物流の2024年問題に対し、各業界が「物流対策自主行動計画」を発表 

宮地彩花【MIKATA編集部】

2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力不足の可能性を示唆している物流の2024年問題。2023年6月2日にわが国の物流の革新に関する関係閣僚会議で「物流革新に向けた政策パッケージ」が取りまとめられた。パッケージ内では、2023年末までに、2024年度に向けた業界・分野別の自主行動計画の作成・公表を行うよう示されており、各業界で発表が相次いでいる。ECのミカタでは、業界別の国内物流の効率化等に向けた自主行動計画についてまとめた。

2023年末に迫る「物流対策自主行動計画」とは

「物流対策自主行動計画(以下、自主行動計画)」とは、「政策パッケージ」に基づく施策の一環として作成するもの。経済産業省等が発表している「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン(以下、ガイドライン)」内にある実施事項、推奨事項に沿って、各業界、分野ごとで取組事項を取りまとめたものだ。

この自主行動計画の締切が2023年末ということもあり、各業界から続々と2024年度に向けた取組事項について発表がなされている。効率的な物流を実現するための、取組事項と実施推奨事項の項目は下記の通り。

物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン(経済産業省、農林水産省、国土交通省)を基にECのミカタで作成

航空フォワーダー業界、モーダルシフトの促進と効率化を目指す

2023年12月20日、一般社団法人航空貨物運送協会が発表した「航空フォワーダー業界における国内物流の効率化等に向けた自主行動計画」によれば、取組について「モーダルシフトの促進」「航空貨物の国内トラック輸送のモーダルシフト」「航空貨物の国内輸送の効率化」「航空貨物の国内輸送ドライバーの労働時間削減」の4つを大きな施策としている(※1)。

2022年度の自動車による貨物量は約38億トン(※2)に対し、国内定期航空輸送は約55万トン(※3)と航空貨物運送の利用は限定的。そのため同協会は、国内航空の活用を図り、長距離トラックの輸送の削減に努めたいとしている。また、2024年度より、国内トラック輸送の2024年問題への対応として自社貨物専用の国内貨物航空機運行が予定されているようだ。

各社における航空貨物に係る国内物流効率化の取組については、アンケート調査等を実施し、取組状況を把握していくとした。

※1 出典元:航空フォワーダー業界における 国内物流の効率化等に向けた自主行動計画(一般社団法人 航空貨物運送協会)
※2出典元:自動車輸送統計調査の結果の概要(令和4年度)
※3出典元:航空輸送統計年報 令和4年(2022年)

全農も自主行動計画を発表 荷待ち時間を原則1時間以内に

全国農業協同組合連合会(以下、全農)も、「物流革新に向けた政策パッケージを受けた自主行動計画」を発表した。ガイドラインに沿った計画がなされており、特に物流業務の効率化・合理化における「②荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール」では、原則として入庫後1時間以内(運転手の休憩等物流事業者都合の時間を除く)に出庫できるよう努めるとした。入出庫の集中抑制やパレット等の輸送資機材を活用し、効率化を目指すという。

また、長時間の荷待ち等が発生している場合には、取引先や物流事業者と協議のうえ運転手の拘束時間短縮に努めるとした(※4)。

他にも各業界で、続々と自主行動計画が出されている。今後の予定としては2024年初に政策パッケージ全体のフォローアップや通常国会での法制化も含めた規制的措置の具体化が行われる予定だ。

物流の2024年問題は、EC事業者にとって売上に直結する重要な課題のひとつ。小さなところで言えば、送料無料に関する文言の変更や配送時間にゆとりのある注文をするなど、物流負担軽減に繋がる消費者の意識変革・行動変容への取り組みの推進が必要になるだろう。

※4出典元:物流革新に向けた政策パッケージを受けた自主行動計画 (全国農業協同組合連合会 )