2023年の「アパレル小売業」業績がコロナ禍前を上回る水準まで伸長 ECサイト活用、インバウンド需要が成長の鍵か

ECのミカタ編集部

2023年「アパレル小売業」業績、コロナ禍前を上回る ECサイト活用・インバウンド需要の取り込みが成長のカギ

株式会社東京商工リサーチ(以下:東京商工リサーチ)は2024年5月17日、国内アパレル小売業の2023年業績を公表。2443社の2023年決算(1〜12月期)は、売上高が4兆8891億5300万円(前年比9.2%増)、最終利益が2451億1800万円(同41.0%増)と、2年連続で増収増益となった。
※国内のアパレル小売業者は、中分類57「織物・衣服・身の回り品小売業」(細分類5712「寝具小売業」を除く)を対象に集計。単体決算で最新期を2023年1月期〜12月期とし、5期連続で比較可能な2443社を抽出、分析している。

アパレル業界全体の底上げを示す結果に

アパレル小売2443社の2023年決算の売上高合計は4兆8891億5300万円(前年比9.2%増)と、コロナ禍前の2019年の売上高合計を136億700万円上回った。最終利益も2451億1800万円(同41.0%増)と2000億円を超え、2019年の1.5倍に増加する結果に。

2022年の売上高、最終利益はユニクロ、しまむらの大手2社がけん引したが、2023年はこの両社を除いても売上高合計3兆3458億7300万円(同9.5%増)、最終利益999億7700万円(同148.4%増)と伸長。この結果はアパレル業界全体の底上げを示しているといえるだろう。

赤字企業率が2年連続改善、増収企業数も増加傾向に

最終損益別では、2023年の黒字企業率は73.8%と前年の71.5%から2.3ポイント上昇。コロナ禍の影響が最も深刻だった2021年は69.1%で、黒字企業の割合は4.7ポイント上昇し2年連続で改善した。しかし、コロナ禍前の2019年の黒字企業率81.7%と比較すると、まだ7.9ポイントも下回っている状況は無視できない。

また、2023年の増収企業の割合は37.9%と、減収企業の29.3%を8.6ポイント上回った。アフターコロナの人流回復などの好影響、物価高もあり、2023年は増収企業と減収企業の割合が逆転する結果に。

一方、円安や原材料費高騰などで仕入価格が上昇しているにも関わらず、売上が横ばいの企業は32.6%に拡大。増収企業率はアパレル製造の55.3%やアパレル卸の53.9%を大幅に下回り、消費者に近い分、価格転嫁が進んでいない様子がうかがえるだろう。

業績の二極化がさらに進むことが懸念

新型コロナ5類移行による人流回復や在宅勤務縮小に加え、コロナ禍で加速したEC販売の流れによる新規顧客の開拓は堅調となった。さらに、インバウンド需要の急回復、大手ファストファッション業者のけん引によって、2023年のアパレル小売の業績はコロナ禍前の2019年を上回る水準まで伸長した。

しかし、長引く円安や海外の人件費上昇圧力は、衣料品の輸入価格の高騰など、コストアップを招いている。大手を中心に、SPA(製造小売業)体制による流通コスト削減などの取り組みを強化しているが、小・零細企業には負担が重く、業績の二極化がさらに進むことが懸念されるだろう。

海外の越境EC業者に対抗できるネット販売向けプラットフォームの拡充など課題も多い。こうした状況において、アパレル小売業者の業績がどのように推移するか、今後の動向に注目、期待したい。


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