「メルカリ ハロ」全国展開開始 スポットワーク需要が特に高い業界は?
株式会社メルカリ(以下:メルカリ)は2024年3月6日に、“空き時間おしごとサービス”である「メルカリ ハロ」を1都3県でスタート。2024年4月16日より全国展開を開始したことを発表した。「メルカリ ハロ」は、アプリを使って簡単に、単発・短時間の雇用契約によるスポットワークができるサービス。倉庫内の作業などの慢性的な人手不足の解決にもつながると、物流業界でも期待が高まっている。
4月16日に行われた発表会には、株式会社メルカリ 執行役員 CEO Workの太田麻未氏と、同サービスを導入した株式会社ドミノ・ピザ ジャパン 事業推進部部長 大森力氏が登壇。「メルカリ ハロ」を利用することでどのような働き方が実現するのか、また企業側のメリットは? 当日の発表内容とドミノ・ピザでの取材から探った。
サービス提供開始から1カ月で、登録者数が250万人突破
リクルートワークス研究所のシミュレーションによると、2040年には東京都以外の全ての道府県において労働供給が不足する状況が推定されている(※1)。こうした中で注目されているのが、スキマ時間を利用した短時間の仕事を通じて収入を得る働き方、「スポットワーク」だ。スポットワーク協会調べによると、スポットワーカーの登録者数は、2023年3月末からの1年間で、約990万人から約1500万人に増えているという(※2)。
メルカリの発表によると、「メルカリ ハロ」ではサービス提供開始からの16日間で、サービス登録者数(※3)が100万人を、1カ月で250万人を突破。今回の全国展開開始により、全国チェーン店のほか、ローカル企業を含む5万店舗で勤務が可能となる。
「メルカリ ハロ」利用者の内訳を見ると、3月に勤務したクルーの62%が、スポットワーク初心者だった(図1)。株式会社メルカリ 執行役員 CEO Workの太田麻未氏は、「これまでスポットワークをやったことがなかったお客様が、『メルカリ ハロ』の提供をきっかけに、スポットワークを始めている」と分析。さらに「メルカリ ハロ」で勤務したクルーのうち約45%が2回以上「メルカリ ハロ」を利用するリピーターだった。また「メルカリ ハロ」を利用する理由を聞いたところ、「元々メルカリユーザーで登録が簡単だったため」「メルカリのサービスだから安心して使える」といった声も多く、従来のスポットワークにあった「難しそう」「面倒」といった課題を払拭できていることもわかった(図2)。
また、太田氏は利用者層を年代別にみて以下のように分析している。
「これまでスポットワークは若い人のためのもの、学生向けというイメージが強かったが、20代から50代以上の方々まで、幅広い年代が利用していた。また3月に勤務した約3人に1人が会社員や団体職員といった人々であり、『メルカリ ハロ』が副収入ニーズの受け皿になっていることもわかる」(太田氏)。
「メルカリ ハロ」がリクルーティング手段の一つになる可能性も
続いてパートナー企業である株式会社ドミノ・ピザ ジャパン 事業推進部部長 大森力氏が、1都3県で導入後1カ月の利用状況を語った。
「サービスを立ち上げたばかりなのに非常に求職者が多いことにまず驚いた。2300万人を超えるというメルカリ様の会員数が非常に大きな強みだと感じている。リピーターも多いので、その方々にはオリエンテーションの必要がない点も助かっている。もし希望される方がいる場合は、ドミノ・ピザのアルバイトとして、長期雇用を結ばせていただくという、リクルーティング手段の一つにもなることを期待している」(大森氏)。
「メルカリ ハロ」によるスポットワークを密着取材
発表会当日、実際に「メルカリ ハロ」を利用して、「ドミノ・ピザ 西麻布店」でスポットワークをするという女性に取材した。転職活動中で長期のアルバイトができないので、スポットワークを始めたという。
「メルカリ ハロ」でのスポットワークは今回で5回目。最初の3回は「喫茶室ルノアール」。以前の仕事が接客業であり接客が好きだったこと、カフェに興味があったことから選んだ。また趣味がバイクなのでデリバリーの仕事が向いていると思ったことから、4回目に宅配ピザチェーン「ナポリの窯」の配達員を選び、5回目がこの「ドミノ・ピザ」だという。ちなみにスポットワーク自体は「メルカリ ハロ」が初めて。
「使い慣れているフリマアプリから飛べるので、入りやすかった。『メルカリ ハロ』がなかったら、スポットワークを始めていなかったと思います」という。
ドミノ・ピザ 西麻布店の星野亮店長によると、同店では平日は3~4人、週末は5~6人はスタッフが必要だが、「メルカリ ハロ」導入以前は常にドライバーが1~2人不足している状況だったという。募集してもなかなか集まらないので、必然的に出勤しているクルーに負荷がかかっていた。「でも『メルカリ ハロ』を導入してからは週に10人から15人ほどのスポットワーカーが来てくれるようになり、不足分が完全に解消されています。朝、急に欠員が出ても、その日のうちに応募がくるというスピード感もありがたいですね」(星野店長)
スポットワーク需要が高い業界は、飲食、小売、物流倉庫
メルカリでは4月22日から5月10日までの期間限定で、「全国展開スタート記念!ピックアップ店舗で+P1,000もらえる」キャンペーンを実施(※4)。一方、パートナー企業には手数料無料キャンペーンを行っている。メルカリは「東京と同様に、地方でもスポットワーク需要が非常に高い飲食、小売業、物流倉庫といった業界の事業者様を中心にサポートと開拓をしていきたい。スポットワーク業界のマーケットリーダーになっていくサイズ感を目指して、事業推進をしていきたい」(太田氏)。
内閣府が公表している地域経済に関する報告書「地域の経済2023」でも、アプリによる「新たなマッチング手法の活用は各地域の人手不足解消に向けた方策の1つと考えられる」と言及されているスポットワーク(※5)。「メルカリ ハロ」以外にも多くのサービスが登場しているが、太田氏は他サービスと差別化できるポイントとして、将来的にメルペイをはじめとするメルカリグループ全体のシナジーを生かして「働くことの前後も含めた体験を、シームレスにつなげていくことで競合他社にはできないものを作れる」とも語った。
「メルカリ ハロ」の求人パートナーには、日本郵便・ヤマト運輸というECに関連の深い関連企業も初期から登録している。日本における人手不足の深刻化が叫ばれるなか、スポットワークの地方への広がりと定着が、「2024年問題」解決に寄与するのか。今後の展開とそれがもたらす変化を、引き続き追っていきたい。
※1:リクルートワークス研究所「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」より(リンク)
※2:スポットワーク協会調べ。スポットワーク仲介大手4社の登録者数の単純合計(2023年3月から2024年3月)。メルカリは、2024年4月にスポットワーク協会加盟のため「メルカリ ハロ」の登録者数は未算入
※3:「メルカリ ハロ」の利用規約に同意した利用者の累計
※4:付与ポイントの上限あり。詳細はキャンペーン公式サイト(リンク)を参照
※5:内閣府「地域の経済2023」より(リンク)