「衝動買い」と「目的買い」消費者の2大購買経路別にみる押さえるポイント
この記事のまとめ
・KDDIとカカクコムがそれぞれ発表を行った
・「衝動買い」と「目的買い」別の気になる結果は?
・EC事業者が異なる消費者動機を制するには……
2つの発表から読み解く消費者購買心理
ボーナス、クリスマス、年末年始……。イベントが頻出し、意味もなく浮足立った気分になってしまいがちなこの季節、財布の紐がつい緩んでしまうことも多いのではないだろうか。さて、そのような商機溢れる時期に、EC事業者にとって、消費者の購買心理を読み解く際に役立つであろう2つの発表がされたので、「衝動買い」と「目的買い」に読み比べながら考えてみよう。
◆働く男女の6割が年間で約16万円のプチ衝動買いを経験
「au WALLET」を提供するKDDI株式会社は、20~40代の働く男女500名を対象に「消費に関する意識・実態調査」を行ったと発表した。
今回同社は、コンビニやネットショッピングでつい予定や目的にない買い物をしてしまうことを「プチ衝動買い」と名付け、消費者の日常における消費感覚を調査したとのこと。
まずプチ衝動買いの有無に関しての質問では、男女全体の63%がプチ衝動買いの経験があると答えた。年代と性別で見ると、20代の女性が最も多くプチ衝動買いを行っており、その割合は84%と大多数を占めた。男女比率では女性の方がプチ衝動買いをする割合が大きいと出ている。
また、どのようなパターンでネットショップでプチ衝動買いをしているか聞いたところ、
「送料を無料にするため他の物も購入してしまう」
「関連商品を見て、つい買ってしまう」
「レビューをみていたらどうしても欲しくなり買ってしまう」
などの意見が寄せられた。
次に、プチ衝動買いで実際に使う金額についての質問をみてみよう。
プチ衝動買い経験者に、コンビニやネットショッピングの利用頻度と一回あたりの購入金額について調査を行い、月平均額を算出したところ、13,641円という平均金額が出てきた。つまり年間で約16万円をプチ衝動買いで消費しているということになる。この結果は衝撃的だ。
その一方、間食代や雑費など含みコンビニやネットショッピングでの月あたりの予算は、「0~3,000円」以内にしたい人が25%、「3,000~5,000円」以内にしたい人が16%で、予算を5,000円以内にしたい人が約4割を占めていることが分かっている。つまり、プチ衝動買いをしてしまう人は、月予算の倍以上を消費しているということになる。
何気なく行っている「ついで買い」や「ながら買い」などの衝動買いも、積み重なれば平均で年間16万円以上となるということが分かった。比較的単価の安い物が衝動買いの対象となるようだ。
◆高級志向かつ付加価値の高い製品が人気を集めた
株式会社カカクコムは同社運営の購買支援サイト「価格.com」において、2014年もっともユーザーに支持された製品を選出する「価格.comプロダクトアワード2014」を発表した。
POSデータなどをもとにした販売数や販売額、専門家や著名人による選出ではなく、ユーザーによる製品レビューなどのデータを同社が独自にポイント集計し、各賞を選出している。
価格.comの取り扱い製品分野において、特にアクセスの高い「パソコン本体」「パソコン関連」「AV家電」「生活家電」「カメラ関連」「携帯電話・スマートフォン」「自動車関連」の7カテゴリ63部門が対象となる。
「パソコン本体」:SONY Xperia Z2 Tablet Wi-Fiモデル(タブレット)
「パソコン関連」:crucial CT256MX100SSD1(SSD)
「カメラ関連」:ニコンD810(デジタル一眼カメラ)
「AV家電」:JVC HA-FX850(ヘッドフォン・イヤホン)
「生活家電」:パナソニック Wおどり炊き SR-SPX104(炊飯器)
「携帯電話・スマートフォン」:シャープ AQUOS ZETA SH-04F(スマホ)
「自動車関連」:スズキ ハスラー(自動車)
株式会社カカクコム常務執行役員の鎌田剛氏はこの結果を受け、
「ここ2年くらい続いていた、コストパフォーマンス重視の製品よりも、むしろ高くてもいいものをという、高付加価値製品に対する評価が上がっている感じを受ける。日本のメーカーの真摯なもの作りの精神によって、地味ではあるがユーザーの心に届く改良が施された製品が多く、その点が多くのユーザーによってしっかりと評価された結果、今回のプロダクト大賞選出に結びついた。年々差別化が難しくなっていくデジタル市場でも、自らの強みを最大限に活かし、それがユーザーに高く評価されたということは喜ばしいことだ」
とコメントしている。
使用目的のはっきりしている製品を購入する「目的買い」では、価格に対する性能(満足度)の高い製品が選ばれる傾向が強いようだ。「値段は多少はっても良いものを選びたい」という、付加価値の高い高級志向が見て取れる。
動機によりハイかローかに二分される傾向が
以上2つの発表を見ると、動機別に選ばれる品物と価格も変わってくる傾向が強いことが分かるだろう。「衝動買い」という購買行動の特質上、やはり単価の低い品物が動きやすく、「目的買い」のように着地点がしっかり定まっている購買行動では値段ではなく性能が優先される。
年末年始の商機もラストスパートに入り始めた昨今、EC事業者は最大限の結果を出すためには、「衝動買い」と「目的買い」のどちらも取りこぼしなく拾いたいものだ。間口を広げ商品に幅を持たせるとともに「目的買い」に付随した「衝動買い」を促すような戦略や企画を練り、その逆のパターンからも登れる導線をユーザーに提示できるかが肝となってくる。
2014年は通称「オムニチャネル元年」なる言われ方をするが、チャネルだけでなく購買動機もクロスさせる「オムニモチーヴ」ないし「オムニウォンツ」とでもいうようなことを考えると、行き着くのはCRMのような気がしてこないだろうか……。
消費者の動機には種々多様なものがあり、同じ数だけ戦略がある。自社製品がどの需要を満たすのかをしっかり分析し、分析結果に対し適切に動いていけば必ず結果に結びつくように思う。