ZOZO、コーディネートアプリ「WEAR」をリニューアル 好みのジャンル診断やフルメイクARを新たに導入

桑原 恵美子

株式会社ZOZO(以下「ZOZO」)は2024年5月9日、同社が2013年から運営しているファッションコーディネートアプリ「WEAR」に新たな機能やコンテンツを導入し、「WEAR by ZOZO(以下「WEAR」)」としてリニューアルしたことを発表した。

ダウンロード数1700万以上、日本最大級のファッションコーディネートアプリ「WEAR」

ZOZOが運営している「WEAR」は、現在1700万ダウンロードを突破している、リアルなコーディネートから、最新トレンドや洋服の着こなし方法がわかる日本最大級のファッションコーディネートアプリだ。幅広いジャンルのユーザーによる1400万件以上の投稿から、「投稿者の身長」、実際のファッションアイテムを使った「着用コーディネート」「似たアイテムを使ったコーディネート」などにより自分に似合うコーディネートや最新トレンドを探すことができる。

ZOZOが成長戦略として重視しているのが“似合う”コーディネートのデータ化。そのために2022年12月、表参道に同社初のリアル店舗「niaulab by ZOZO(「似合うラボ」)をオープンした。

「ZOZOTOWNには多くのお客様が集まっているが、この事業を拡大していくにあたって、『服を買いたい』の一歩手前からお客様とコンタクトしていきたいという想いがあり、そのために『似合う』を研究する施設をオープンした」(ZOZO 代表取締役社長兼CEOの澤田宏太郎氏)。

「niaulab」は、ZOZOのAIとプロのスタイリストが超パーソナルなスタイリングを無料で提供する施設。LINEで応募し、当選すると事前に利用者の情報をヒアリングし、ZOZOのAIとプロのスタイリスト、ヘアメイクアップアーティストと共に「似合う」を見つける体験ができる。オープンからの約1年間で約11万人の応募者があり、約1000人にパーソナライズされたスタイリング提案を行った。体験者の体験後30日間の行動を分析したところ、ZOZOTOWNへの訪問頻度は約1.5倍、購入金額は約2倍という結果に。WEARではこの「niaulab」で取得したデータやWEARへの投稿などに基づき、“ファッションの好み”の数値化に取り組んだという。

「“似合う”を提供することで顧客満足度が高まり、購入意欲も高まっている」と語るZOZO 代表取締役社長兼CEOの澤田宏太郎氏

進化① AIがファッションの好みを数値化してくれる、「ファッションジャンル診断」

今回の進化の大きなポイントは、AIが利用者の好みを数値化してくれるという「ファッションジャンル診断」が追加されたこと。使い方は以下のとおり。

1. アプリ初回起動時の診断画面(オンボーディング画面)に表示されるコーディネート画像の中から、好みのコーディネート画像を5枚以上(最大40枚)選ぶことでAIがユーザーの好みを診断。

2. 12ジャンル(「ガーリー」「フェミニン」「ヘルシー」「きれいめ」「マニッシュ」「ナチュラル」「ラフ」「シンプル」「モード」「ポップ・ユニーク」「ストリート」「アウトドア・スポーツ」)の中から最大3ジャンルで構成される円グラフを表示。グラフを構成する各ジャンルはパーセンテージで表示され、ファッションに特化したAIがユーザーの好みを数値化する。

3. 診断結果画面から、ユーザーの「好みのジャンル傾向」とジャンル構成比が近いコーディネートを検索できる。

また、コーディネート検索の絞り込み機能では最大3つのジャンルを任意で選択し、選んだジャンルで構成されたコーディネートの検索も可能。「好みのジャンル傾向」のグラフは、閲覧したコーディネートをもとにAIが学習し、順次変化する。また好きなタイミングでの再診断も可能だという。

「WEARに投稿されている1400万件以上のコーディネートに、144のジャンル傾向が紐付けされている」と語るZOZO ブランドソリューション本部 本部長の風間昭男氏

進化② スマホひとつで、フルメイクをARで試せる「WEARお試しメイク」機能

今回のリニューアルでは、コーディネートだけでなく、メイク投稿も可能になった。また自分の顔をスマートフォンで撮影することで自分のメイクをARデータとしてWEAR上に登録することや、投稿されたフルメイクをARで自分の顔に乗せて試すことも出来るという。使い方は以下のとおり。

1. アプリ上でメイク投稿時に表示されるお試しメイクアイコンからカメラを起動し、ガイドに従い顔を撮影。フルメイクをARのメイクデータとして登録する。

2. 登録されたフルメイクデータは、メイク投稿詳細上のお試しメイクアイコンをタップするとカメラが起動し、ARで自分の顔に乗せて試すことができる。

3. メイクは好みの濃淡に調整することや、ボタン1つで試着のON/OFFを切り替えが可能。

メイクをした状態の自分の顔をスマートフォンで撮影することでフルメイクをARのメイクデータとして登録し、別のユーザーが登録したフルメイクデータをARで自分の顔に乗せて試すことも出来る

5月9日のリニューアル時点では、80名のインフルエンサーのフルメイクを含む、約500種類のフルメイクをARで試すことが可能となっている。今後は、WEAR公認のファッショニスタ「WEARISTA(ウェアリスタ)」やインフルエンサー、ユーザーの投稿により試着できるフルメイクが追加されていく予定だ。

「メイク初心者や、憧れのインフルエンサーのメイクを試してみたい方など、様々な理由によるメイクのお試し需要にお応えできる機能」と語るZOZO ブランドソリューション本部 WEAR推進部 ディレクターの藤本真美氏

進化③ ZOZOTOWNとのさらなる連携

もうひとつ見逃せないのが、ECサイトZOZOTOWNと、これまで以上にシームレスに連携できるようになったこと。これまでもWEARとZOZOIDを連携することで、WEARで見つけたお気に入りのアイテムをZOZOTOWNで検索することはできたが、ZOZOTOWNでお気に入り登録をしているアイテムや過去に購入したアイテムの着回しコーディネートをWEARで検索することができるようになった。こうなると次に期待されるのは、WEARとZOZOTOWNとの一体化だ。ZOZOでもそれは視野にいれているもののZOZOTOWNが非常に繊細なシステムで構築されているため、その時期については慎重を期しているという。

ZOZOTOWNとのシームレスな連携も

リアル店舗との連携で、ファッション業界全体を盛り上げる

また、ショップスタッフ専用ツール「FAANS」との連携によりリアル店舗との融合を図っているのも、ZOZOの戦略のひとつ。

ZOZO ブランドソリューション開発本部 プロダクト戦略部 ディレクター 福岡明彦氏は「店舗での試着やショップスタッフからの独自の提案も、ファッション体験として非常に重要だと考えている。リアル店舗に送客する仕組みをしっかり構築することで、ファッション業界全体を盛り上げていけるので、今後もWEARや、ZOZOTOWNとリアル店舗をつなぐOMOプラットフォーム『ZOZOMO』を進化させていきたい」と今後の展望を語った。


記者プロフィール

桑原 恵美子

フリーライター。秋田県生まれ。編集プロダクションで通販化粧品会社のPR誌編集に10年間携わった後、フリーに。「日経トレンディネット」で2009年から2019年の間に約700本の記事を執筆。「日経クロストレンド」「DIME」他多数執筆。

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