長引く残暑や節約志向の高まりによって国内景気は4カ月ぶりに悪化 24年10月TDB景気動向調査
株式会社帝国データバンクは2024年10月18日~10月31日の景気動向調査を行い、その結果を公表した。ここでは、業界別の景気動向に絞って紹介する。
調査概要
◆調査期間:2024年10月18日~10月31日(インターネット調査)
◆調査対象:2万7008社、有効回答企業1万1133社、回答率41.2%
◆調査機関:株式会社帝国データバンク
◆出典元:TDB景気動向調査(全国)― 2024年10月調査 ―(株式会社帝国データバンク)
2024年10月の景気DIは4カ月ぶりに悪化
帝国データバンク(以下:TDB)によれば、2024年10月の景気DIは前月比0.3ポイント減の44.3となり、4カ月ぶりに悪化。景気DIとは全国企業の景気判断を総合した指標のことで、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味する。
10月は、長引く残暑による秋冬物の出足の鈍さに加え、買い控えや選別購入など節約志向の高まりによって個人消費が停滞し、景況感が悪化した。加えて、人手不足や最低賃金の引き上げによる人件費の増加が企業の収益性を抑制する要因となった。
原材料費の高騰で飲食料品関連は上流から下流まで全体的に悪化した一方、防災・災害復旧工事などの建設関連のほか、大都市圏での再開発は好調だった。さらに、自動車生産の回復や好調なインバウンド需要の継続もプラス材料として働いた。
業界別の景気DIは個人消費の停滞と人件費増加が重しに
ここでは各業界別の景気DIと詳細をまとめる。
◆サービス(49.8):前月比0.6ポイント減。2カ月ぶりに悪化。
「飲食店」(同3.1ポイント減)は、原材料費の増加や人手不足などに加え、「外食意欲がないと感じる」(一般食堂)といった声も聞かれ2カ月連続で落ち込んだ。また、最低賃金の引き上げにともなう人件費の増加などが響く「メンテナンス・警備・検査」(同0.2ポイント減)も同じく2カ月連続で悪化。一方、インバウンドや国内旅行が好調な「旅館・ホテル」(同1.6ポイント増)は2カ月連続で改善した。
◆小売(39.7):同0.6ポイント減。2カ月連続で悪化。
節約志向の高まりにより、購入点数や来店頻度の減少などから「飲食料品小売」(同3.3ポイント減)は2カ月連続、総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(同1.7ポイント減)は3カ月連続で悪化した。一方、価格が上向く中古車市場がけん引し「自動車・同部品小売」(同3.4ポイント増)は4カ月ぶりに改善した。
◆運輸・倉庫(44.7):同0.7ポイント減。3カ月ぶりに悪化。
燃料価格の高止まりに加え、ドライバー確保の問題などが下押し材料となった。さらに、「中国向け出荷が激減している」(港湾運送)というように海外経済の影響なども悪材料としてあげられた。他方、貸切バスの利用が拡大していることなどは押し上げ要因となったほか、災害復旧関連の輸送需要があるといった声も寄せられた。
◆『製造』(40.8):同横ばい。「飲食料品・飼料製造」(同0.9ポイント減)は4カ月ぶりに下落
飲食料品関連は川上から川下まですべて悪化。「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同0.2ポイント減)は「自動車関連は回復してきたが、建機、工作機械などはまだ底を抜け出せない」(金属熱処理)などの声が聞かれ4カ月ぶりに悪化した。一方、自動車メーカーの復調などから「輸送用機械・器具製造」(同1.1ポイント増)は3カ月ぶりに上向いたほか、「電気機械製造」(同1.2ポイント増)は2カ月連続で改善した。
下振れ懸念を抱えつつも底堅く推移
TDBは今後について「個人消費の動向が景気の先行きを左右するとみられ、実質賃金の継続的な上昇がカギとなる」と述べる。
さらに、金利や為替レート、株価などの金融市場の動向に加えて、政局の不安定化や米新大統領の経済政策の行方も注視する必要があると続けた。
プラス材料としては、観光産業の回復や人手不足に対応する設備投資の実行、リスキリングの浸透、生成AIの普及、半導体の需要拡大などがあげられる。一方で、物流コストの上昇やインフレの進行、中東情勢などはマイナス材料となると指摘した。
こうした状況を鑑みて、今後の景気は下振れ懸念を抱えつつも底堅く推移していくとみられる。クリスマス商戦や年末年始需要に期待を寄せつつ、国内外の景気動向を見た上での柔軟な対応を心がける必要があるだろう。