郵便・物流事業は赤字幅拡大に 日本郵政Gの決算と第1Qの動き

奥山晶子

2024年8月9日、日本郵政グループが、2025年3月期の第1四半期(2024年4月~6月)連結決算概要を公表した。 グループ全体の経常利益は増益しているが、セグメント別に見ると郵便・物流事業の減益が目立つ。
この記事では決算情報のポイントをまとめたほか、EC事業者にとって特に深く関連する郵便・物流事業もあわせて解説していく。

日本郵政グループ 2025年3月期 第1四半期 決算の概要

日本郵政グループによると、2025年第1四半期の連結業績サマリーは以下の通り。

※画像引用元:2025年3月期 第1四半期決算説明資料p3

グループ全体では、経常収益は2兆7358億円となり、前年同期比で1120億円の減収。一方で経常利益は2114億円となり、前年同期比で384億円の増益となっている。

※画像引用元:2025年3月期 第1四半期決算説明資料p5

日本郵政グループには複数のセグメントがある。EC事業者が特に注目すべき「郵便・物流事業セグメント」の営業収益は前年前期比で45億円減少の4783億円。営業損益は赤字幅が294億円拡大する結果となった。

郵便局窓口事業も減収となったが、国際物流事業、不動産事業は収益増加。銀行業は経常利益192億円増加の1377億円、生命保険業は経常利益248億円増加の681億円となっている。

郵便・物流事業の決算概要

気になる郵便・物流事業セグメントの業績詳細を見ていきたい。日本郵便とその子会社(日本郵便輸送やJP楽天ロジスティクス、JPロジスティクスグループ)の決算をまとめた連結決算の概要は、以下の通りだ。

※画像引用元:2025年3月期 第1四半期決算説明資料p7

右上の棒グラフを見ると、取扱数量はゆうパックやゆうパケット、ゆうメールなどの荷物が増加したものの、郵便が5.7%の減少。全体としては2.2%の減少となっている。左下の滝グラフは営業損益の前年同期からの増減分析で、左から2番目の営業収益は、郵便関係収入等の減収により、前年同期比45億円の減少。

営業費用はコストコントロールの取り組みなどを進めたものの、人件費や集配運送委託費の増加で248億円の増加。これらの結果、営業損益は364億円の営業損失となり、前年同期と比べて赤字幅は294億円に拡大。

なお郵便・物流事業の業績は、他セグメントに比べても減収が目立つ。営業損益の推移をグラフで見ると、郵便・物流事業の不振は明らかだ。

※画像引用元:2025年3月期 第1四半期決算説明資料p14より一部抜粋

第1四半期の動き

グループ全体の経常利益は増益したものの、郵便・物流事業の減少が大きく目立つ結果となった。この第1四半期で、日本郵政グループにどんな動きがあったのだろうか。

2024年5月15日には「JP ビジョン2025+(プラス)」の策定を発表(※1)。2021年5月に策定した中期計画書「JP ビジョン2025」を見直したもので、ドローンや配送ロボットも検討する強靱な輸配送ネットワークの構築、置き配や他企業連携の強化を含む収益力の強化、郵便・物流DXの推進などが掲げられている。

5月27日には、「お客さまにグループ一体の価値を提供する」ことを掲げる「JP ビジョン2025+」実現の一環として、「ゆうびんID」の名称を「ゆうID」に変更するとともに、「郵便局アプリ」に新たに金融機能を追加することを発表した(※2)。これまでアプリでは郵便・物流を中心としたサービスを提供してきたが、今後はお金の悩みを相談予約するほか、「かんぽマイページ」との連携がスムーズに行えるようになる。

なお5月9日には、セイノーグループとの業務提携に関する基本合意を発表(※3)。幹線輸送による共同運行を実現するための基本合意で、荷物をお互いに積み合わせて共同運行することにより、輸送効率の向上や環境負荷の低減、顧客の利便性維持が期待される。

さらに周知されているとおり、2024年の秋から郵便物の料金が改定されることが決定している。これにさきがけて、6月13日には改定時期や内容、新料額の普通切手の発行について発表があった。郵便料金の改定に伴う新料額の普通切手や郵便はがきは9月2日から発売され、10月1日から改定料金が適用になる。この料金改定が郵便分野の業績回復に寄与するかどうか、引き続き注目していきたい。

※1 出典元:「JP ビジョン2025+(プラス)」の策定に関するお知らせ(日本郵政株式会社他)
※2 出典元:日本郵政グループ各社のサービスを1つのIDで ~「ゆうID」で新たなお客さま体験を~(日本郵政株式会社他)
※3 出典元:日本郵便グループとセイノーグループとの幹線輸送の共同運行に向けた業務提携に関する基本合意について(日本郵政株式会社他)
※4 出典元:郵便料金の改定および新料額の普通切手の発行などについて(日本郵政株式会社他)


記者プロフィール

奥山晶子

2003年に新潟大学卒業後、冠婚葬祭互助会に入社し葬祭業に従事。2005年に退職後、書籍営業を経て脚本家経験を経て出版社で『フリースタイルなお別れざっし 葬』編集長を務める。その後『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』(文藝春秋刊/2012年)、『「終活」バイブル親子で考える葬儀と墓』(中公新書ラクレ/2013年)を上梓。現在は多ジャンルでの執筆活動を行っている。

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