楽天、第2Q決算で過去最高の5373億円達成 全セグメント増収で通期黒字化へ

宮地彩花【MIKATA編集部】

楽天グループ株式会社(以下、楽天)が2024年8月9日、2024年度第2四半期(2024年4月-6月)の決算を発表した。第2四半期は「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の全セグメントにおいて前年同期比で増収。通期黒字化達成に向けて着実に前進しているとした。

ここでは、全体の連結売上収益のハイライトとECに関わる「インターネットサービス」セグメントを中心に紹介する。

連結売上収益は、第2Qで過去最高の5373億円に

連結売上収益は、第2Qで過去最高の5373億円に画像提供:楽天グループ(2024年度第2四半期資料より)

楽天が発表した2024年度第2四半期の連結売上収益は、5373億円(前年同期比8.1%増)と第2クオーターでは、過去最高を達成した。これは、楽天市場をはじめとする「インターネットサービスセグメント」、楽天カードや楽天Payなどの「フィンテックセグメント」、楽天モバイルなどの「モバイルセグメント」すべてのセグメントで前年同期比より増収したことになる。

連結Non-GAAP営業利益はマイナス118億円とマイナス着地だったものの、前年同期比276億円の改善。また連結Non-GAAP営業利益に減価償却費等を加算して算出した「連結EBITDA」においても、668億円の黒字を達成。金融を除いた非金融事業のEBITDAも99億円の黒字と、2024年通期黒字化に向けて着実に前進した形となった。

国内EC流通総額はマイナスで着地も、質重視で想定通りの利益成長

EC事業をはじめとする「インターネットサービスセグメント」は売上収益が3039億円(前年同期比3.1%)、Non-GAAP営業利益は189億円(前年同期比+30.3%)と高成長を記録。

しかし売上収益においては、2023年7月に一部終了した全国旅行支援による「楽天トラベル」における高い前年比ハードルや、同年12月に実施したSPU(スーパーポイントアップ:対象サービスの条件を達成すると楽天市場での買い物のポイントがアップするプログラム)改定(※1)の影響を除いた結果となっている。

画像提供:楽天グループ(2024年度第2四半期資料より)

この結果について、楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長 最高執行役員 三木谷浩史氏(以下、三木谷氏)は「SPU改善等を通して、優良な顧客により比重をおいた取引を行ってきた。これにより売上成長率も収益性も少しずつ改善してきた」と説明。

以前、第1クオーターの国内EC流通総額の赤字を受けて、三木谷氏は「赤字が大きく出ているユーザーから、私たちとともにしっかりと健全な収益を上げられるユーザーへとシフトしていることが背景にある。量とともに質を追い続けているため、大変申し訳ないところもある」と発言していた(※2)が、今クオーターでは、その質を追い続けてきた結果が少しずつ現れてきたようだ。

※1 SUPの特典内容変更:SPUの特典内容変更について(楽天市場)
※2 関連記事:楽天、第1Q決算で過去最高の5136億円連結売上収益記録を発表 黒字化達成へ計画通り進捗

楽天市場の流通総額は順調に回復、ふるさと納税ポイント付与禁止の影響は?

先述したSPUおよび0/5(毎月0と5のつく日)改定等により、楽天市場においては2024年第1クオーターで一気に減少したものの、2024年第1クオーターから第2クオーターにかけては堅調に推移。今後の成長率の見通しとしては、前年のふるさと納税ルール変更に伴う駆け込み需要に伴い、第3クオーターはマイナスを予測。第4クオーターよりふるさと納税とSPU等の改正影響の一巡でプラス成長を目指すとしている。

画像提供:楽天グループ(2024年度第2四半期資料より)

先日、楽天では地域創生事業において「地域エンパワーメントアワード」を新設。日本各地における関係人口(※3)のさらなる創出と拡大を目的に「商業(Eコマース)・観光・ふるさと納税」の三部門で自治体を表彰するイベントを開催(※4)。その一方で、ふるさと納税へのポイント付与を禁止する総務省告示改正(2025年10月施行)が発表されている。

これに対し、三木谷氏は自治体に負担を求めないポイント付与でのプロモーション等で「ふるさと納税」を応援してきたと主張。楽天に賛同する署名は約200万件にも達し、引き続き強く撤回していきたいとした。

※3 地域や地域の人々と多様に関わる人々の総称
※4 出典元:楽天、「地域エンパワーメントアワード」を新設し、 商業(Eコマース)・観光・ふるさと納税の3部門における2024年の受賞自治体を発表(楽天グループ株式会社)

AIで本当に欲しい商品発見をサポート

今年注力している生成AIに関しては、RakutenAIのローンチにより、消費者・企業双方に向けた複数のAI機能実装を加速。

画像提供:楽天グループ(2024年度第2四半期資料より)

顧客が何を検索したかだけでなく、何を検索したいか理解する「セマンティック検索」では検索結果ゼロが導入により98.5%の減少(2023年12月テスト結果)。またレコメンデーション機能ではCTR9.2%増加、ビジュアル検索なども発表されている。

また出店店舗においては、2024年4月にはAIツールの活用推進のための動画講座「楽天AI大学」(※5)が発表されている。これらの機能を活用しつつ、今後の楽天市場の動向を注視しておきたい。

※5 出典元:「楽天市場」、 AIを活用した店舗運営の効率化や生産性向上を推進・支援(楽天グループ株式会社)