インフラ整備などが押し上げ、国内景気は3カ月連続で改善 2024年9月景気動向(帝国データバンク調査)
株式会社帝国データバンクは2024年9月13日から9月30日の景気動向調査を行い、その結果を公表した。ここでは、業界別の景気動向に絞って紹介する。
調査概要
◆調査期間:2024年9月13日~9月30日(インターネット調査)
◆調査対象:2万7093社、有効回答企業1万1188社、回答率41.3%
◆調査機関:株式会社帝国データバンク
◆出典元:TDB景気動向調査(全国)― 2024年9月調査 ―(株式会社帝国データバンク)
2024年9月の景気DIは前月比0.3ポイント増の44.6
株式会社帝国データバンク(以下、TDB)によれば、2024年9月の景気DIは前月比0.3ポイント増の44.6となり、3カ月連続で改善。景気DIとは全国企業の景気判断を総合した指標のことで、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味する。
9月はインフラ整備や、防災・災害復旧工事などの建設関連のほか、人手不足を解消する省力化のための設備投資関連が景況感を押し上げた。物流量の増加が貨物運送業界にプラスの影響を与えたほか、2度の3連休が身近なレジャー需要を喚起。また、インバウンド需要をベースに宿泊関連は好調となった。
一方、人手不足による受注機会の逸失や自動車部品の在庫増、猛暑による特需の一巡、食品値上げなどにともなう買い控え、豪雨などの自然災害はマイナス材料になった。
業界別の景気DI、10業界中7業界で改善
ここでは各業界別の景気DIと詳細をまとめる。
◆サービス(50.4):前月比0.6ポイント増、2カ月ぶりに改善
「娯楽サービス」(同5.2ポイント増)は、2度の3連休で身近な屋外レジャーなどがけん引し大幅に改善。堅調なインバウンドほか連休も重なり「旅館・ホテル」(同1.9ポイント増)は2カ月ぶりに上向いた。また大規模開発を背景に職人などの長期滞在が多いといった意見も。
「人材派遣・紹介」(同1.0ポイント増)は、慢性的な人手不足で需要が増加し、50台へ回復。一方「飲食店」(同3.2ポイント減)は3カ月ぶりに悪化する結果となった。
◆小売(40.3):同0.2ポイント減、3カ月ぶりに悪化
新車の納期遅れや在庫不足によって、「自動車・同部品小売」(同0.1ポイント減)は3カ月連続で悪化。「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同0.3ポイント減)は季節の後ずれが影響し3カ月ぶりに悪化した。
値上げによる買い控えなどで総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(同2.6ポイント減)は2カ月連続で落ち込んだ。一方、引っ越し需要などから「家具類小売」(同0.6ポイント増)は2カ月ぶりに上向いた。
◆不動産(48.5):同1.0ポイント増、2カ月ぶりに改善
「賃料相場が上昇している」(貸事務所)といった声のほか、秋の引っ越しシーズンを迎え景況感を押し上げた。また、テナントの売り上げが好調、地価の上昇によって売却益が増加傾向にあるといった声も寄せられた。
◆建設(47.8):同0.5ポイント増、4カ月連続で改善
インフラや防災・災害復旧工事関連の事業が押し上げ要因となったほか、省力化投資や設備更新需要も表れてきたといった意見も。また、大都市圏での再開発需要や、長引く猛暑により冷房工事などはプラス材料となっている。
底堅く推移していくと予想
TDBによると、今後の景気は個人消費や企業の設備投資などが下支えし、底堅く推移していくとみられるという。
実質賃金の継続的な上昇、金利や為替レート、株価などの金融市場の動向などが注目される上に、観光産業の回復やDXの推進、GX政策の拡大などが好材料となると指摘した。
生成AIの普及や半導体の需要拡大などもプラス要因として考えられる一方、2024年問題にともなう物流コストの上昇やインフレの進行、家計の節約志向、拡大する国際的な緊張、さらに、石破政権による経済政策や米大統領選の行方は無視できない。
2024年も残り3カ月となった現在、クリスマス商戦や年末年始といった繁忙期への期待を寄せつつ、国内外の景気動向を見た上での柔軟な対応を心がける必要があるだろう。