3カ月連続の景気悪化は4年1カ月ぶり 2024年6月景気動向(帝国データバンク調査)

宮地彩花【MIKATA編集部】

株式会社帝国データバンクは2024年6月17日から6月30日までの景気動向調査を行い、その結果を公表した。ここでは、業界別の景気動向に絞って紹介する。

調査概要

調査期間:2024年6月17日~6月30日(インターネット調査)
調査対象:2万7159社、有効回答企業1万1068社、回答率40.8%
調査機関:株式会社帝国データバンク

出典元:TDB景気動向調査(全国)― 2024年6月調査 ― (株式会社帝国データバンク)

2024年6月の景気DIは43.3

株式会社帝国データバンク(以下、TDB)によれば、2024年6月の景気DIは前月比0.2ポイント減の43.3となり、3カ月連続で悪化したという。景気DIとは全国企業の景気判断を総合した指標のことで、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味する。

国内景気は、円安にともなうコスト負担の高まりや個人消費の落ち込みにより改善が進まなかった。3カ月連続の悪化は2020年5月以来4年1カ月ぶりとなる。個人消費の落ち込みについてはDIが42.8(前月比0.5ポイント減)と2カ月連続で落ち込んでいる。企業からは消費者の節約志向を懸念する声が見られたという。一方で定額減税や賞与支給等から今後の個人消費DIは少し上向くのではという期待もあった。

※画像元:株式会社帝国データバンク

下振れ要因として、先述した円安にともなうコスト負担の高まりや個人消費の落ち込みだけでなく、人件費の増加や2024年問題への対応、不十分な価格転嫁なども悪材料に。その反面、インバウンド消費やDX関連投資、民間工事の発注増加、エアコンなど季節商材の販売、活発なイベントの開催などは好材料だとした。

業界別の景気DI、10業界中6業界で悪化

ここでは各業界別の景気DIと詳細をまとめる。

■サービス(49.2):前月比0.5ポイント減、3カ月連続で悪化
好調なインバウンドに支えられつつも国内旅行者の低迷から「旅館・ホテル」(同3.0ポイント減)は3カ月連続で悪化。同じく「娯楽サービス」(同1.6ポイント減)も3カ月連続で下落。外食の利用が減少しているといった声のあがる「飲食店」(同1.3ポイント減)は2カ月連続で悪化した。「広告関連」(同2.5ポイント減)も資材の高騰や紙商材の減少などから2カ月連続で落ち込んだ。

一方で患者数が増加してきたといった声のある「医療・福祉・保健衛生」(同0.8ポイント増)は、2カ月連続で改善。

■小売(40.3): 同0.4ポイント減、2カ月連続で悪化
「飲食料品小売」(同0.6ポイント減)は節約志向から来店頻度や購入点数の減少が響き3カ月連続で悪化。新品購入の買い控えといった声があがる「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同3.9ポイント減)は大きく下落。住宅需要が厳しく「家具類小売」(同1.5ポイント減)は2カ月連続で落ち込んだ。

他方、中古車相場が高騰といった声が聞かれる「自動車・同部品小売」(同1.1ポイント増)は3カ月連続で改善。気温上昇から季節需要が高まり「家電・情報機器小売」(同2.4ポイント増)は3カ月ぶりに改善した。

農・林・水産(41.9):同1.8ポイント減、2カ月ぶりに悪化
消費の落ち込みや飼料、農業資材の高止まりが悪材料に。加えて、住宅着工戸数の停滞により木材需要の減少も下押し要因となった。

他方、魚価の高水準での推移や豚肉価格高騰の継続というように、価格の上昇が売上増加につながり好材料と捉える企業も表れている。

製造(39.4)…:同0.2ポイント増、3カ月ぶりに改善
「精密機械、医療機械・器具製造」(同4.6ポイント増)は医療用機械器具を中心に3カ月ぶりに上向いた。自動車業界の不正問題の影響は残るものの、海外受注や生産が安定してきたメーカーもあり「輸送用機械・器具製造」(同1.1ポイント増)は2カ月連続で改善。民間の設備投資意欲が高いなどの声が聞かれる「電気機械製造」(同1.5ポイント増)も2カ月連続で改善した。

他方、購買意欲の低下が表れたほか、原材料や光熱費などの高止まりが影響する「飲食料品・飼料製造」(同0.2ポイント減)は3カ月連続で悪化した。

引き続き横ばい傾向で推移か

TDBによれば、今後の国内景気は賃上げやボーナスの増加にともなう実質賃金の動向がポイントになるという。とはいえ、厚生労働省の毎月労働統計調査によれば実質賃金指数は前年同月比でマイナスが続いている。これが定額減税や夏の賞与で個人消費DI回復につながるか気になるところだ。

また円安が進むなかで、インバウンド消費の拡大や自動車の挽回生産、世界的な半導体需要の回復なども景気回復のプラス材料となるだろう。

一方で人件費や物流コストの増加、仕入単価の上昇スピードに価格転嫁が十分に追いつかないことや、家計の節約志向の高まりなどが下振れ要因として懸念される。

インバウンドに期待する一方で、運輸・倉庫業界では「中国景気の低迷により輸出が不調だ」という声もあった。EC事業者においては国内だけでなく、海外の景気動向も見た上で柔軟な対応が求められるだろう。