物流倉庫立ち上げの手順とは?立地条件から立ち上げポイントまで徹底解説!

ECのミカタ編集部

取り扱う商品の拡大や発送業務を円滑に進めるため、自社で物流倉庫の立ち上げを検討している企業もいるのではないでしょうか?しかし、これまで物流倉庫を委託していたため、どのような流れで倉庫を立ち上げれば良いか分からないという方がほとんどです。

そこで今回は、新たに倉庫の立ち上げを検討している方向けに、倉庫の種類や自社倉庫を持つメリットやデメリットなどを解説していきます。記事の後半には、実際に自社で物流倉庫を立ち上げる際のフローを解説していますので、是非参考にしてみてください。

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■目次
・物流倉庫とは?
・委託倉庫・自社倉庫のそれぞれのメリットデメリット
・物流倉庫の種類と役割
・物流倉庫立ち上げに押さえておきたい3つのポイント
・物流倉庫立ち上げまでのスケジュールと7つのステップ
・まとめ

物流倉庫とは?

物流倉庫とは、商品が生産者から消費者へ届くまでの過程で「仕分け」や「配送」を行う施設のことを言います。

これまでの物流倉庫は、注文があった商品を保管しておくだけの場所として利用されていましたが、物流倉庫のシステム化により、商品や在庫の管理、ピッキング、梱包など、多種多様なサービスを提供していることが特徴です。

その中で物流倉庫には、「委託倉庫」と「自社倉庫」の2つの種類があります。

委託倉庫


主流である「委託倉庫」とは、生産した商品の入庫や在庫管理、発送業務などのすべてを専門業者へ委託する倉庫です。単に、保管スペースを借りるだけでなく物流業務を一任するため、自社に合ったサービスを提供する業者を選定することが大切になります。

自社倉庫


一方「自社倉庫」とは、商品の生産から保管、管理、受注、梱包、配送などすべての物流業務を社内で一貫して行う施設を指します。そのため、商品保管スペースの確保や、各拠点に配送センターを設けるなど、様々な自社倉庫が必要です。

委託倉庫・自社倉庫のそれぞれのメリットデメリット

2つの種類の倉庫がある中で、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのかを抑えていきましょう。

委託倉庫のメリット・デメリット



委託倉庫のメリット
・物流業務のリソースを削減できる
・短期的な物流倉庫のコスト節約になる
・人材の確保が不要

委託倉庫を利用する最大のメリットは、利益に直結するメインの業務に集中できる点です。受発注や在庫管理などの発送業務全般を委託することで、社内スタッフの時間を有効活用することが可能になります。また物流倉庫のスタッフは管理の専門家であるため、業務の効率化や人的ミスの軽減にも繋がります。

さらに閑散期でも、発送量に応じて費用が変動する仕組みを採用しているケースが多いため、予算に応じて利用することができます。委託倉庫を利用することですぐに一定レベルの運用が行えます。

委託倉庫のデメリット
・将来的な内製化が難しい
・情報漏えいのリスクがある
・ユーザーとの距離が遠い

物流業務を一任することで、社内で物流に関するノウハウを蓄積することが難しくなります。仮に、将来的に自社倉庫で物流業務を一貫して行うことを考えている場合、一からフローを構築することになり、一定レベルに至るまでに時間がかかってしまうことが考えられるでしょう。また、委託先も情報管理には十分配慮していることがほとんどですが、顧客情報や企業機密に関する情報漏洩は、細心の注意が必要です。

物流業務を委託するということは、ユーザーとの間に業者を挟むため、トラブル対応やニーズの把握が遅れ、機会損失に繋がる可能性もデメリットとして挙げられます。

自社倉庫のメリット・デメリット



自社倉庫のメリット
・委託倉庫よりコストを抑えられる場合がある
・利便性の高い独自の物流倉庫を構築できる
・顧客満足度の向上に繋がる

自社倉庫を保有する最大のメリットは、長期的に見ることで委託料を支払い続けるコストと比較した場合にコストを抑えることができ、不動産を担保に事業拡大の融資が受けやすくなるという点です。

また、委託倉庫を利用する場合には、多少なりとも委託先のサービスに準ずる必要がありますが、自社で物流倉庫を保有した場合は、業務フローや設備などの制限を受けずに、自由に倉庫を構築できるのも魅力です。他にも、万が一トラブルが起きた際、自社倉庫であればユーザーと直接やり取りができるため自社の判断で迅速にトラブルを解決でき、結果として顧客満足度の向上に繋がるでしょう。

