公正取引委員会が「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁について調査! 実態は

ECのミカタ編集部

(令和6年3月15日)独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化に関する調査の結果を踏まえた事業者名の公表について

公正取引委員会は2023年5月から「独占禁止法上の『優越的地位の濫用』に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(以下:特別調査)を実施し、2023年12月27日に調査結果を公表した。

優越的地位の濫用とは:自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が,取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為のこと(出典:公正取引委員会)

「協議を経ない取引価格の据置き等」が疑われる事案に関する実態把握

本調査は、適正な価格転嫁の実現に向けて、事業者間取引において、公正取引委員会のウェブサイトに掲載している「よくある質問コーナー(独占禁止法)」のQ&A(以下:独占禁止法Q&A)の下記2点に該当する行為(以下:協議を経ない取引価格の据置き等)が疑われる事案に関する実態を把握するために実施された。

◆労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと
◆労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で取引の相手方に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと


公表方針に基づき、特別調査において、取引価格が据え置かれており事業活動への影響が大きい取引先として受注者から多く名前が挙がった発注者(※1)(以下:調査対象事業者)に対して、2023年年11月以降、その旨を説明し、事業者名の公表があり得る旨を予告した上で、立入調査(※2)、独占禁止法第40条に基づく報告命令等による個別調査を実施した。

※1:令和4年の「独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査」(令和4年12 月27 日公表)において、取引価格が据え置かれており事業活動への影響が大きい取引先として受注者から多く名前が挙がった発注者又は注意喚起文書の送付を受けた発注者であって、かつ、特別調査の結果、受注者から多く名前が挙がった者。特別調査の結果、取引価格が据え置かれており事業活動への影響が大きい取引先として受注者から特に多く名前が挙がった者。
※2:任意の立入調査であり、事件審査で通常行っている独占禁止法第47 条に基づく立入検査とは異なる。

独占禁止法第43条の規定に基づいた事業者名を公表

個別調査の結果、相当数の取引先について協議を経ない取引価格の据置き等が確認された事業者については、公表方針にも記載のとおり、価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、発注者に価格転嫁に向けた積極的な協議を促すこととなった。

また、受注者にとっての協議を求める機会の拡大につながる有益な情報であること等を踏まえ、独占禁止法第43条の規定に基づき、その事業者名を公表することとした。今回公表された事業者名は以下の通り。

◆引用:独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化に関す る調査の結果を踏まえた事業者名の公表について

なお、この対応に当たっては、公正取引委員会はあらかじめ、対象となる事業者に対して意見を述べる機会を付与。当該事業者名の公表は、独占禁止法または下請法に違反すること、またはそのおそれを認定したものではない。

独占禁止法や下請法に違反する事案には厳正に対処

今回の当該事業者については、社内全体に対して価格転嫁を進めるための方針を示していた一方、受注者との窓口となる各担当者への浸透が不十分だった事例等が確認されている。

また、調査対象期間中に一部の受注者との間で価格転嫁を進めていた事例や、調査対象期間後において受注者との間で価格転嫁を行うための協議の場を設けた事例等も確認されたという。

公正取引委員会は、今回の個別調査の結果も踏まえ、独占禁止法Q&Aの考え方、価格転嫁の必要性について価格交渉の場において明示的に協議する必要があることについて、さらなる周知を実施。また、独占禁止法や下請法に違反する事案については、厳正に対処する姿勢をみせた。適正な価格転嫁が可能となる取引環境整備へ向け、一層取り組み推進が期待されるだろう。


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