スマート物流(スマートロジスティクス)とは?サービスや活用事例を紹介
スマート物流に関する取り組みや、導入している企業についての情報を見ると「ECサイトビジネスにかかわるかもしれない」と気になる方も多いのではないでしょうか。
今回は、スマート物流の概要や物流業界の課題、スマート物流の代表的なサービスについて紹介します。すでに取り組みを始めている企業についても紹介するので、参考にしてください。
なお、以下の情報は2024年2月時点の情報を記載しています。
スマート物流(ロジスティクス)とは
スマート物流(スマートロジスティクス)とは、AIやIoTなどの最先端技術を活用して効率化された物流管理のことです。
スマート物流には、次の技術が活用されています。
技術名 | 概要 |
---|---|
人工知能(AI) | 人が実現するさまざまな知覚や知性をコンピュータで人工的に再現するもの |
ビッグデータ | 以下の5つの要素(5V)で成り立っている情報の集合体 ・Variety(多様性) ・Velocity(速さ) ・Volume(データ量) ・Veracity(真実性) ・Value(価値) |
IoT | 「Internet of Things」の略で、モノのインターネットと訳される。家電・建物・車など、さまざまなモノをインターネットと繋ぐ技術 |
M2M | 「Machine to Machine」の略で、物同士が相互に情報をやり取りする仕組み |
スマート物流は、倉庫のスマート物流と輸送のスマート物流に分かれます。
種類 | 概要 |
---|---|
倉庫のスマート物流 | 倉庫の状態をIoTやM2Mなどを用いてネットワーク経由で管理し、AIやビッグデータによって自動倉庫システムや在庫管理システムを確立している状態 |
輸送のスマート物流 | ドローンなどを用いて無人配送をおこない、AIやビッグデータを活用して配送状況をネットワーク経由で管理している状態 |
詳しくは後述しますが、2024年現在、物流業界は多くの課題を抱えています。スマート物流の導入によって多くの課題の解消が期待できるため、内閣府は平成30年に「スマート物流サービス」推進委員会を立ち上げ、2023年3月まで研究開発を進めてきました。
スマート物流は、現在もさらなる普及拡大が期待され、研究開発が進められています。
スマート物流におけるSIP(戦略的イノベーション想像プログラム)とは
SIP(戦略的イノベーション想像プログラム)とは、国民にとって必要な社会的課題や、日本経済の再生に寄与できる課題に取り組む内閣府によるプロジェクトのことです。
スマート物流サービスは平成30年度~令和4年度までの1課題として、研究開発がおこなわれていました。
スマート物流サービスが目指す世界は「Society5.0」の具現化です。内閣府によると、Society5.0とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と定義されています。
最終目標として5つの課題解消が挙げられています。
- サスティナブルな物流・商流
- 廃棄ロス削減
- フィジカルインターネット
- 省力化・省人化
- 商品の安全・安心の提供
これらを実現させるために、物流・商流データ基盤の構築と、省力化・自動化に寄与する自動データ収集技術の開発がおこなわれてきました。スマート物流サービスの活用によって、30%の生産性向上が実現するといわれています。
2023年3月に内閣府による研究推進法人が解散したことにともない、現在は一般社団法人フィジカルインターネットセンターが継承し、研究成果と社会実装のさらなる普及拡大に取り組んでいます。
出典:
SIPスマート物流サービスの取組み|国土交通省
1.スマート物流サービスとは|一般社団法人フィジカルインターネットセンター
Society 5.0|内閣府
スマート物流サービスの研究開発終了後の継承体制を決定しました |スマート物流サービス研究推進法人
新スマート物流とは
新スマート物流とは「物流業界が共通に抱える人手不足、環境・エネルギー問題、DX化対応などの課題を、デジタルやテクノロジーを活用しながら解を探究し、人々の生活に欠かせない生活基盤である物流を将来にわたって持続可能にするための官民での取り組み」のことです。
具体的には、ラストワンマイルの共同配送、陸送・空送の組み合わせ、旅客列車やバス、タクシーなどの空きスペースを利用して貨物を輸送する貨客混載などの実現を目指しているとされています。
出典:松浦市鷹島で地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向けた「離島におけるドローン配送」の実証実験を実施|KDDIスマートドローン株式会社
スマート物流EXPOとは
スマート物流EXPOとは、物流業界が抱えるさまざまな課題を解決するための最新技術が出店する展示会のことで、年に2回おこなわれています。
IoT、AI、ロボットなどを扱う出展者と、自動化やデジタル化を目指す物流業や製造業の会社の商談や技術相談の場として活用されています。
出典:スマート物流EXPO|RX Japan株式会社
スマート物流により解決が期待される課題
物流業界は大きく3つの課題を抱えています。
- 人手不足および2024年問題
- 再配達・小口配送の増加にともなう業務の非効率化
- 倉庫不足
いずれも、相互に関係し合う深刻な課題です。
2024年問題とは、トラックドライバーの時間外労働の上限が年960時間に規制されることです。これによってさらなる人手不足が深刻化すると懸念されています。
また、再配達や小口配送の増加により、仕分けの手間や配達回数が増えることに加えて、計画的な配送の難化で業務が非効率化していることも課題です。
