へ返送する必要があっても、税金を支払わずに海外へ返送することも可能です。
不良品や法改正により商品が輸入できなくなるケースもあるため、このような場合に関税が課されないのはメリットだと言えます。さらに、保税倉庫内で起きた商品の破損などにより、売り物にならなくなった場合でも関税などの支払いをすることなく破棄することができます。
保税倉庫の利用方法とは?
続いては、実際に保税倉庫を利用して外国貨物を輸入するまでのフローについてご紹介していきます。
保税倉庫を利用するには、大きく4つの手順がありますので、それぞれ見ていきましょう。
手順1:搬入作業
まず、税関により「外国貨物仮陸揚の届出」を提出することで、海外から届いた貨物は荷捌き場に置かれます。
その後、順次、保税倉庫へと貨物が搬入されていきますが、このとき手数料などの費用はかかりません。
手順2:他法令手続きに関する検査
「他法令」とは、関税以外の法律で、他法令の証明や確認が取れなければ輸出入の許可を受けることができません。
そのため、保管する貨物の内容を確認し、規制対象ではないかを検査します。貨物の内容によっては、植物防疫法や、食品衛生法など、複数の省庁によって許可を得る必要があるため、検査に時間を要する場合もあります。
手順3:輸入申告
他法令の承認が下りた後は、貨物を輸入するために関税長の許可を得る「輸入申告」を行います。
輸入申告書の他に以下の書類が必要です。
・仕入書(インボイス)
・包装明細書
・船荷証券又は海上運送状(航空貨物については、航空貨物運送状)
・運賃明細書
・保険料明細書
貨物の内容によっては、そのほかにも必要な書類が変わってきますので、事前に確認しておくと良いでしょう。
手順4:輸入許可と出庫
書類審査、貨物検査を通過すると、外国貨物から国内貨物へと取り扱いが変更されます。
続いては、いよいよ国内に貨物を引き取るための準備が必要です。輸入者が関税を支払い、保税倉庫内で行うことができる検品や梱包などの工程を経て、貨物が出庫されていく流れとなります。
保税倉庫の保管料はいくらかかる?
関税が課されないまま保管できるとは言え、当然保税倉庫に貨物を保管する場合は費用が発生します。保税倉庫の契約方法や、保管料の算出方法について詳しく見ていきましょう。
2種類の契約方法
保税倉庫を借りる場合の契約方法は、以下2つがあります。
・寄託契約
・賃貸借契約
1つ目の「寄託契約」とは、貨物の保管だけでなく在庫や入出庫の作業全般を含めて一定のスペースを借りる契約方法です。貨物の管理を業者が請け負うため、保管料は「保管している商品」ごとに発生します。
つまり、保管貨物の量がそこまで大量ではない場合や、時期によって在庫の動きに差が出る場合は、保管料を柔軟に対応させることが可能です。
2つ目の「賃貸借契約」は、倉庫内のスペースのみを借りる契約方法です。
寄託契約とは違い、倉庫業者は在庫などの貨物の管理は行わないため、「借りているスペースのみ」に保管料が課されます。賃貸借契約がおすすめのケースは、大量の荷物を保管したい場合や倉庫内を好みのレイアウトにして保管したい場合です。保管する貨物の内容によって借りる倉庫の契約方法を変えることで、無駄なコストを削減することができるでしょう。
保管料を算出する5つの要素
保管料の算出方法はさまざまで、料金を決めるための要素は主に以下5つの基準があります。
・容積
商品が入った貨物の縦、横、高さから容積を算出し、保管料を割り出す方法です。
容積(立方メートル:㎥)に対して費用が発生します。
・重量
貨物の重さによって算出され、大きさに制限はありません。
1キロや1トンといった単位で算出されます。
・個数
預ける商品1個あたりに単価が設定され、倉庫に預けた商品の数で保管料が決まります。
商品の大きさがほぼ同じ場合に使用されやすい算出方法です。
・坪数
1坪あたりに単価が設定されており、使用する坪数(面積)で保管料を計算します。
商品のサイズに違いがあったり、梱包されていない場合などを保管する際に多く利用されるのが特徴です。
・パレットの台数
貨物を乗せたバレット数によって保管料を決定する方法です。
使用するパレット1台あたりに単位が設定されており、台数で算出します。
保管料の計算方法
保管料の算出方法はさまざまで、その分だけ計算方法もあります。そのため、自社が扱う貨物に適した保管体系を実現できる倉庫サービスを選定しましょう。
また、保管料の算出期間にも違いがあり、1ヶ月を3期に分割する「三期制」、1ヶ月を2つに区切る「二期制」、月ごとに保管料を算出する「一期制」があります。
ここでは、一般的に用いられることが多い「三期制」を例に、個数による保管料の算出方法をご紹介します。
保管内容
1期ごとの保管単価が100円の場合
・1期の繰越在庫数は10、出庫数は5
・2期の入庫数は15
・3期の入庫数は20、出庫数は30
保管料の計算式
・1期:10×100 = 1,000円
・2期:20×100 = 2,000円
・3期:40×100 = 4,000円
となり、1ヶ月に支払う料金の合計は7,000円となります。
その他、貨物の積み下ろしに荷役料がかかる場合もあるなど、保税倉庫サービスを提供する事業者によって内容は異なりますので、自社にあった保税倉庫を選択してください。また、保税倉庫は、港の周りや空港近くに多いという特徴があります。倉庫を選ぶ際は、保管する貨物の輸入先や輸送コストが抑えられる立地を選定するのがおすすめです。
保税倉庫を利用する際に気を付けること
保税倉庫を利用するには、先ほどご紹介したステップを漏れなく遵守することが必要です。
内容の記載漏れや数量の過不足があった場合、密輸入として処罰の対象になってしまうため注意しましょう。
また、保税倉庫の利用期間は承認を受けた日から原則として2年と定められており、理由によっては延長も可能ですが、速やかに手続きを完了させることがおすすめです。
輸出入のスケージュールを計画的に立てて、不備がないよう余裕を持ってビジネスを進めていきましょう。
まとめ
今回は、保税倉庫のメリットや利用手順、費用についてご紹介いたしました。保税倉庫は、輸送コストを抑えて、安全に外国貨物を保管できる一時的な保管スペースです。また、保管中の外国貨物を柔軟に流通加工できるため、発送まで迅速に対応できるメリットがあります。
しかし、申請漏れや定められたルールを遵守しなければ、密輸入として処罰の対象となるケースがあるため注意が必要です。保税倉庫の利用を検討している際は、フローをよく理解したうえで、海外ビジネスのEC展開を行っていきましょう。
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