解約料への不満解消にはサイト内の表示に工夫が必要――第2回解約料の実態に関する研究会

奥山晶子

2024年1月15日、消費者庁が2回目となる解約料の実態に関する研究会を実施した。解約トラブル例などが示された前回に続き、消費者がキャンセル料に不満を持つ理由を調査分析した結果が報告された。

「解約料の実態に関する研究会」これまでの経緯

「解約料の実態に関する研究会」が立ち上がったのは2023年のことだ。解約料に関する消費生活相談の件数が高水準で推移していること、解約料の規定があいまいなままであることを問題視した消費者庁が設置した。

第1回の研究会は2023年12月11日に行われ、解約料に関するトラブルの主な内容やキャンセル料に不満を感じている消費者の割合、ネットショッピング利用世帯の割合の推移が報告された。そして解約料の基準となる「平均的な損害」の額について議論が交わされた。

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消費者がキャンセル料に不満を持つ理由を分析

1月15日に行われた第2回研究会では、中央大学の有賀敦紀教授がオンライン調査によりキャンセル料に不満を持つ理由を分析※1。「情報提供に対する印象が悪い」「契約金額に占めるキャンセル料の割合が高い」「分割、サブスクリプション契約」の場合は、キャンセル料への不満が高まりやすいことが提示された。

なお調査によると、オンラインでの購入や契約の場合、キャンセルポリシーが表示されるかどうかは情報提供に対する印象と強く関連しない。これはキャンセル料の情報提供がオンラインではそれほど機能していない可能性を示唆している。よって表示方法を検討する必要があることが指摘された。

※1出典元:キャンセル料に関する消費者の意識調査についての分析書

解約料の支払に対する消費者の意識分析調査を報告、意見交換がなされる

研究会では、キャンセルした商品・サービスのうちネット購入が7割以上であったことが報告された。

出典元:「キャンセル料に関する消費者の意識調査」報告書

なお、キャンセル料の情報提供に不満を持った理由として、ネット購入の場合はキャンセル料についての「情報提供の内容が分かりにくかったから」「記載位置が分かりにくかったから」という意見が多かった。

出典元:「キャンセル料に関する消費者の意識調査」報告書

さらに事業者がキャンセル料を設定する目的について、どのようなものなら認めるかが調査され、消費者のキャンセルによって事業者に生じる損害を補填する目的の場合は、過半数が「認めてよい」と回答。「キャンセル率を下げる目的」であれば45%が認めてよいと回答した。

出典元:「キャンセル料に関する消費者の意識調査」報告書

オンライン事業者はキャンセル料への表示工夫が急務

研究会では、インターネットでの販売時には次の2つが不満を軽減するために大事という見方が示された。

1.キャンセル料に関する情報提供の工夫
情報提供内容が分かりにくい、キャンセル料の掲示がどこにされているか分かりづらいといった不満が、いざキャンセル料が発生したときの不満に繋がっていると見える。

2.キャンセル料を操作した選択肢の設け方
調査内の実験から、キャンセル料の割合を消費者自身で選択すると、消費者がキャンセル料を気にする度合いが強くなることが分かった(選択するプランによってキャンセル料が違うなど)。

EC事業者はこの調査結果を踏まえ、今後サイト内でのキャンセル料掲示方法について検討が必要になるだろう。


記者プロフィール

奥山晶子

2003年に新潟大学卒業後、冠婚葬祭互助会に入社し葬祭業に従事。2005年に退職後、書籍営業を経て脚本家経験を経て出版社で『フリースタイルなお別れざっし 葬』編集長を務める。その後『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』(文藝春秋刊/2012年)、『「終活」バイブル親子で考える葬儀と墓』(中公新書ラクレ/2013年)を上梓。現在は多ジャンルでの執筆活動を行っている。

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