3大モールの流通総額は全体の約7割に Nintが2023年日本EC市場の振り返りを公表
株式会社Nint(以下:Nint)は2024年11月13日、経済産業省が公表した「令和5年度電子商取引に関する市場調査」のマクロデータと、Nintが保有する3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)のミクロデータを活用し、物販系分野に焦点を当てた2023年の日本EC市場の調査結果を公表した。本記事では一部内容を抜粋して紹介する。
調査概要
本調査はNint ECommerceを用い、国内の3大ECモールである楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングを対象として調査された。
◆調査対象:Nint推計データ(※1)
◆出典元:「経済産業省の調査結果とNint分析で読み解く—2023年日本EC市場の振り返り」(2024年11月8日公開)(株式会社Nint) ※1:Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータ。
3大モールの流通総額は全体の約7割を占める
経済産業省が2024年9月に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2023年の物販領域の市場規模は14.7兆円で、前年比4.8%の増加を示した。EC化率も9.38%と前年から0.25ポイント増加するなど、商取引の電子化が継続的に進展していることが明らかとなった。
一方、Nintの推計によると、3大モールの流通総額は約10.1兆円に達し、物販領域全体の約69%を占める。この数値は前年比5.9%の増加を見せており、EC市場全体の成長を牽引する主要要素であることがうかがえるだろう。
2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことを契機に、消費者の行動様式が大きく変化し、市場動向に直接的な影響を与えた。経済産業省の分類では8分類すべてで前年比プラスとなっているが、Nintの推計データを用いることで、3大モールにおける流通額の増加が数量によるものか、平均単価の上昇によるものかを詳細に分析することが可能となっている。
例えば、3大モール全体の平均単価は昨年の3223円から3370円へと4.5%増加。全体の流通額の伸長率が5.9%であるため、数量の伸長率は1.3%にとどまり、平均単価のアップが主要因であることが示唆されている。
主要ジャンル別市場分析
主要ジャンル別市場分析については、以下の通りとなった。
◆生活家電、AV機器、PC・周辺機器等
経済産業省の調査によると、このジャンルの2023年におけるBtoC-EC市場規模は約2兆6838億円で、前年比5.13%の増加を示した。EC化率は42.88%と高く、物販系の中でも特にEC化が進んでいるカテゴリーの一つ。Nintの推計データでも、3大ECモールの流通金額の増加(前年比104.1%)は、平均単価の上昇(前年比105.4%)によるものであり、同様の傾向が確認できた。
◆衣類・服装雑貨等
経済産業省の調査によると、「衣類、服装雑貨」分野のBtoC-EC市場規模は約2兆6712億円で、前年比4.76%の増加を示した。EC化率は22.88%で、物販系の中でも高い水準を維持している。Nintの推計データでは、3大ECモールの流通金額の増加(前年比119.1%)は、数量の上昇(前年比113.9%)によるもので、需要の回復が顕著となった。
◆食品、飲料、酒類
経済産業省の調査によると、このジャンルのBtoC-EC市場規模は約2兆9299億円で、前年比6.52%の増加を示した。EC化率は4.29%と他のジャンルに比べて低いものの、ネットスーパーや食品デリバリーサービスの普及により市場は拡大傾向にある。Nintの推計データでは、3大ECモールの流通金額の増加(前年比104.6%)は、平均単価の上昇(前年比109.1%)によるもので、数量減を補っている。
◆化粧品、医薬品
経済産業省の調査によると、「化粧品、医薬品」分野のBtoC-EC市場規模は約9709億円で、前年比5.64%の増加を示した。EC化率は8.57%であり、Nintの推計データでは、3大ECモールの流通金額の増加(前年比104.8%)は、平均単価の上昇(前年比112.4%)によるもので、数量減を補っている。
◆生活雑貨、家具、インテリア
経済産業省の調査によると、このジャンルのBtoC-EC市場規模は約2兆4721億円で、前年比5.01%の増加。EC化率は31.54%で、高い水準を維持している。Nintの推計データでは、3大ECモールの流通金額の増加(前年比105.3%)は、数量の増加(前年比105.4%)によるもので、平均単価は若干の減少(前年比99.0%)となっている。
手数料やサービス改定への戦略的な対応が不可欠
2023年は多くのジャンルで平均単価の上昇が見られ、高価格帯商品の需要が増加。メーカーによる値上げ、エネルギー価格の高騰、円安などが主な要因であり、特に食品、化粧品、生活家電などで価格上昇が顕著となった。
Nintの推計データによれば、3大ECモール全体の平均単価は前年比104.5%に伸長。各ジャンルでの平均単価の上昇率は105.4%から112.3%に達し、この傾向を裏付けている。
3大ECモールの流通額増加は市場全体の成長を支えているが、出店料や手数料の値上げが中小事業者に与える影響も大きくなっている。プラットフォームの手数料やサービス改定が事業者の経営に直接影響を及ぼすため、戦略的な対応が不可欠だとNintは指摘する。
取り扱い商品の戦略的な選定や、複数の販売チャネルやモールを使い分けてリスクを分散することが重要。自社ブランドの商品開発によって、付加価値を高め、利益率の向上を図る取り組みも効果的だとNintは続ける。市場変化の波を的確に捉え、2024年以降の事業成長につながる取り組みを進めたい。