2024年の猛暑による酒類業界への影響は? 帝国データバンク調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は2024年8月19日、酒類業界の景況感に関する分析を公表した。本記事では一部内容を抜粋して紹介する。
調査概要
◆調査期間:~2024年7月31日
◆調査機関:株式会社帝国データバンク
◆出典元:酒類業界の最新景況レポート(2024年7月)(株式会社帝国データバンク)
※酒場DIは、「果実酒製造」「ビール製造」「清酒製造」「蒸留酒・混成酒製造」「酒類卸売」「酒小売」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「酒場,ビヤホール」の景気DIから算出
酒場DIは4カ月ぶりに改善
2024年以降の酒場DIは、ビヤホールなどの小売店では年末の宴会需要や3月の歓送迎会需要などのプラス材料があった一方、メーカーでは原材料高騰による値上げで販売数量が減少したことが影響し、おおむね40台前半で推移していた。
こうした状況を背景に、直近の2024年7月は猛暑が追い風となり、酒場DIは44.4(前月比4.4ポイント増)と4カ月ぶりに改善し、全産業の景気DI(43.8)を上回った。
足元の動きに対して、企業からは以下のような意見があげられた。
◆暑い日が続いて、飲料の売れ行きが良い。(酒小売)
◆売り上げがコロナ前の90%まで回復したが、酒類消費の多様化により100%への回復は厳しい。販売価格へ転嫁したくとも、簡単には行かない。(清酒製造)
顧客層の開拓、モーダルシフトに注力
日本国内での酒類消費は縮小傾向にあり、酒類メーカーは海外市場での成長を目指している。財務省の「貿易統計」によると、2023年の日本産酒類の輸出金額は約1344億円に達し、コロナ前の2019年に比べ倍増。
2024年1月から6月の輸出金額では、中国経済の低迷の影響を受け前年同期から減少傾向で推移したものの、ビール品目は韓国への輸出が増加したため、前年同期比35.2%の増加となった。
酒類メーカーでは、原材料価格の高騰によるコストアップのほか、これまで好調だった「第3のビール」の酒税引き上げによる販売数量の伸び悩み、物流の2024年問題によるドライバー不足での輸送費の高騰などが懸念されている。
各社は、26年10月に控える3度目のビール減税を見据え、ビール新ブランドや低アルコール飲料の投入による顧客層の開拓、鉄道や船舶によるモーダルシフトなどに注力する意向を示す。健康志向の高まりなど消費者の嗜好が多様化する中、酒類業界がどのような施策を展開していくのか注目されるだろう。