自社倉庫のデメリット
・コストの負担が大きい
・物流業務を担う人材の確保と運用

自社倉庫のデメリットは大きく2つ挙げられます。

1つ目は、コスト面の問題で、初期費用をはじめ閑散期にも一定の費用がかかってしまう点です。初期費用としては、建物だけでなく倉庫内の設備や棚、運搬車両が必要になり、立ち上げ後は、人件費や光熱費、システム維持費などのランニングコストや、発送数が減る閑散期に入った場合にも一定のコストがかかってしまいます。

2つ目は、物流業界全体の人手不足により、物流経験のある人材の確保が難しいことです。
自社倉庫を立ち上げる場合、自社部門の1つとして倉庫管理業務も含まれることになります。そのため、一定の物流品質を維持するには、ノウハウや経験を有する優秀な人材を雇用することが必要不可欠です。

自社独自のノウハウを持ち、倉庫管理業務に予算をかけられる企業であれば問題ありませんが、人的リソース不足による品質の低下は、企業の信用問題に関わる重要な要素となるので、まずはプロの物流コンサルタントに相談し自社倉庫の立ち上げに向けて、社内一丸となって取り組むことが大切です。

物流倉庫の種類と役割

「物流倉庫」と一言で言っても、在庫管理をメインとする倉庫や、荷捌きや配送業務を得意とする倉庫、流通加工の専門設備が整っている倉庫など特徴は様々です。まずは、自社で取り扱う商品のタイプから、どのような役割を担う倉庫にすべきか検討してみましょう。
ここでは、タイプ別に特徴が異なる5種類の物流倉庫についてご紹介していきます。

DC(Distribution Center)


DCと呼ばれるディストリビューション・センターは、消費者に納品することをメインとした在庫型物流倉庫のことを言います。在庫の保管・管理をはじめ、集荷された荷物を各エリア毎に荷捌き、ピッキングや流通工程を経て発送まで行います。在庫として保管する期間が長いため、広い保管スペースが特徴です。

TC(Transfer Center)


TCであるトランスファー・センターは、保管機能を持たない通過型物流センターのことを言います。荷捌きや配送業務をメインとしており、入荷した荷物をすぐに仕分けして店舗へ一括配送します。そのため、店舗に近い場所に配置される物流センターで、場合によっては積み替えだけを行うケースもあります。ディストリビューション・センターとは違い、在庫を持たないため小規模で運営できますが、作業にスピードが求められるのが特徴です。

PDC(Process Distribution Center)


PDC、プロセス・ディストリビューション・センターは、PC(プロセス・センター)とも呼ばれる高度な流通加工が行える物流倉庫です。ディストリビューション・センターでも、包装やラベル貼りなどの簡易的な流通加工は行うことができますが、プロセス・ディストリビューション・センターでは、専門的な設備が必要となる生鮮食品の加工や部品の組み立てを行うことが可能です。

FC(Fulfillment Center)


フルフィルメント・センターでは、一般的な物流業務の他に返品やクレーム対応、決済処理など多岐にわたるサービスを提供する物流倉庫です。

フルフィルメント・センターであれば、すべての工程を物流センター内で完結することが可能で、バックヤード業務全般を請け負う役割を担います。人件費の削減や、業務効率化を図るため、近年ではAIやロボットの導入が進み、飛躍的な成長が期待されている物流倉庫です。

デポ(depot)


デポとは、小型の物流拠点のことを言い、事業者がエリア単位で配置しているケースが多く見られます。DCやTCから配送された必要最低限の在庫だけを持つことで、ユーザーに商品が届くまでの時間や配送距離の短縮が可能です。高い頻度で迅速に商品を届けることを目的としています。

物流倉庫立ち上げに押さえておきたい3つのポイント

では、実際に自社で物流倉庫を立ち上げるには、どのようなポイントを抑えなければならないのでしょうか?ここでは、経営戦略のカギとも言える3つの重要なポイントについてご紹介していきます。

目的の明確化


物流倉庫の立ち上げには「場所」「規模」「設備」「コスト」など様々な要素を総括して決定しなければなりませんが、その決定の基準となるのが「目的」です。

目的によって物流倉庫の設計から投資すべきコストを算出するため、目的を明確にしたマスタープランが最も重要になります。まずは、現状の課題や問題点を整理して綿密な計画を立てることがポイントです。現在、物流業務を外部へ委託している場合は、ブラックボックス化している仕組みを理解し、課題を見つけていくことから始めていきましょう。

拠点数の算出と立地


拠点コストに配慮し、物流倉庫の拠点数を減らせば配送する距離が長くなるため輸送コストが多くなり、逆に輸送コスト削減やリードタイムの短縮を考慮し、拠点数を増やせば倉庫配置の費用が高くなるという仕組みです。そのため、在庫数や運賃、人件費から自社に合った数値を算出することが必要となります。

