3社の成功事例に見る、中小企業を支えるAmazon Adsの活用方法とは【メディア説明会レポート】

田中凌平

タンスのゲン株式会社 西恭太郎氏(左上)、株式会社Kaedear 飯沢智博氏(左端)、株式会社G.Oホールディングス 澤田剛伸氏(中央)、Amazon Ads Japan 石井哲氏(右端)

2024年9月5日、Amazon Ads Japan(アマゾン アド ジャパン)は日本の中小企業の広告利用実態とAmazon Adsの活用事例を紹介するメディア説明会を開催した。多くの中小企業が新規顧客やリードの獲得に課題を感じている中、広告運用は解決策の一つとなりえる。本レポートでは、当日の模様からAmazon Ads Japan カントリーマネージャーの石井哲氏によるAmazon Adsの紹介と、Amazon Adsを効果的に活用している3社の事例を紹介する。

中小企業の最優先課題は「新規顧客とリードの獲得」

まずは石井氏によるAmazon Ads(アマゾン アド)の紹介が行われた。Amazon Adsはブランドの売上増加はもちろん、商品の認知拡大やトラフィックの増加を支援している。

Amazon Adsが第三者の調査会社に委託して行った調査(※1)によれば、中小企業の75%が「新規顧客やリードの獲得」を最優先課題と感じているという。「中小企業が課題を解決して目標達成できるように、Amazon Adsはセルフサービス型でリソースと予算に応じて柔軟に広告を展開できるサービスを提供しています」と石井氏が語るように、Amazon adsでは広告サービスとして「スポンサープロダクト広告」「スポンサーブランド広告」、「スポンサーディスプレイ広告」「ストア」などが用意されている。「Amazonで広告を掲載することを選んだ中小企業様は、平均して売上の26%がAmazon Adsによって推進されていることがわかっています」(石井氏)

※1:Opiniumが2024年2月から3月にかけて、日本の300社を含む全世界のBtoC中小企業のマーケティング意思決定者4000人を対象に実施。調査内容はオンラインとオフラインの両方の広告に対する態度を調査したもので、Amazon Adsの広告ソリューションに限定したものではない

Amazon Adsで提供されている広告プロダクト(一部)

”狙い”を持って運用することが重要

Amazon Adsを活用している中小企業3社の成功事例として、まずはタンスのゲン株式会社 Amazon店舗運営チームの西恭太郎氏が登壇した。同社は福岡県大川市を拠点に、インテリア家具などのライフスタイルアイテムを中心に企画販売をしており、2002年にECを開始し、2012年からAmazonでの販売を開始した。

西氏は新規商品を立ち上げても他社の人気商品に埋もれてしまうことに課題を感じ、Amazon Adsの活用を始めたという。当初は新規商品の立ち上げや狙った商品の販売強化をイメージしていたが、Amazonの担当者と広告の運用について話す中でさらなる可能性を感じたそう。「売れ筋商品の販売維持や購入に至らなかったお客様への再アプローチなど、広告の使い方を多様化させることでさらに販売拡大につながると感じました。2023年は商品掲載数を増やしたり、運用方針ごとにキャンペーンを作成したりと大幅な運用見直しを行いました」と西氏。

また、現在はストアへの導線となる「スポンサーブランド広告」と、リターゲティング機能を用いて大型イベントなどの集客を行う「スポンサーディスプレイ広告」への投資比率を増やしているという。それぞれの施策について西氏は「狙いを持って広告を運用することが重要だと考えている」と強調。そうした見直しの結果、2023年末のセッション数は2022年比で164%、2024年のAmazonプライムデーにおけるストア訪問者数は2023年比173%と増加した。

「昨年度は1000商品ほど新商品を出品しました。(Amazonの広告サービスは)新商品の迅速な立ち上げに大きく寄与してくれるので、今後も効果的な運用方法を模索しながら多くのお客様に商品を知っていただけるように取り組んでいきます」(西氏)

タンスのゲンの説明会資料より。1964年に創業した同社は2020年以降に広告戦略を見直し、現在はAmazon Adsで複数のスポンサー広告を活用

入札単価の低いニッチなキーワードから段階的に認知を拡大

2社目は横浜市に本社を置く株式会社Kaedearの代表取締役、飯沢智博氏が登壇。バイク用品を企画・製造する同社は、創業した2019年からAmazonでの販売を開始し、現在は毎月5つ以上の商品をリリースしている。当時はゼロイチの段階だったこともあり商品を出品しても認知の獲得が難しく、「こんな商品があったらいいなとAmazonで検索したお客様」に自分たちの商品を提案するために、Amazon Adsを活用し始めたという。「まずはAmazonでの検索結果の上部でお客様に商品を見つけていただけるように、スポンサープロダクト広告を使い始めました。ここでの私たちの戦略は、入札価格の低いニッチなキーワードから広告運用を始め、徐々にインプレッションを獲得し、効率的に広告を運用することでした」(飯沢氏)

