国内EC市場、コロナ前水準以上の分野も 経産省、2023年度電子商取引に関する市場調査を公表

宮地彩花【MIKATA編集部】

経済産業省は、「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を実施し、日本の電子商取引市場の実態等について取りまとめた結果を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

2023年の国内EC市場規模、BtoB・BtoCともに伸び率は緩やか

経済産業省の調査によれば、2023年(令和5年)の日本国内BtoC-EC市場規模は、24.8兆円(前年22.7兆円、前々年20.7兆円、前年比9.23%増)に拡大。BtoB-EC市場規模においては465.2兆円(前年420.2兆円、前々年372.7兆円、前年比10.7%増)となった。

またEC化率(全ての商取引市場規模に対する、電子商取引市場規模の割合)は、BtoC-ECで9.38%(前年比0.25ポイント増)、BtoB-ECで40.0%(前年比2.5ポイント増)と増加傾向に。伸び率は前年の発表とほぼ同様の形で緩やかに推移する結果となった。

国内BtoC-EC、サービス系分野の市場規模がコロナ禍前の水準以上に

物販系、サービス、デジタルの3分野合計の国内BtoC-EC市場規模は、24兆8435億円。
前年比2兆986億円と引き続き右肩あがりで推移した。特にサービス系分野では7兆5169億円(前年比22.27%)と大きく数字を伸ばしている。主な要因としては、消費者の外出需要の高まりとともに、旅行サービス、飲食サービス、チケット販売の市場規模が拡大したことがあげられている。

今回サービス系分野の結果は、新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年)のサービス系BtoC-EC市場規模7兆1672億円を上回る結果となり、「アフターコロナ」の時代が到来したとみている。

商取引規模拡大に伴い、BtoB-EC市場規模も拡大

国内BtoB-ECの市場規模においては、465兆2,372億円(前年比10.7%増)。前回の調査に引き続き、多くの業種で2023年のBtoBの商取引市場規模が拡大し、結果としてBtoB-EC市場規模も増加したとしている。

※画像元:令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(経済産業省)

食品に関して、2023年の法人企業統計データによれば「食料品製造業」の総売上高は47兆3835億円(2022年の総売上高は41兆9226億円)。外出機会が前年よりも増加したことに伴う外食やホテル需要の拡大で、業務用食品市場規模等の拡大およびEC化率も75.0%(前年70.7%)に増加。よって2023年のBtoB-EC市場規模は、35兆5307億円(前年比19.9%増)となった。

また卸売業の総売上高は、2023年で323兆5702億円。前年(2022年)の323兆6540億円からは微減したものの、BtoB-EC市場は前年比7.4%増の121兆2,499億円、EC化率は37.5%と増加した。大手GMS、大手スーパーマーケットを中心とした、流通BMSに代表されるEDI標準化の導入がEC化率増加の要因としてあげられている。

中国消費者の購入金額が増加、EC事業者シェアトップはアリババ

各国間の越境EC(日本・米国・中国)市場規模の推計結果は下記図表の通り。前年と比較して中国の消費者が日本、米国からの購入金額が大きく増加。中国におけるEC市場規模推計値が前年比11.4%の増加、インターネット購買者人口も8億8765万人と日本の約11倍存在する。

ちなみに中国におけるEC事業者のシェアでいえば、「Alibaba(アリババ)41.6%」「JD.com(京東)18.7%」「Pinduoduo(拼多多)17.3%」(2023年)と続く。2024年はSNSやライブコマースとの連携で他事業者もシェアを拡大していく見込みだ。

越境電子商取引、日本国内のECの市場規模は昨年に引き続き緩やかに拡大している。外出機会の増加で「アフターコロナ」の時代にEC市場でどう売上を拡大していくのか、トピックを引き続き追っていきたい。