ネットショップの利益率、目安はどれくらい?業界や商品による違いも解説

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ネットショップの利益率、目安はどれくらい?業界や商品による違いも解説

ネットショップを運営するうえで重要な指標の1つが、利益率です。適切な利益率を維持することで事業の持続可能性が高まり、成長のための投資も可能になります。

しかし、利益率は業界や商品によって大きく異なるため、自社の状況を正確に把握し、適切な目標を設定することが重要です。

本記事では、ネットショップの利益率について、基本的な考え方や計算方法、利益率の目安、利益率の高い商品を説明します。ネットショップの売上や利益についてお悩みの方はぜひ参考にしてください。

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ネットショップの利益率の基本的な考え方

ネットショップの利益率を理解するには、まず基本的な概念を押さえる必要があります。ここでは、主要な利益率の指標について解説します。

粗利率(売上高総利益率)

粗利率(売上高総利益率)は、売上高から売上原価を引いた粗利益(売上総利益)を売上高で割って算出します。

ネットショップで、どれだけ効率よく利益を出せているかを示す指標です。

▼計算式

粗利率 = (売上高 - 売上原価) ÷ 売上高 × 100

例えば、売上高が1,000万円で売上原価が700万円の場合、粗利率は以下のように計算されます。

(1,000万円 - 700万円) ÷ 1,000万円 × 100 = 30%

この場合、粗利率は30%となります。

粗利率は、商品の仕入れ価格や製造コストなど、直接的なコストを差し引いた後の利益率を示すため、ビジネスの基本的な収益性を理解するうえで重要な指標です。

売上原価率

売上原価率は、粗利率と表裏一体の関係にある指標です。売上高に対する売上原価の割合を示します。

▼計算式

売上原価率 = 売上原価 ÷ 売上高 × 100

先ほどの例を用いると、売上原価率は以下のように計算されます。

700万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 70%

この場合、売上原価率は70%となります。

売上原価率と粗利率を合計すると常に100%になります。つまり、売上原価率が低ければ低いほど、粗利率は高くなります。EC運営において、売上原価率を下げることが、利益率改善の重要なポイントです。

売上高営業利益率

売上高営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合で、収益性を示す重要な指標です。

粗利益から販売費および一般管理費(販管費)を差し引いた営業利益を売上高で割って算出します。販管費には、人件費や広告宣伝費、ネットショップのシステム関連費用、決済手数料、配送費用などが含まれます。

▼計算式

売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
※営業利益 = 売上高 - (売上原価 + 販管費)

例えば、売上高1,000万円、売上原価700万円、販管費250万円の場合、売上高営業利益率は以下のように計算されます。

(1,000万円 - (700万円 + 250万円)) ÷ 1,000万円 × 100 = 5%

この場合、売上高営業利益率は5%となります。

売上高営業利益率は、ネットショップの運営コストも含めた収益性を示すため、事業の健全性を判断するうえで重要な指標となります。

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ネットショップの利益率の計算方法・計算例

ネットショップの利益率を正確に把握するためには、適切な計算方法を理解し、実際の数字に当てはめて計算してみることが重要です。

ここでは、具体的な計算例を交えながら、利益率の計算方法を紹介します。

以下のような仮想のネットショップを例に考えます。

月間売上高 500万円
売上原価 350万円
販売費および一般管理費(販管費) 人件費 月額50万円
ECプラットフォーム利用料 月額5万円
決済手数料 売上高の3%(15万円)
配送費用 1件あたり500円、月間200件(10万円)
広告宣伝費 月額20万円
合計 100万円

これらの数字を使って、各種利益率を計算してみます。

粗利率 = (500万円 - 350万円) ÷ 500万円 × 100 = 30%

売上原価率 = 350万円 ÷ 500万円 × 100 = 70%

売上高営業利益率 = (500万円 - 350万円 - 100万円) ÷ 500万円 × 100 = 10%

この例では、粗利率30%、売上原価率70%、売上高営業利益率10%となります。

ネットショップの健全性を考えたとき、これらの数値は妥当なのでしょうか。各数値の目安については、次章で詳しく説明します。

ネットショップの利益率の目安は?