近年では、人手不足や燃料の高騰で、人件費や運賃のコスト削減から小規模拠点の配置を検討するケースが増えています。また、拠点を構える立地も大切なポイントで、立地場所の選定には2つの考え方があります。

生産立地型
生産立地型とは、仕入れ先から近い立地に拠点を配置することで、仕入れ先からの配送時間やコストを抑えた物流倉庫です。生産立地型を採用するメリットは、各地で生産される質の良い商品を配送コストを抑えて安く仕入れることができます。トータル物流コストを下げて、効率的に利益を上げることが目的です。

消費立地型
一方、消費立地型は、納品先や消費者の近くに拠点を配置することで、出荷のタイミングに合わせて柔軟に配送しやすいというメリットがあります。販売先に合わせた配送ができるため、仕入れ先数よりも販売先の件数が多い場合や、日持ちのしない加工食品を扱うEC事業者などにおすすめです。自社の仕入れと納品先のバランスを考慮したうえで、生産立地型か消費立地型を選択しましょう。

導入システムや設備の選定


3つ目のポイントは、具体的に扱うシステムや設備を考慮して保管や導線設計を選定することです。

物流倉庫は、いかに効率よく保管スペースを有効活用できるかで作業の生産性が大きく変わってきます。そのような課題に対応できるのが、マテハン機器や管理システムの導入です。将来的な省人化に伴い、外部とのシステム連携や設備の自動化を加味して、導入システムや設備の選定を検討すると良いでしょう。

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物流倉庫立ち上げまでのスケジュールと6つのステップ

引用:https://www.daiwabutsuryu.co.jp/

ステップ1:現状把握


現状と課題の把握を行うため、物流業務のブラックボックス化を解消していきましょう。まずは、現在委託倉庫を利用している場合は実績データに基づいて、立地場所、保管スペース、稼働率、環境設備などの現状分析を行っていきます。現状を把握することで、次のステップである目的を明確にすることに繋がります。

ステップ2:目的を踏まえたプランの立案


現状と課題を把握することで、無駄なシステムや設備、また人員配置などを見直すことができます。目的達成のために考えられる、倉庫内の導線や入出荷数の設定、人材採用に関する計画案などを具体的に練っていきましょう。また、必要であれば新たに条件を追加し、マスタープランをブラッシュアップしていきます。このタイミングで、配送業者やパートナー企業の選定も必要です。

ステップ3:運用計画


続いては、新拠点へ移行するための運用計画を立案していきます。新倉庫内のレイアウト設計や稼働率、トラブル発生時の対応やバックアップなど、広範囲に渡る運用計画が必要です。

ステップ4:システム・設備の導入準備


新設する物流倉庫には、システムや設備の導入準備がとても重要で、情報システムの設計次第で倉庫運用の成功を左右するといっても過言ではありません。オペレーションの効率化で差別化を図ると共に、最適な情報システムを導入するため、さまざまなシステムの検討や選定を行っていきます。

ステップ5:スタッフ育成


委託倉庫の場合は、物流業務のプロによって運用開始から一定のレベルで作業を行いますが、内製化する場合にはスタッフの採用や育成を事前に行う必要があります。人材不足のため、人員の確保に時間を要することを想定して、採用には余裕を持った計画がおすすめです。

また、ロボットやマテハン機器を導入する場合は、担当者へのレクチャーが必要になるため、研修期間として1〜2か月を見ておくと良いでしょう。

ステップ6:旧・新拠点での並行稼働


現拠点での運用から新拠点への切り替えにはリスクを伴います。そのため、一定期間は既存の物流倉庫と並行して、新拠点での稼働を行っていきましょう。その際、システムや運用マニュアルに問題がないかを比較しながら進めて行くのがおすすめです。また、どこに何が保管されているかや配送ドライバーとの連携など、新設した倉庫に慣れる期間としても活用できます。

まとめ

物流倉庫を立ち上げる際のメリット・デメリット、そして倉庫の種類や立ち上げまでの流れについて解説しました。自社の物流倉庫を保有することで、自社に最適な物流システムを構築することができ、顧客満足度の向上やスピーディーな配送が実現します。

また、自社倉庫を持つことで一貫した物流業務のノウハウが蓄積され、ニーズが把握できることから他社との差別化を図ることも可能です。長期的な視点で自社倉庫を立ち上げたいと検討しているのであれば、今回ご紹介した内容を参考にプランを練ってみてはいかがでしょうか?

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