2024年の越境EC市場環境や人気のカテゴリは?【BEENOS 越境EC×ランキング発表会2024】

宮地彩花【MIKATA編集部】

BEENOS株式会社は2024年(1月~9月)の 「Buyee(バイイー)」における越境EC販売動向をまとめた「BEENOS 越境EC×ランキング発表会2024」を開催。本発表会では、ランキングとあわせて2024年の越境EC動向や2025年以降の越境ECについて、代表取締役の直井聖太氏により語られた。

2024年のキーワードは「趣味大国無双消費」

2024年12月4日、BEENOS株式会社(以下、BEENOS)は「BEENOS 越境EC×ランキング発表会2024」を開催。2024年の越境EC消費キーワードについて“趣味大国無双消費”と発表した。日本人が愛してきた趣味とそこに向けられてきた熱量やこだわりを求めて、越境EC市場が拡大しているのではとBeeCruise株式会社 岩本夏鈴氏(以下、岩本氏)は分析する。

「アニメやゲームキャラクター商品の需要はもちろんのこと、ホビー商品とよばれる釣りやゴルフなどのエンタメ・レジャー分野においても日本企業のこだわり、デザイン性、企画性が海外から注目されていたと思います」(岩本氏)

※画像提供:BEENOS株式会社

続いて、海外向け購入サポートサービス「Buyee」の購買データに基づき、2024年のカテゴリ別ランキングと伸長率ランキングを発表。岩本氏は、今年のランキング特徴についてユーザー層の変化を指摘する。

「これまでは、ある程度所得を持った30代~40代で、ニッチな商品を手に入れるために越境ECで商品を購入される層がメインでした。しかし、今年はSNSを中心にECで商品を購入するのが当たり前となった20代がメインユーザーとなり、消費率ともに伸びてきています」(岩本氏)

BEENOSが調査した東アジア、東南アジア、中東、北米、中南米、ヨーロッパの全エリアでメインユーザーの変化が見られたという。情報源がSNS中心となった今、SNS広告で露出を増やしてブランド認知を広げることや、KOL(専門領域を持つインフルエンサー)の協力を経て自社製品を広めてもらうような販促活動が必要だとした。

越境EC市場規模は右肩上がり、インバウンドも過去最高に

2024年に越境ECが置かれた環境について、BEENOS株式会社 代表取締役執行役員社長兼グループCEO 直井聖太氏(以下、直井氏)は、円安傾向が続き訪日インバウンドが増加したことで、海外消費者との接点が拡大した一年だったと振り返る。

「一時的な円高による為替変動はあったものの、1年を通して円安傾向は変わらない状況でした。また2023年5月から新型コロナウイルス感染症が5類へ移行した影響も続き、訪日インバウンドは昨年に比べても過去最高で推移。日本-米中間の越境EC購入額推移をみても、2023年は3.9兆円 と年々増加しています。日本の持つ文化やイメージが評価された結果、インバウンドや越境EC利用客の増加につながっていると考えます」(直井氏)

その他の動きとして、2024年6月に政府が提唱した「新たなクール・ジャパン戦略」ではコンテンツ産業をはじめとする基幹産業の海外展開規模を2033年までに50兆円以上の規模とすることを発表(※1)。また一般社団法人日本経済団体連合会が公表した「Entertainment Contents ∞ 2024」(※2)では、マンガ、アニメ、ゲーム、実写映画・ドラマ、⾳楽等を基幹産業として育成するなど日本コンテンツの重要性が示された。

※1 参考元:新たなクールジャパン戦略(知的財産戦略本部)
※2 参考元:Entertainment Contents ∞ 2024(一般社団法人日本経済団体連合会)

中華系ECの勢いは止まらず、各国が規制を発表

今回の越境EC市場の継続的な成長は、中国系ECプラットフォームの影響が大きい。昨年の直井氏の発言にもあったように、中国系ECプラットフォームに代表される『SHEIN、Temu、TikTokShop』3社の2023年流通取引総額目標は、670億~680億ドル(2021年の世界越境EC市場規模の約10分の1)と流通を急速に拡大している(※3)。これらのプラットフォームで提供される商品は、ご存知の通り日常で使用するものを中国で製造し、安く仕入れられるのが特徴だ。

中国系ECプラットフォームのマーケット拡大に伴い、物流の枠が奪い合いになっていることはもちろん、越境ECを通じて安価な商品が大量に輸入される状況も見逃せない。そこで、自国産業保護のため輸入規制や小口貨物輸入の減免を見直す流れも各国で見られたという。

「今までは安価な商材であれば、関税をかけて徴収することはコストと手間が見合わないので規制がそこまで厳しくない国も多くありました。ただこの中国系越境ECの急拡大に伴い、各国規制を設ける動きが強まっています。この流れを受けて日本も動き始めている段階ではありますが、越境EC事業者においては各国の規制に対応していきながら、通関業務においても注視し業務にあたることが重要です」(直井氏)

※3 関連記事:越境ECヒットランキング2023、BEENOSが発表! 好調な裏で起こる越境EC市場の大きな課題とは

高付加価値商品や自国にしかない商品の提供が重要に

2024年の越境EC市場は、まだまだ拡大傾向で参入余地はある一方、中国系ECプラットフォーム拡大に伴う物流の混乱や原料費などのコスト増加に伴う懸念点も課題としてありそうだ。

今後の越境EC市場や売上拡大を考える上で重要なのは、より高付加価値な商品または他国にはない商品をどのように伝えて販売につなげていくことだと直井氏は語る。

「低単価商品規制や関税競争を背景に、価格の安さで勝負するフェーズはとうに終わっています。それよりも日本の持つ『デザイン・ブランド・カルチャー』を再発掘、発信することが今後必要になってくるでしょう。SNSや動画メディアで情報収集を行ってきた20代が購買層のメインになった今、国境のない情報を元にした商品購入が本格化しているともいえます」(直井氏)


若者向けの情報拡散・施策として、バックを展開するブランドでは、SNS広告で露出し、ブランドの価値を伝えるLPを多言語で展開。アパレルブランドでは、アニメやVtuberとのコラボでSNSやコミュニティでファンが情報共有するなどで売上UPにつながった事例もあるという。

今後越境ECで売上を持続させる上で、ユーザー層や市場全体の理解はもちろんのこと、競合になりうる現地や海外のブランドメーカーがどのような施策の打ち出し方をしているかを知ることは重要なポイントの一つになりそうだ。そのためにも、アンケート等で定量・定性データを取得し、広告施策などで反応を見ながら、日々変化するユーザーの趣味嗜好に対応することから始めたい。