2024年3月景気動向 急速な円安の進行やコスト負担の高まりが与えた影響は?

ECのミカタ編集部

国内景気は2カ月ぶりに悪化 原材料価格の高止まりや不十分な価格転嫁が下押し要因に

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は2024年4月16日から4月30日までの景気動向調査を行い、その結果を公表した。ここでは、業界別の景気動向に絞って紹介する。

調査概要

◆調査期間:2024年4月16日~4月30日
◆調査方法:インターネット調査)
◆調査事項

▷景況感(現在)および先行きに対する見通し
▷経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
◆調査対象:2万7052社
◆有効回答:1万1222社
◆回答率41.5%
◆調査機関:株式会社帝国データバンク

◆出典元:2024年4月の景気動向調査(株式会社帝国データバンク)

急速な円安の進行やコスト負担の高まりにより後退

TDBの景気動向調査によると、2024年4月の景気動向指数(以下:景気DI)は前月比0.3ポイント減の44.1となり、2カ月ぶりに悪化。国内景気は、急速な円安の進行やコスト負担の高まりが収益環境を悪化させたこともあり、2カ月ぶりに後退した。

4月の国内景気は、外国為替レートが一時1ドル=160円台をつけるなど34年ぶりの円安水準で推移するなか、原材料価格の高止まりや2024年問題への対応といったコスト負担増、不十分な価格転嫁などがマイナス材料に。

また、同一地域内においても景況感の格差が拡大する傾向もみられた一方、円安により活発なインバウンド消費を中心に観光産業が堅調に推移。加えて、商業施設や小型の店舗などに向けた工事関連、人手不足に対応する各種サービスや省人化投資などはプラス材料となった。

小売業界はインバウンド需要が全体をけん引

業界全体としては「製造」を中心に10業界中6業界が悪化、「小売」など2業界が改善。急速な円安進行ほか、不十分な価格転嫁や人材確保のための賃上げは企業収益を悪化させるといった声が目立った。主な業界の内容は以下の通りとなる。

◆製造:前月比0.5ポイント減、2カ月ぶりに悪化
12業種中11業種で悪化。「鉄鋼・非鉄・鉱業」は自動車関連の悪影響ほか、工作機械の受注減少が続き2カ月ぶりに悪化。さらに、仕入単価の高止まりや新設工事の伸び悩みなどから「建材・家具、窯業・土石製品製造」も2カ月ぶりに悪化した。

◆建設:同0.4ポイント減、3カ月連続で悪化
原材料価格の高騰をマイナス材料にあげる企業が多く、人手不足などが下押し要因となっている。注目される2024年問題に対しては、どの程度の影響があるのか見極めている様子もうかがえた。一方でホテル関連の設備投資、能登半島地震の災害復興需要はプラスに働いている。

◆サービス:同0.1ポイント減、3カ月ぶりに悪化
「娯楽サービス」は天候に左右され3カ月ぶりに落ち込む。需要の高い宿泊サービスでも、人手が確保出来ない一部施設で苦戦するなど3カ月ぶりに下落。一方、歓送迎会など飲食機会の増加で「飲食店」は2カ月連続で改善した。

◆小売:同0.3ポイント増、2カ月連続で改善
個人消費に厳しさはあるが、インバウンド需要による売上がけん引。一方で原材料価格の高止まり、海外製品の仕入値の高騰などで来店数が減少しているといった意見が目立つ「飲食料品小売」「各種商品小売」はともに2カ月ぶりに悪化した。

今後は緩やかな持ち直し傾向で推移すると予測

今後は、為替レートの急速な変動にともなう物価への影響が注目される。特に、政策金利引き上げのタイミングや日米の金利差、海外の政治・経済情勢などにも左右されるだろう。

また、人手不足や「2024年問題」への対応もリスク要因として注視が必要となる。一方、賃上げなどによる個人消費の行方が景気回復のカギに。プラス材料としては、実質賃金の上昇やインバウンド需要の拡大、積極的な設備投資などがあげられる。

こうした状況から今後の見通しとしては、外国為替レートに不確実性がともなうものの、緩やかな持ち直し傾向で推移すると予測される。

2021年以降円安傾向で推移している外国為替レートは、2024年4月の月中平均(東京市場、17時時点)で「1ドル=153.7円」になった。

円安による原料価格の高騰を危惧する意見も多数上がっている一方で、インバウンド需要などプラスに捉える企業も一部存在している。

EC事業者としては広い視野を持ち、現在の市場に対応しつつ成長を目指す必要がある。「2024年問題」による人件費、配送費高騰に加えて為替レートにも注視しながら、柔軟な対応、施策を心がけるべきだろう。


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