物流費高騰の原因は?迫る2024年問題やコストを抑える対策も解説
EC事業者にとって物流費の高騰は利益を左右する問題です。2024年問題に直面する今、すぐにでも対策を考え、実行に移すことが求められています。
本記事では、物流費高騰の原因や2024年問題、EC事業者ができる対策について詳しく解説します。
なお、この記事では2024年1月時点の情報を掲載しています。
物流費の推移
近年、物流費はどのように推移しているのでしょうか。
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会の『2023年度物流コスト調査報告書【速報版】』を参考に、売上高物流コスト比率をみてみましょう。
売上高物流コスト比率 | |||
---|---|---|---|
2022年度 | 2023年度 | 増減(ポイント) | |
製造業 | 5.34% | 5.16% | -0.18 |
非製造業 | 5.24% | 4.70% | -0.54 |
卸売業 | 5.71% | 4.13% | -1.58 |
小売業 | 3.51% | 5.32% | 1.81 |
その他 | 5.71% | 5.42% | -0.29 |
全業種 | 5.31% | 5.00% | -0.31 |
出典:2023年度物流コスト調査報告書【速報版】|公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会
調査によると、「全業種」というくくりでの物流コスト比率は下がっているものの、小売業のみ、2022年から2023年で1.81ポイントもの増加となっています。
物流費の増加は、商品価格に影響を及ぼすほか、利益率の低下を招きかねません。ECをはじめとした小売事業者は、戦略的な対策を講じる必要があるといえるでしょう。
そのためにも、物流費が増えた要因を考える必要があります。
物流費高騰の原因
物流費の高騰には、複数の要因があります。国際市場の動向、内部環境の変化など、さまざまな側面から原因を把握し、自社にできる対策を考えましょう。
物流費が高騰している主な原因として挙げられるのは、以下の4つです。
- 2024年問題の影響
- 内部管理コストの増加
- 環境規制と燃料費の上昇
- 国際市場への進出
それぞれ解説します。
2024年問題の影響
物流業界における「2024年問題」は、トラックドライバーの労働時間に上限が設けられることにより生じる問題の総称です。2024年4月からの新規制により、原則として、トラックドライバーの時間外労働は年間960時間が上限となり、かつ1カ月の拘束時間は284時間が上限となります。
トラックドライバーの勤務時間がこれまでよりも短くなるため、輸送能力の不足が問題視されています。
公益社団法人全日本トラック協会の試算によると、2024年問題に対して何も対策をおこなわなかった場合には、営業用トラックの輸送能力が2024年には14.2%、2030年には34.1%も不足するとされています。
2024年問題をクリアするためには、荷待ち時間の削減や効率化といった荷主側の努力も必要です。物流業界では、ドライバーの労働環境改善、働き方改革に対応した適正な運賃の収受、運送以外に発生する料金の収受なども検討されています。
参照:知っていますか?物流の2024年問題|公益社団法人全日本トラック協会
内部管理コストの増加
物流費の高騰の背景には、配送量の増加に伴う、さまざまな内部管理コストの増加もあります。内部管理コストとは、人件費やシステムの維持・運用、施設の維持管理など、物流業務の遂行に必要な一連の費用です。
例えば、ドライバー不足により、運送業務に必要な人材確保のための高い人件費や、労働条件の改善による追加コストを生んでいます。
また、配送量の増加や原材料の価格上昇により、梱包資材のコストも必然的に増加しています。
環境規制と燃料費の上昇
環境規制と燃料費の上昇は、物流費を押し上げる重要な要因です。
例えば、環境規制の強化により、物流業界はよりクリーンで効率的な輸送手段への移行を迫られています。そのため、新しい車両への投資や既存の車両の改善などの追加コストを引き起こし、結果的に物流費の増加につながります。
また、燃料費の上昇は、運送業務に直接かかるコストを増加させ、特に中小規模の運送企業にとって大きな負担となります。
国際市場への進出
日本国内での市場縮小とドライバー不足の問題により、多くの日本の物流企業が海外市場に目を向けています。
しかし、国際市場へ進出するには、新しいインフラや物流ネットワークの構築、地元の法規制への適応など、多額の費用が必要です。新たな投資や運営コストの増加につながるため、結果として物流費などのコスト増大につながります。
物流費が高騰し続けるとどうなる?
