倉庫レイアウトの考え方。改善案や基本の配置について解説
物流倉庫のレイアウト設計によって作業効率や保管効率は大きく変動します。
適切な設計ができればコスト削減・品質向上につながり、ひいては利益が最大化されますが、反対に不適切な設計となると物流コストの増加・作業スタッフの士気低下を招いてしまいます。レイアウトは、物流倉庫の要なのです。
そこで今回は、倉庫レイアウトについての考え方や改善案、配置例や注意点について解説します。
倉庫レイアウトを改善・最適化するメリット
倉庫レイアウトの改善により、大きく3つのメリットが得られます。
作業効率が向上する
倉庫レイアウトを最適化することで、作業効率が向上します。
人やモノの動線の改善により、移動距離と作業時間が短縮できるためです。
倉庫レイアウトは、特にピッキングの作業効率に大きく影響します。
ピッキングの作業時間が短縮すれば1日における出荷処理数が増えるため、納期を早めることも可能です。
顧客の中には、納品までのリードタイムがより短い事業者に注文する方も多くいます。
作業効率向上による納期短縮で機会損失を防ぎ、売上拡大も期待できます。
コストの削減ができる
前項で述べたように、倉庫レイアウトを最適化すると作業効率が向上します。これによりスタッフの作業時間が短縮され、人件費の削減にもつながります。
また、レイアウトを見直すことでデッドスペースを埋め、保管効率を高めることも可能です。
保管するにも倉庫の賃料等のコストがかかっているため、保管効率向上によりコスト削減が期待できます。
ミス・事故の予防ができる
商品が識別しづらい配置が原因の誤ピックや、動線・通路幅が狭いことによる作業者同士の接触事故などのミス・事故は、レイアウトの見直しで減らすことが可能です。
倉庫レイアウトの改善により整理整頓されれば掃除がしやすくなり、倉庫内環境の向上や商品の品質維持にもつながります。
効率的な倉庫レイアウト(配置)の考え方
ここでは、効率的な倉庫レイアウトを考えるうえで押さえるべき点を解説します。
倉庫の特徴と保管条件を確認
まずは倉庫自体の特徴と、在庫の保管条件を把握します。
<倉庫の特徴の例>
- 広さ
- 商品の出入り口の位置
- スペースの形
- 天井高
- 耐荷重
- 構造(免震/耐震)
- 電源の位置(フォークを使用する場合)
- ランプウェイ方式/バース共有型
<在庫の保管条件の例>
- 何段まで段積み可能か
- 在庫の保管期間
- 保管商品のボリューム
- SKU(品目数)
- 温度管理が必要か否か
- 先入れ/先出し
倉庫は一見どれも同じ造りに見えますが、構造によってはフォークリフトの使用が難しかったり、地震対策の方法が違ったりします。
また、在庫の保管条件によって使用するマテハン機器や必要な設備が変わるため、まずは倉庫と在庫の条件について確認をします。
作業の流れを正確に把握
一般的に、倉庫では商品の入荷から始まり、開梱・検品・保管・ピッキング・梱包・出荷と作業が進みます。
現在の作業工程から下記を細やかに把握し、適切なのかを検証します。
- 現在の作業動線
…特にピッキング時に探す、開梱する、歩く、かがむ、方向転換する等のアクションが発生していないかを確認 - 現在の保管方法
…ラック保管/パレット保管、先入れ先出しの場合の棚入れ方法、ロケーション管理方法等を確認 - 使用しているマテハン機器や設備
…台車、フォークリフト、ネステナー、ラック等の設備・機器のサイズと重量を確認
安全性の確保
作業や保管の効率を重視するあまり、安全性がおろそかになっては本末転倒です。
高所に重量物を配置していないか、棚の結合・アンカー止め等による地震対策は十全か、動線上に死角がないか等の確認を行い、作業者の安全を確保します。
また、フォークリフトを使用する場合には、作業区域の識別や運用ルールの徹底、スタッフへの教育・周知も必要となります。
倉庫の基本的なレイアウト
倉庫レイアウトは、商品の入口を起点、出口を終点として、一連の流れが一筆書きとなるように考えます。
I字型
商品の入口と出口を一直線上に配置するレイアウトです。
入荷・検品・保管・梱包・出荷のエリアを一列に配置することで、商品混在のリスクも軽減できます。
入出荷を同時にできることもメリットの1つです。
U字型
入口・出口が同一または近距離に位置するレイアウトです。
入荷作業と出荷作業を搬出入口の近くへ、保管場所を倉庫の奥に配置することで、作業動線がU字型となります。
入出荷が隣り合わせとなるため、複数人作業の場合コミュニケーションが取りやすいといったメリットがあります。
一方で、入荷作業・出荷作業場所が近いため、商品が混在しないようにエリアをしっかり区切る必要があります。
立体倉庫型
高層ラックや中二階にできるメザニンラックを使用したレイアウトです。
高い場所には出荷頻度が低い商品を配置することで、作業効率を維持しつつ保管効率を高められます。
また近年導入が進んでいる立体自動倉庫は、ラックへの格納・出庫を機械が行うため、出荷頻度によるロケーションを考慮せずに高さを最大限活かした運用が可能です。
【状況別】倉庫レイアウト例
ここでは、状況別の倉庫レイアウトの例を紹介します。
狭い倉庫の場合
一般的な倉庫よりも狭い場合は、コンパクトにまとめられるU字型が適しています。
入荷と出荷作業の場所が近いことから人の行き来がしやすく、I型よりも通路幅を取らずに済むためです。
先入れ先出し倉庫の場合
先入れ先出しの商品を保管する場合、フローラック(流動ラック)を活用したレイアウトが最適です。
フローラックとは、フレームに傾斜がついていることにより、一方向から棚入れすると期限が古いものが自動的に前面に押し出される棚を指します。
ピッキングと在庫補充が効率化できるうえ、在庫状況も確認しやすいのが特徴です。
パレット用のフローラックも存在するため、商品に合ったラックを選びましょう。
フォークリフトがある場合
一般的なフォークリフトの場合、約3mの通路幅が必要となります。
人との接触や段差があると大事故につながる危険があるため、事故リスクの洗い出し等による安全性の確保は必須です。
倉庫レイアウトを設計するときの注意点
倉庫レイアウトを設計する際は、有事の際にも安全性を確保するため、消防法に則る必要があります。
消防法で倉庫の通路幅は定められている?