その後、販売が軌道に乗る商品が出てきたタイミングでも、売上に応じた予算設定をすることで広告運用を継続し、商品の安定した認知獲得と販売促進を実現しているという。キャンペーンとしてどの種類の広告を活用するのかについては、「私たちはキャンペーンごとの費用対効果は一つの指標としてしか見ていません。例えばスポンサーディスプレイ広告を運用したことで、スポンサープロダクト広告のほうに費用対効果が表れるといった可能性もあります。指標に惑わされないように広告全体で効果の最大化を図っています」と飯沢氏。

Amazon Adsを活用した結果、Kaedearは2023年の売上が前年比プラス51%、商品詳細ページの総インプレッション数がプラス46%となった。広告露出の比率に応じて売上も増加しているため、広告が売上基盤を作る大切な要素となっているようだ。「Amazonでの認知が高まったことで、BtoCではショールームやピットサービスを開始でき、BtoBではレンタルバイクの事業者様や大型チェーン店様との取引が増えました」(飯沢氏)

Kaedearの説明会資料より。同社はバイク用のワイヤレス充電スマホホルダーの需要に着目し、Amazonでの出品から事業をスタートした

Amazon Adsは販路の拡大にも寄与

3社目はメンズコスメブランド、NULLを展開する株式会社G.Oホールディングス コスメ事業部 部長の澤田剛伸氏が登壇。NULLは2013年から自社ECで販売を始めており、そこでの広告運用が成功した経験からECにおける広告の重要性を会社全体で認識、2015年からAmazonでの広告を開始した。他のチャネルでも広告運用を実施しているが、同社によればAmazonはキーワード数やキャンペーンの制限が少なく、多くのお客様に向けた設定をできる点が強みだという。

施策が成功した要因の一つとして、新規フォーマットを含む全種類の広告を活用したことが挙げられた。「スポンサーブランド広告での動画の利用や、スポンサーディスプレイ広告でのリターゲティングなどが可能になったらすぐに活用しました。始まったばかりだとやる人があまりいないのでCPC(Cost Per Click)が安い傾向にありますし、Amazonがより良いと思ってローンチしているものなので成果が上がることが多いと感じました」と澤田氏。

「また、広告キャンペーンを実施するにあたっては“検索キーワードを集める”“今回は利益をしっかりとりにいく”など、必ず目的を設定しました。目的を設定し、事業としてある程度形を作ってそれを他の商品の場合にも当てはめることで、広告運用担当者の技術によらずに一定の成果をあげることができるようになりました」(澤田氏)

そうした施策の結果、2023年度のAmazonでの売上が前年比で1.7倍となり、さらに認知向上によって、2017年にはオフラインでの卸が200店舗ほどだったところ、現在はその10倍以上に拡大できたという。「今後もAmazonの広告をうまく活用しながら、オンライン・オフラインを問わずシェアを広げていきたいと考えています」(澤田氏)

G.Oホールディングスの説明会資料より。広告キャンペーンごとに目的を設定し、フォーマットを作って行うことは、運用の属人化防止にもつながるという

中小規模事業者にとってのAmazon Ads活用の可能性

前述のOpiniumの調査によると、日本の中小企業のうち現在広告に投資している割合は49%である一方、将来広告に投資すると考えている割合は7割に上る。同じく、最優先課題として「新規顧客とリードの獲得」に次いで挙げられたのは、「商品・サービスの認知度向上(37%)」「販売促進(37%)」「ブランド認知度の向上(30%)」だ。この調査結果を踏まえると、今回登壇した3社の成功事例は、日本の中小企業にとってのAmazon Ads活用の伸びしろを感じさせる内容だったと言えそうだ。

※参考:上で紹介した3社の取り組みはAmazon Ads Japanの公式YouTubeチャンネルで、動画シリーズ「RISING STARS」として公開中


記者プロフィール

田中凌平

フリーライター。東京都生まれ。ラグジュアリーブランドでの接客経験を活かし、話し手に寄り添ったインタビューが得意。上場企業の経営層から個人まで幅広く対応。ジャンルを問わずSEO記事やコラムも執筆し、取材記事を含めてこれまで300本以上の記事を執筆。

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