物流費の高騰は、EC事業者の経営も圧迫する可能性があります。特に2024年問題に関連する労働時間の削減により、物流会社の対応量は減少するでしょう。
これまでのように1日の配送量を維持できなければ、注文から配送までの日数がかかり、顧客満足度が低下するおそれもあります。
また、人手不足や燃料費の高騰を理由に、物流会社は、配送料の値上げを実施することもあるでしょう。商品価格を変えない場合、その分、EC事業者の利益率が下がることになってしまいます。
では、どのような対策を打てばよいのでしょうか。
ひとつは、物流費の高騰に対応するために、配送料や配送オプションの見直しをすることです。
例えば、送料無料サービスの条件変更や配送料の値上げなどが考えられます。ただし値上げは、顧客満足度にも影響を与えるため、慎重な検討が必要です。
そのほか物流の効率化を図るためには、配送ルートの最適化や業務のデジタル化なども検討したい項目です。
EC事業者が把握しておくべき物流コストの内訳
物流コストの内訳のうち、EC事業者が把握しておきたい項目を3つ紹介します。
- 運送費
- 倉庫管理費
- 技術・システム管理費
運送費
運送費は、燃料費や車両メンテナンス費、ドライバーの給与、運送業事業者への支払い、高速道路使用料など、輸送活動に直接関連する費用です。
運送費は物流運営の中心のため、運送効率の改善やコスト管理により、最適化されるべき項目です。
物流コストに関する調査によると、運送費は、物流コスト比率の中で全業種において55.2%を占め、最も大きな割合を示しています。また、2023年には値上げ要請の件数も上昇しており、そのうち最も多かったのが運送費です。
倉庫保管費
倉庫保管費には、倉庫のリース料や商品の損失・劣化に関するコスト、保険料、税金、在庫管理および物品の取り扱いに関連する人件費などが含まれます。
倉庫保管費は、在庫レベルの最適化や効率的な倉庫運営により削減可能な費用です。
技術・システム管理費
技術・システム管理費とは、物流システムの導入や維持・運用にかかる費用、およびシステム管理に従事するスタッフの給与です。
この費用には在庫管理システムや物流プロセスの自動化、データ分析ツールなどのコストが含まれます。
技術・システム管理費は、物流業務の効率化や精度の向上、リスクの削減に直結します。適切に投資すれば長期的なコスト削減やサービス品質の向上が期待できます。
出典:
物流コスト調査報告書(2020年度版)|公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会
物流コスト調査報告書(2023年度版)|公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会
物流費高騰に向けたコストを抑えるための対策
物流費の高騰に直面しているEC事業者は、物流コストを抑制するために効果的な戦略を取る必要があります。代表的な3つの対策を紹介します。
- 効率化を図る技術的手段の導入
- サプライチェーンの最適化
- 物流業務をアウトソーシングする
それぞれ解説します。
効率化を図る技術的手段の導入
物流業務を効率化する技術的手段としては、物流自動化システムやAIの導入が挙げられます。
システムやAIの導入は、作業時間の短縮につながるだけでなく、ヒューマンエラー対策にもなるでしょう。導入には初期投資が必要ですが、長期的な視点に立つと、有効な対策と考えられます。
サプライチェーンの最適化
サプライチェーンの最適化は、物流コスト削減のために重要です。
過去の販売データの分析や市場動向に基づいた在庫予測、リアルタイムのデータを活用した在庫管理などで、需給バランスを管理するのが鍵です。
また、サプライヤーとの関係強化やリスク管理も重要です。例えば、サプライヤーとの継続的なコミュニケーションを通じて、原材料の供給安定性を確保し、予期せぬ供給遅延を避ける体制づくりや、1つのサプライヤーに依存するリスクを減らし代替供給元を確保するのが重要でしょう。
サプライチェーンの最適化により、EC事業者は効率を高め、物流コストの削減が可能です。
物流業務をアウトソーシングする
物流業務のアウトソーシングも、物流コスト削減と業務効率化のための有効な手段です。例えば、倉庫管理業務を専門の物流会社に委託すれば、人件費や設備投資の削減ができます。
物流会社はその道のプロなので、運送効率も向上するでしょう。システム導入の初期投資が難しい中小企業でも、それらの設備を備えた物流業者業務へアウトソーシングすれば、自動化にも対応できます。
また、アウトソーシングにより、自社はコア業務に集中できるようになります。ビジネスの成長を促進できることも、大きなメリットといえるでしょう。
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2024年問題や燃料費上昇の影響もあり、物流費の高騰は避けられない状況です。EC事業者としても、物流費高騰に備えた対策をしなければ、利益が減るだけでなく、大きな損失につながりかねません。
とはいえ、対策には費用もかかります。できれば、費用は抑えたいもの……。
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