一部では倉庫不足も発生しています。ネットショッピングを活用する人の増加も要因の1つですが、老朽化した倉庫の割合が高いことも業界では悩ましい課題として議論されています。
IoTやビッグデータなどを活用した、物流DXによる自動化やデータによる情報管理によって、上に挙げた物流業界の課題が解決できると考えられているのです。
代表的なスマート物流サービス
ここからは、代表的なスマート物流サービスを紹介します。
ドローン配送
ドローン配送は無人での配達が可能になるため、人手不足の解消に役立つといわれています。また、交通渋滞の緩和や災害時の利用、過疎地や離島への配送の容易化が期待されます。
たとえば、SkyHub®は「既存物流とドローン物流をつなぎ、陸送・空送のインフラが接続されることで、いつでもどこでもモノが届く新しいスマート配送の仕組み」です。
SkyHub®アプリをベースにした配達代行、オンデマンド配送、医薬品配送、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送などのサービスを提供しています。
現在は、山梨県や北海道、福井県、新潟県などで導入されています。
出典:ドローン配送サービス「SkyHub」 | NEXT DELIVERY
多機能ロッカー
ロッカーを多機能化することで、宅配荷物の再配達回数の削減が期待できます。
たとえば、JRの駅に設置されているマルチエキューブが挙げられます。マルチエキューブは「予約」「預入」「受取」「発送」の4つの機能を1台で完結できるロッカーです。今後3年間で約1000台の導入を目指しています。
2024年2月から、原則始発~終電までの時間で佐川急便の宅配荷物を受け取れるサービスが開始されました。これによって利便性向上とともに、再配達回数の削減が期待できます。
出典:
一台 4 役の多機能ロッカー「マルチエキューブ」が稼働開始します!|株式会社JR東日本スマートロジスティクス
多機能ロッカー『マルチエキューブ』での宅配荷物受取サービスを開始|株式会社JR東日本スマートロジスティクス
輸配送自動マッチング
輸配送自動マッチングは、膨大な物流データからAIにより業界をまたぐ荷主企業同士をマッチングし、共同輸送を可能にする技術です。
多数の企業の輸送経路などをデータベース化し、物流の効率化に寄与しています。
たとえばTranOptでは、実車率・積載率を上げるためにAIを活用しています。
出典:
物流DX事例の紹介~基盤整備の1つの形として~|株式会社富士通総研
スマート物流の提供事例・導入事例
ここからは、実際にスマート物流を導入している企業の事例を紹介します。
ロジスティード
ロジスティードは、初期費用・固定費なしの従量課金型のEC物流向けシェアリング自動倉庫「SMART WAREHOUSE」を提供しています。
自動化・標準化されたオペレーションによる作業ミスの削減、省人化率72%の自動化で1日18,000個の発送を実現しています。
多店舗出店や自社ECにも対応しているサービスです。
出典:SMART WAREHOUSE|ロジスティード
帝人
帝人は、医療材料の物流を効率化するスマート物流システムを稼働させています。複数の医療機関で使う医療材料を保管する共同院外倉庫で仕分け作業を済ませ、各病院のピッキングの手間を削減できるシステムです。
また近距離の無線通信で、ID情報などのデータを記録した専用タグと非接触で情報をやりとりするRFIDタグの導入によって、複数の物品を一度にスキャンし検品できるようになりました。
共通のプラットフォームでデータを一元管理し、入出荷情報や発注情報などを可視化できる体制を作っています。
出典:帝人などが医療材料の物流を効率化、共同倉庫でRFIDを活用|日経XTECH
Gaussy株式会社
Gaussy株式会社では、月額倉庫ロボットサービス「Roboware」を提供しています。以前は三菱商事が進めてきた倉庫DX事業が、子会社であるGaussy株式会社に譲渡されました。ほかにも、三井不動産や三菱地所などが出資しています。
ECサイトを運営している会社が、Robowareによる自動仕分けロボットを導入したことで、作業工数の軽減や省人化に成功しています。
出典:ECならではの繁忙期でも安定した物流品質を保ち、現場の負担軽減と省人化にも成功!|Gaussy株式会社
スマート物流がEC事業者にもたらすメリット
スマート物流は、EC事業者にも次のようなメリットをもたらします。
- 在庫管理の適正化・倉庫不足の解消
- 発送業務の簡便化・スピーディー化
- 省人化・省力化
煩雑な在庫管理や発送業務を、スマート物流を取り入れている業者にアウトソーシングすることで省人化や省力化が可能になりますし、発送スピードが上がり顧客満足度の向上も期待できますよ。
物流の効率化を実現するアウトソーシング先探しはECのミカタで
物流業界では、人手不足や、ネットショッピング利用者の増加による再配達・小口配送の増加などの問題を抱えています。
AIやIoTを取り入れたスマート物流によって、在庫管理や倉庫業務などでの省力化・省人化が叶い生産性の向上が期待できます。
内閣府主導で研究開発が進められ、現在もさまざまな企業がスマート物流の研究開発・導入を進めている現状です。
ECビジネスを継続するにあたって、在庫管理・倉庫業務の最適化は重要です。スマート物流を導入した物流業者へのアウトソーシングや、委託倉庫の導入を検討してください。
ECのミカタでは、ECサイトに特化したメディアを運営する専門コンシェルジュによるヒアリングをおこない、希望の条件や課題に合わせた業者を紹介しています。
相談からマッチングまで完全無料で利用できますので、気軽にお問い合わせくださいね。