LINEヤフー2024年度第3四半期決算 コマース事業はショッピング、トラベルの成長で増収増益
2025年2月6日、LINEヤフー株式会社が2024年度第3四半期決算を公開。全体としては増収増益のポジティブな決算報告となった。あわせて株主配当も増配。全セグメントで収益を改善しており、同発表会ではメディア、コマース、戦略の各セグメントでさらなる成長を達成するための方針が語られた。
全社を通しての売上収益は初の5000億円超え
上級執行役員 CFO 最高財務責任者 坂上亮介氏が全社を通しての収益状況を説明した。
「全社を通しての売上収益は5034億円と、初めて5000億円を突破。アカウント広告とPayPay連結の成長によって収益、EBITDA(利払い前・税引き前利益、減価償却の総和で求められる利益)マージンが昨年対比で向上し、25.6%をマークしました(昨年21.8%)。販促費は増加しましたが、規律ある投資で売上は成長。増益を達成しています。1株あたりの配当額も上方修正し、2023年度の5.56円から7円へと増配しました」(坂上氏)。
自己株式取得の具体的な量とタイミングは語られなかったが、2025年度から2029年度の5年間で累計総還元性向70%以上を目指すという。キャッシュフローの改善を受けて計画比800億円発生したバッファは2025年度以降に繰り越しつつ、自己株式取得も検討するとした。
昨年第3四半期に対して、売上収益の5,034億円は+6%、EBITDAは+17.5%、EPS(1株当たり純利益)は+29.3%となった。
メディア事業の成長ドライバー「アカウント広告」
広告などを扱うメディア事業全体の利益をけん引するアカウント広告は粗利率が高く、EBITDAが39.8%に達している。最大の収益源であるディスプレイ広告が-13億円と昨年比2.1%の減少となったが、+19.7%伸ばしたアカウント広告が収益を確保している。
高収益のキャッシュイン側では優勝アカウント数と従量課金がともに拡大したことが要因。キャッシュアウト側では販売管理費を3億円削減することで収益の総合的な改善が達成された。
昨年比+2.0%となった検索広告は前期で下げが止まった。生成AIの発展と収益性を鑑みてタブ構成を見直すなどの改善を講じるという。メディア領域で唯一の下げとなったディスプレイ広告については、上級執行役員 マーケティングソリューションカンパニー CEO 池端 由基氏が説明を行った。
「ディスプレイ広告は特にコスメと健康食品のデマンドの不調を受けての結果となりました。また、大きな反響があるゲームがないなどの環境の影響を受けています。LINE、Yahoo!ともに対策は変わらず、ユーザーのアテンションを奪われている動画の改善が必要であると認識しています」(池端氏)。
BEENOS買収で新領域に挑戦するコマース事業
「コマース事業はショッピング、トラベルの成長で増収増益となりました。特に11月と12月の販促施策、12月から始まったYahoo!ふるさと納税が好調で、Yahoo!ショッピングの取扱高は昨年対比9.5%成長しました」(坂上氏)。
また、コマース事業に含まれるトラベルは25.1%の成長を見せ、売上収益とEBITDAは昨年対比でそれぞれ+3.1%と+19.9%となった。事業全体の収益は増えていると同時にコストは低減されており、売上原価-2億円、販管費-7億円となった。Yahoo!ショッピングと連携するASPバリューコマースやIPXを非連結化したことによるキャッシュフローの改善が販売促進費の増加を上回ったという。
「提携が終了したバリューコマースとは同等の機能を内製化し、マーケティングと広告のプラットフォームを統合することで、統合的なマーケティングソリューションを提供したいと考えています。これによって認知からコンバージョンまでのフルファネルに対応します」(上級執行役員 コマースカンパニー CEO 秀 誠氏)。
「2024年末に買収が発表されたBEENOS株式会社とは、競争の激化によって成長が鈍化傾向にあり、経営リソースを優先的に投下したいリユース事業での成長を狙います。特に仲介越境EC市場は2ケタ成長が続いています。Buyeeなどで仲介越境ECナンバーワンのシェアを持つBEENOSとのシナジーとオーガニック成長を組み合わせ、2024年度から2028年度の年平均成長率10%を目指します」(坂上氏)。
市場の追い風も受けて成長する戦略領域
金融を扱う戦略領域ではPayPay連結の成長と販管費の削減が増収増益のドライバーとなった。連結売上高が20.7%成長した一方、販管費の削減は42億円に及び、EBITDAマージンは19.8%に達している。
「戦略領域ではPayPay祭りと東京都のキャンペーンで売上が伸び、コストコントロールを行ったことでEBITDAが改善しました。引き続き現在も取り組んでいる決済手数料とリボ残高を伸ばしていくことで金融事業を拡大していきたいと考えています」(坂上氏)。
年利2%の普通預金が「預金革命」というキャッチコピーで利用者を集めているPayPay銀行。4月1日付でPayPayの子会社になることを受けて、坂上氏は「PayPayカードの利用は促すことができている。口座開設からローンの貸付までをしっかりとやっていきたい」と語った。
販管費を大幅に削減した要因は業務委託していた業務の内製化。委託先人員の社員化や作業の内製化により、業績へのポジティブな効果は来年以降も出る見込みだという。
増収増益で配当の積み増しも検討しているというLINEヤフー。EC事業では国内の飽和状態を受けてリユース品の越境販売に注力するという。リユース市場の大手という立場は揺るがないが、これからは特にマーケティングにおける積極的な内製化や買収といった投資のリターンに注目が集まるだろう。