ネットショップの運営者にとって、自社の利益率が適切なレベルにあるかどうかを判断するためには、業界の目安を知ることが重要です。ここでは、ネットショップの利益率の目安について解説します。

小売業の平均的な利益率について

まず、小売業全体の利益率についてみてみましょう。経済産業省が公表している「企業活動基本調査」によると、小売業の利益率は以下のようになっています。

売上高総利益率(粗利率) 28.11%
売上高営業利益率 2.85%

出典:2023年企業活動基本調査確報ー2022年度実績ー|政府統計の総合窓口(e-Stat)

これらの数字は、実店舗とオンラインを含む小売業全体の平均値です。

ただし、ネットショップは実店舗と比較して異なる特性を持っているため、これらの数字をそのまま目安とすることはできません。

ネットショップと実店舗の違い

ネットショップと実店舗では、以下のような違いがあります。

  実店舗 ネットショップ
固定費の構造 家賃、光熱費、店舗維持費など固定費が高い システム費用は必要だが、一般的に固定費は低い
人件費 接客スタッフなど、比較的多くの人員が必要 少人数での運営が可能
在庫管理 店舗ごとに在庫を持つ必要がある 集中管理が可能で、在庫効率がよい

これらの違いを考慮すると、ネットショップの利益率は実店舗よりも高くなる可能性があります。

公的機関によるネットショップの利益率のデータはありませんが、業界レポートや専門家の見解から推測すると、以下の目安が考えられます。

粗利率(売上高総利益率) 30〜50%
売上高営業利益率 5〜15%

これらの数字はあくまで目安であり、取り扱う商品や事業規模、運営方法によって大きく異なる点に注意が必要です。

商品や業界によって利益率はかなり違う

繰り返しになりますが、ネットショップの利益率は、取り扱う商品や業界によって大きく異なります。

例えば、アパレルや化粧品など、ブランド力や付加価値の高い商品は粗利率が高くなる傾向があり、家電製品や日用品のような競争が激しい商品は粗利率が低い傾向があります。

自社の取り扱う商品に近いカテゴリーの利益率を参考にすることが重要です。

ネットショップの種類でも利益率はかなり違う

ネットショップの種類によっても、利益率は大きく異なります。主なネットショップの種類とそれぞれの利益率の特徴をまとめました。

ネットショップの種類 利益率の特徴
BtoC(企業から消費者へ) 企業が卸業者から商品を低価格で大量に仕入れて、
消費者へ販売することで利益を出す構造。
競争が激しいため、差別化を図るために低価格で販売したり、
広告宣伝費をかけたりする必要があり、利益が残りにくくなる。
一方、消費者のニーズに応えるための独自の工夫ができれば、
利益を担保しやすくなる。
BtoB(企業から企業へ) 企業レベルでの取引となるため、取引額が大きくなる傾向がある。
また、取引を継続できれば、長期的に売上を確保でき、
広告宣伝費などのマーケティング必要を最小限に抑えられる。
CtoC(消費者から消費者へ) 不要になった商品やハンドメイド製品の販売がCtoCにあたる。
不用品の場合は、利益を出すというよりも
購入金額をいかに回収できるかに焦点があたる。
ハンドメイド製品であれば、一般に流通していない、
オリジナルな製品ということもあり、付加価値をつけやすい。
製作時間や梱包、発送の手間をどれだけ省けるかがカギ。
CtoB(消費者から企業へ) CtoBは個人が企業に対して商品やサービスを販売すること。
クラウドワークスのように自身のスキルを販売したり、
イラストや写真などを素材として提供するものなどがある。
実績や経験が豊富な場合には高単価で販売できるが、
実績が少ない場合は低単価から販売をスタートすることが多く、
利益率が低くなる。
BtoA(企業から政府へ) 企業が政府や自治体に対して商品やサービスを提供することで、
楽天ふるさと納税や自治体のLINE公式アカウント活用などがある。
まとまった取引となり、高額になる可能性があるが、
公共事業特有の煩雑な手続きで時間がかかる場合も。
CtoA(消費者から政府へ) 事例は少ないが、個人が政府や自治体に対して、
商品やサービスを提供すること。
e-taxを利用した所得税の支払いがCtoAにあたり、
利益を出すという側面は弱い傾向があります。