消防法では、倉庫の通路幅について具体的な数値は指定されていません。
ただし、一般的に倉庫は家屋やオフィスなどに比べて窓が少なく、火災時に発見が遅れて被害が拡大しやすいといった観点から、さまざまな消防設備の設置が義務付けられています。
倉庫の構造や延べ床面積によって設置が義務付けられる設備も異なるうえ、自治体ごとに条例を定めているケースもあります。通路幅を検討する際にはこれらの確認も必要であることを押さえておきましょう。
出典:倉庫(14 項)に係る主な消防法令上の規制について|総務省消防庁
倉庫のレイアウト変更の適切なタイミングは?
作業効率が落ちたときや、作業ミス・事故が増えているとき、保管スペースが足りなくなったときはレイアウト見直しのタイミングです。
実際にレイアウト変更を実施するなら、モノの動きが少ない閑散期がおすすめです。
棚卸のタイミングとずらして行うのが一般的ですが、商品在庫が少量かつ棚卸差異が発生していない場合は、棚卸完了直後にレイアウト変更をすることで、在庫差異発生リスクを抑えることができます。
倉庫のレイアウト図の作成方法
倉庫のレイアウト図の作成方法は、大きく3つあります。
エクセルで作成する
エクセルがあればできる、手軽な図面の作成方法です。
行の高さと列の幅を合わせて方眼紙状のシートを作成し、行・列1マス分を何mとして扱うかで図面の縮尺を決定します。
オートシェイプで壁面を表示、図形でラックやデスク等の設備を挿入するのが一般的です。
手軽に作成できる一方、図面用のソフトではないため、扉の形状や立体的な物品等の細かい表現はできず、情報量が少なくなるデメリットがあります。
フリーソフトやアプリを活用する
無償で使用できる製図ソフトも多数あります。
エクセルでは物足りないがコストはかけたくないという方は、フリーソフトも検討するとよいでしょう。
フリーソフト | 概要 |
---|---|
DraftSight | 製図ソフトとして有名なAutoCADに近い操作性 |
Sweet Home 3D | 詳細な3Dグラフィックの作成も可能 |
EdrawMax | エクセルに近い操作性 |
Lucidchart | 他のユーザーと共有可能 |
せっけい倶楽部 | マイホーム設計用だが、3Dグラフィックも作成可能 |
間取りー図 | Android用の無料アプリ |
物流倉庫3D
物流倉庫3Dは、メガソフト株式会社から販売されている有償ソフトです。
マウス操作で敷地やパーツを設定でき、レイアウトプランを手軽に作成できる、まさに物流倉庫に特化した内容となっています。
3DモデルやCAD図面データを表示できるアプリと連動し、自社の倉庫図面作成から顧客プレゼン時の資料としての利用など、幅広い場面で活用可能です。
出典:物流倉庫3D|一般社団法人日本倉庫協会
専門家に相談する
自社での対応が難しい場合は、レイアウト設計を請け負う物流コンサルに依頼するのも手です。
一般的に、事業内容や現状、将来的な展望等をヒアリングした後、最適なレイアウトを提案してくれます。CADデータでの図面提供となります。
迅速にレイアウトの最適解にたどり着きたい場合は、さまざまな物流倉庫を見てきたプロに委ねるのが最短でしょう。
物流倉庫のレイアウトは専門知識をもつコンサルにサポートしてもらおう!
今回は、物流倉庫のレイアウトの考え方や基本、配置例について解説しました。
レイアウトを改善する場合は、まず倉庫・商品の特徴と作業工程の把握を行い、安全性も考慮しながら検討する必要があります。
モノの出入口の場所から、I字型・U字型といった作業動線を決定し、パレット・ラック・立体倉庫など、在庫状況に適した保管方法を選定するのがベストです。
とはいえ、経験が無いのに初めから最適なレイアウトにたどり着くのは難しいことも事実。
レイアウトでお悩みの方は、コンサルにサポートしてもらうことをおすすめします。
ECのミカタでは、経験豊富な専任コンシェルジュがお悩みをヒアリングし、最適な企業をご紹介しています。
相談に際し費用は一切かかりませんので、お気軽にご相談くださいね。