今、消費者は「送料無料」表示についてどう考えている? 消費者庁調査
消費者庁は「消費生活意識調査」において、消費者の意識や行動、消費者問題等について、その時々のテーマで随時調査を実施している。2024年10月17日、「『送料無料』表示の見直しに対する意識や行動」を中心に調査した結果が公表されたため、一部内容を抜粋して紹介する。
調査概要
◆調査方法:インターネットを利用したアンケート調査
◆サンプル数等:5000サンプル(人口構成比に応じた割り付け)
◆調査対象:年齢を7段階に分類した男女(15~19歳、20~29歳、30~39歳、40~49歳、50~59歳、60~69歳、70歳以上)
◆調査実施期間:2024年8月1日〜4日
◆出典元:令和6年度第1回消費生活意識調査結果(消費者庁)
「送料無料」表示見直しの議論の認知度は上昇
「送料無料」表示見直しの議論の認知について、2024年2月に実施された調査(以下:前回調査)と比較したところ、「見聞きしたことがあり、内容もよく知っている」と回答した人の割合は27.0%(前回調査より+7.4ポイント)、「見聞きしたことはあるが、詳しい内容は知らない」が50.5%(前回調査より+1.9ポイント)と、それぞれで認知度の向上が確認された。
年間時間外労働時間の上限が960時間に制限される「2024年問題」が本格的に開始した2024年4月以降、物流に対する関心が高まっていることも背景にあると考えられるだろう。
消費者にとって魅力的な「送料無料」
先の質問において、「見聞きしたことがあり、内容もよく知っている」と回答した人に対して、以下内容の意見を確認した。
(A):配送事業者の運賃は無料ではないので、「無料」と表示するのはやめるべきだと思う。
(B):「送料無料」は消費者にとって魅力的な表示であり、配送事業者に運賃は払われているのだから、問題なないと思う。
その結果、「(A)である」又は「どちらかといえば(A)に近い」と回答した人の割合が、合計で35%(全調査より−8ポイント)となった一方、「(B)である」又は「どちらかといえば(B)に近い」と回答した人の割合は、合計で56%(前回調査より+7ポイント)となった。
議論内容を理解するほど、「送料無料」表示に対して控えめになる様子がうかがえる一方、消費者にとって「送料無料」は魅力的であり、家計の面などから今後も維持してほしいといった意見も垣間見える。物流、EC事業者としては配送現場の現状などを周知し、時間をかけながら理解を求める姿勢が重要になるかもしれない。
「送料」に対するイメージは通販事業者が負担がトップ
「送料無料」表示があった場合の送料に対するイメージを質問したところ、「送料は、購入者向けのサービス(値引き)として、通販事業者が負担している」と回答した人の割合が39.1%で最も高くなった。次いで「送料は、商品価格等に転嫁されているため、購入者が負担している」が28.9%、「分からない」が24%を占める結果に。
年代別では「送料は、送料価格等に転嫁されているため、購入者が負担している」と回答した人の割合は、年代が上がるにつれて高くなり、70歳代以上で38.9%と最も高くなった。一方、「分からない」と回答した割合が、若年層になるほど高くなっている点にも注目すべきだろう。
本調査では、約8割が再配達を減らすための取り組みを実施していると回答。主な内容としては「当初の配達予定日に在宅を心掛ける」「配達日時を指定」「同居人に受け取りを依頼」などであった。
こうした内容から、再配達減少に対する取り組みを進める消費者は多い一方、「配送料」に対してはまだまだ抵抗感が強いと考えられる。2024年2月調査と比較して、徐々に「送料無料」表示見直しの議論の認知については向上しているが、送料負担を受け入れるまでには至っていないといえそうだ。
持続的な物流環境が必須となるEC事業者にとって、「2024年問題」や「送料」に対する取り組みは重要となる。消費者との対話を深めながら、今後の施策検討を進める必要があるだろう。