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【実例】ネットショップで利益率が高い商品

取り扱う商品により利益率が異なることを説明しました。ここでは、ネットショップで利益率の高い商品カテゴリーをいくつか紹介します。

ハンドメイド商品

ハンドメイドは独自性が高く、大量生産品との差別化がしやすい点で利益率が高くなりやすいです。一方で、商品数を取り揃えるのが困難なため、ショップ全体の売上規模が小さくなりやすい傾向があります。

例:手作りアクセサリー、オーダーメイド商品、アート作品など

デジタル商品

複製コストがほとんどかからないため、一度の作成でまとまった売上高を確保できる可能性があります。また、配送が不要な点もメリットです。

例:電子書籍、オンライン学習教材、ソフトウェアなど

OEM・プライベートラベル商品

既存商品にオリジナルブランドを付けることで、高付加価値商品に変えることができます。ブランドの育成など別のコストを要しますが、軌道に乗ったときにスケールしやすいといえます。

例:オリジナルブレンドコーヒー、オーダーメイド化粧品など

高級な限定商品

特定の愛好家をターゲットにした専門性の高い商品も、高い利益率を見込めます。単にニッチな商品を扱うのではなく、高級であることが重要なポイントです。

例:希少なコレクターズアイテム、プレミアム食材など

カスタマイズ商品

顧客の要望に応じてカスタマイズできることも、商品の付加価値になります。受注生産になるので大量に販売することは容易ではないものの、在庫リスクを低減できるメリットもあります。

例:名入れギフト、オーダーメイド家具など

サブスクリプションボックス

定期的に複数のアイテムを組み合わせて届けるセット商品は、初期コストを長期間で回収できるモデルでもあるので、契約期間をトータルでみたときに利益率が高くなります。

例:化粧品ボックス、食材セットなど

利益率の高い商品は、顧客と関係性を構築しやすい特徴があります。ただし、高い利益率を維持するためには、品質管理や顧客サービスの向上、継続的な商品開発などが求められます。

【参考】アパレル業界のネットショップの利益率

アパレル業界は、ネットショップでの販売が急速に拡大している分野の1つです。ここでは、アパレル業界のネットショップにおける利益率について、具体的な数字を交えて解説します。

まずは、実店舗、自社EC、外部ECモールの利益率の平均をみてみましょう。

販売チャネル 利益率の平均
実店舗 56.8%
自社EC 54.6%
Amazon 52.0%
楽天市場 61.3%
Yahoo!ショッピング 42.7%
ZOZOTOWN 55.9%

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ネットショップにおける利益率の平均が最も高いのは、ZOZOTOWNで、ついで自社ECという結果になっています。ただし、ZOZOTOWNは販売手数料や利用料がほかの外部モールと比較して高い傾向があり、粗利率を高く設定しなければ営業利益が赤字になってしまうという特徴があります。

一方で、Yahoo!ショッピングは販売手数料や利用料が低く設定されているため、粗利率が低くても最終の利益は残りやすい構造になっています。

アパレル業界のネットショップ利益率をみると、販売チャネルに合わせた価格設定が求められることがわかります。粗利益を求めるのか、在庫消化を進めるのか、といった目的によってもチャネルの選択やリソースの活用が異なります。

ECの専門家への相談が利益率改善の近道

ネットショップの利益率は、事業の持続可能性と成長性を左右する重要な指標です。しかし、業界や商品の特性、運営体制など、ネットショップの利益率を改善する施策には、多くの要素が複雑に絡み合っています。

そのため、利益率を効果的かつ安定的に改善するために、ECの専門家に相談するのがおすすめです。専門家のアドバイスを受けることで、定期的に自社の利益構造を見直し、継続的な改善を行っていくことで、EC運営の効率化につながります。

ECのミカタでは、EC事業者とEC専門のコンサルティング会社、代行会社とのマッチングサービスをご提供しています。専任のコンシェルジュが、業界や課題に合わせて適切な専門業者を無料でご紹介します。

ネットショップ運営において利益率を含め、自社で解決できない悩みを抱えている方は、ぜひ活用してみてくださいね。

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