キリンがファンケルを完全子会社化へ 世界の健康食品市場で存在感示せるか

三浦真弓【MIKATA編集部】

キリンホールディングス株式会社(社長COO:南方健志、以下キリン)は2024年6月14日、健康食品大手の株式会社ファンケル(社長執行役員CEO:島田和幸、以下ファンケル)を完全子会社化することを発表した。TOB(株式公開買付け)を実施し、年内にも全株式を取得するという。2019年の資本業務提携から5年を経ての買収は、ヘルスサイエンス領域の拡大を目指すものだ。

ファンケル買収によりシェア拡大を確実に

2019年にファンケル株式の約33%(議決権ベース)を取得するとともに資本業務提携契約を締結したキリン。当初から、ヘルスサイエンス事業の拡大が見込まれており、実際に製品共同開発などを行ってきた。例えば「キリン×ファンケル BASE(ベース)ピーチ&ザクロ」(2020年8月発売で現在は終売)をはじめとする飲料や、ファンケルの体内効率設計とキリンのプラズマ乳酸菌の素材を生かした機能性表示食品「免疫サポート」(2020年12月発売)、さらには共同研究開発原料「白麹ステロール」を配合した「ビューティブーケ」のリニューアル商品など、領域も着実に広げている。さらに2024年1月には環境に配慮した取り組みとしてビール類製造時の副産物である仕込前モルト粉(以下、モルト粉)を活用したパルプモールド製ボックスの開発も発表していた。

こうした共同開発が進む中、今回、資本業務提携から進んだ完全子会社化の発表となったわけだが、背景にはヘルスサイエンス事業をグループの長期的成長を担う事業に育成するべく強化するという目的がある。

世界の健康食品市場にいかに切り込んでいけるか

2023年にはアジア・パシフィックで健康食品(ナチュラル・ヘルス)事業を展開する豪州企業Blackmores Limited(代表取締役社長:Alastair Symington、以下Blackmores)を買収し、海外市場における強固な事業基盤を獲得。

一方のファンケルは、創業から一貫して追求する世の中の「不」の解消に向け、売上の7割を占める直販チャネル(通信販売、直営店舗販売)で培ったお客様とのつながりや顧客理解力、お客様の声を研究開発に生かし商品化する技術が強みとしている。

キリンは長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」で食領域、医領域に加え、ヘルスサイエンス領域で事業を立ち上げ、お客様の健康課題を成長機会に変えることにより、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」ことを明示。今回の子会社化では、「(キリンとファンケル)それぞれが持つ独自の強みを相互補完し、競争優位なビジネスモデルの構築を加速」するしている。

ビール市場が伸び悩むだけに、「超少子高齢化+コロナ禍」を経てますます拡大する世界の健康食品市場にいかに切り込んでいけるか。注目が集まる。