経産省、Amazonに勧告 手数料カテゴリーに関する開示が問題に
2024年8月2日、経済産業省は、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律第6条第1項に基づき、アマゾンジャパン合同会社、Apple Inc.及びiTunes株式会社に対して提供条件等の開示に関する勧告を行ったことを発表した。ここでは、EC事業者に関連する、アマゾンジャパン合同会社の勧告内容についてとりあげる。
アマゾン、手数料カテゴリー開示違反に
経済産業省がアマゾンジャパン合同会社(以下、アマゾンジャパン)へ勧告した経緯は以下の5点。
1.商品のカテゴリーごとに定められた手数料率(手数料カテゴリー)と出品者が出品時に選択する「商品タイプ(※1)」「ブラウズノード(※2)」(商品カテゴリー)が異なりうることを開示していなかったこと
2.アマゾンジャパンが手数料カテゴリーの決定主体であることが明確に開示されているとは認められなかったこと
3.商品例が当該手数料カテゴリーに属するという判断基準が開示されていないこと
4.個々の出品者の販売商品の販売手数料変更に関する事前通知について、プッシュ通知が行われておらず、少なくとも変更の理由が開示されていなかったこと
5.手数料カテゴリー自体の変更に関する事前通知について、少なくとも2023年3月31日から2024年5月7日の間の2回の変更については事前開示が行われていなかったこと
また事案の詳細によれば、経済産業省が運営する相談窓口に寄せられた複数の事案において、アマゾンジャパンが出品者に対し、出品者の選択した商品カテゴリーとは異なる販売手数料カテゴリーを適用し、商品カテゴリーに対応する販売手数料より高額な販売手数料を徴収する行為が認められたとしている(※3)。
これらの点と実態を踏まえて、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律第5条第1項(提供条件の開示の方法等)および同条第4項第2号(提供条件の変更の事前開示)等を遵守していないため、経済産業省は勧告が必要だと判断したという(※4)。
※1商品タイプ:類似する項目を共有する一連の商品群
※2ブラウズノード:購入者がAmazon.co.jp内で商品を探しやすくなるように、商品を階層化して分類したもの
※3 出典元:事案の詳細(経済産業省)
※4 出典元:アマゾンジャパン合同会社、Apple Inc.及びiTunes株式会社に対する勧告を行いました(経済産業省)
販売手数料の条件を明確に…勧告の内容
特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律は、デジタルプラットフォームのうち、特に取引の透明性・公正性を高める必要性の高いプラットフォームを提供する事業者が規制対象となる法律(※5)。
今回その法律に違反するとして、アマゾンジャパンが勧告された訳だが、勧告内容は下記の通り。
1.販売手数料に関する提供条件の内容を明確かつ平易な表現で開示すること
2.手数料カテゴリー自体の変更及び個々の出品者の同種商品に適用される手数料カテゴリーを変更する場合には、事前に内容及び理由を開示すること
3.代表社員の職務執行者において、違反事実や上述の措置について確認すること
4.上述の措置について、自社の関係役員及び従業員や出品者に周知徹底すること
5.透明化法に違反することがないよう、法令遵守体制の整備のために必要な措置を講ずること
6.上記措置について、代表社員の職務執行者の確認の上で、勧告から1年の間、3か月ごとに、経済産業省に対し履行状況を報告すること
すでに、アマゾンジャパンに対しては、2024年4月25日付けで、法第12条第2項に基づき報告を求めるだけでなく、手数料カテゴリーの内容が時期により異なる場合には、その変遷(変更内容及び変更時期)を含めて提出するよう求めていた。しかし、提出期限内の報告では、5月7日時点の手数料カテゴリーおよび5月14日以降の手数料カテゴリーを示したのみだったという。
その後、アマゾンジャパンから手数料カテゴリーのすべての変遷に関する報告が行われたというが、今後の事業者への対応が気になるところだ。
事業者においては、手数料カテゴリーのガイドラインや販売手数料の返金ポリシー等を確認し、不利益を被らないようできる限りの対策は行っていきたい。
※5 参考元:特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律のポイント(2020年5月27日成立、2020年6月3日公布)