2024年5月景気動向 高まるインバウンド需要による影響は? TDB調査

ECのミカタ編集部

国内景気は2カ月連続で悪化 個人消費の低迷が下押し要因に。今後は実質賃金のプラス転換がカギ

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は2024年5月20日から5月31日までの景気動向調査を行い、その結果を公表した。ここでは、業界別の景気動向に絞って紹介する。

調査概要

◆調査期間:2024年5月20日~5月31日
◆調査方法:インターネット調査
◆調査事項

▷景況感(現在)および先行きに対する見通し
▷経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について
◆調査対象:2万7104社
◆有効回答:1万1410社
◆回答率:42.1%
◆調査機関:株式会社帝国データバンク

◆出典元:2024年5月の景気動向調査(株式会社帝国データバンク)

コスト負担の増加もあり2カ月連続で後退

2024年5月の景気DIは前月比0.6ポイント減の43.5となり、2カ月連続で悪化した。

国内景気は、個人消費が低迷したことに加えて、原材料価格の高止まりなどコスト負担の増加もあり、2カ月連続で後退。5月の国内景気は、実質賃金の減少が続くなかで個人消費DIが大幅に悪化したことに加えて、国内旅行を含む観光産業が低迷によって、主要観光地を抱える地域が落ち込んだ。

原材料価格の高止まりや人件費の高騰、2024年問題への対応にともなうコスト負担増、不十分な価格転嫁なども下押し材料になったといえるだろう。

一方、自動車の生産再開や活発なインバウンド消費はプラス材料に。さらに分譲マンションの建設需要や半導体関連工場の進出、ホテル関連の設備投資は好材料だった。

消費マインドの低下が幅広い業種で悪材料に

業界全体としては個人消費の停滞ほか、原材料価格の高止まりや不十分な価格転嫁などが響き、10業界中8業界で悪化。「運輸・倉庫」は改善となったが、企業規模間で濃淡が現れる結果となった。

◆小売:前月比1.0ポイント減、3カ月ぶりに悪化
「家電・情報機器小売」(同3.5ポイント減)は、物価高による買い控えが販売数減に直結し2カ月連続で悪化した。人件費や光熱費などの上昇に加え、大手スーパーとの価格競争も響き「飲食料品小売」(同1.5ポイント減)も2カ月連続で下落。一方「医薬品・日用雑貨品小売」(同0.3ポイント増)は5カ月ぶりに改善した。

◆サービス:同1.2ポイント減、2カ月連続で悪化
食材や光熱費の値上げ、人件費高騰が重荷となる「飲食店」(同2.6ポイント減)は3カ月ぶりに40台へ下落。一方、新規患者数が増加してきたといった声のある「医療・福祉・保健衛生」(同0.7ポイント増)は、2カ月ぶりに改善した。

◆製造:同0.5ポイント減、2カ月連続で悪化
売り上げは伸びているが、原材料価格や人件費の高騰により利益を圧迫しているといった意見もあり、飲食料品関連は製造、卸売、小売にわたり悪化がみられた。一方、大手自動車メーカーのけん引や海外販売の好調となった「輸送用機械・器具製造」(同0.8ポイント増)は、2カ月ぶりに持ち直した。

◆建設:同0.6ポイント減、4カ月連続で悪化
各地で公共工事が少ないなどの意見が目立つ。一方で、半導体関連工場の進出による各種工事や再生エネルギー関連の引き合い増、ホテル関連の設備投資などは好材料となっている。

引き続き横ばい傾向で推移すると予測

今後は、賃上げや定額減税など家計の所得環境の改善による個人消費の動向がポイントになる中、実質賃金の下落がプラス転換することが鍵になるだろう。

自動車の挽回生産やインバウンド需要の増加、シリコンサイクルの回復なども好材料とみられる。一方で海外経済の下振れリスクのほか、日本銀行の追加利上げや人手不足、電力など各種補助金の終了、裾野の広い自動車業界の不正問題による影響も無視できない。

こうした状況を踏まえ、今後の景気は好悪それぞれの要因が表れるなかで、横ばい傾向で推移すると見込まれるだろう。

飲食料品小売からは「イベントなどの開催が復活しているが、消費につながる様子がみえない。買上げ点数がここ数年と比べて少ない」といった意見もあがっている。

また、好調なインバウンドの一方で国内旅行者の消費が低調といった声も多数寄せられた。

厳しい状況が続く景気動向に対して、EC事業者としては広い視野を持ち柔軟な対応を心がける必要があるだろう。国内外市場を注視しつつ、今後の施策検討を進めていきたい。


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