「無店舗小売業」の倒産、休廃業・解散が過去最多に 東京商工リサーチ調査
株式会社東京商工リサーチ(以下、TSR)は、2024年のインターネット通販などの無店舗小売業の倒産が169件で、前年から約1.5倍に増え過去最多を記録したことを公表。休廃業・解散も261件(同21.3%増)と前年の1.2倍に増えたという。
※本調査は日本産業分類の「無店舗小売業」の2024年(1〜12月)の倒産を集計・分析したもの
倒産、休廃業・解散は過去最多を更新
無店舗小売業の倒産は169件(前年比45.6%増)で、前年から約1.5倍に増えて過去最多を記録。2021年はコロナ禍の巣ごもり需要や資金繰り支援によって倒産が減少(68件)したものの、そこから増加傾向が続く。また休廃業・解散も倒産とほぼ同じ推移をたどっており、2024年は261件(同21.3%増)で最多を更新した。
TSRは「新規参入が相次ぎ、市場自体は拡大しているが、近年は仕入コストや配送などの物流コストが上昇し、採算確保が難しくなっている」と考察。倒産と休廃業・解散はいずれも増勢を強め、市場から退出した企業は過去10年で3.5倍に増加した。
販売不振などにより事業が軌道に乗らなかったケースが多数
2024年の無店舗小売業の倒産169件のうち、設立年が判明した151件を分類したところ、設立年代別の最多は「2010年~2019年」で構成比50.3%と全体の半数。次いで「2020年以降(22.5%)「2000年~2009年(19.2%)「1990年代以前(7.9%)」となった。
2010年以降に設立された新興企業が7割以上で、そのうち2014年以降に設立された業歴10年以内の企業が64.2%。市場拡大の波に乗って新規参入を図ったものの、販売不振などにより事業が軌道に乗らなかったケースが多いことをうかがわせる。
TSRはこうした状況に対して、ネット専業は営業エリアや時間を限定しない販売スタイルも大きなメリットである一方、参入障壁が低く、異業種からも事業者が増加しており、過当競争で市場からの撤退を余儀なくされる企業も急増していると指摘している。
※画像元:市場拡大も競合・コスト高でネット通販の苦戦が鮮明 「無店舗小売業」の倒産、休廃業・解散は過去最多(株式会社東京商工リサーチ)
消費者に選ばれる仕掛けづくりが不可欠
無店舗小売業の倒産は、負債規模5000万円未満の倒産が130件と全体の76.9%。負債5億円以上はなく、従業員数も5人未満が153件と9割を占めた。また設立10年以内の倒産が全体の6割以上(64.2%)であり、無店舗小売業の倒産は、小規模で業歴の浅い新興企業に集中している点が大きな特徴といえる。
TSRは今回の調査結果に対し、「価格で優位に立つ大手への対抗には、商品開発力や品揃え、イメージ戦略による差別化を通じ、消費者に選ばれる仕掛けづくりが不可欠となる」とコメント。市場の競合が激しさを増すなか、付加価値の提供が難しい小・零細規模の企業を中心に、無店舗小売業者の淘汰が加速する可能性が高いと続けた。
ネット専業の事業者にとっては厳しい見通しだが、2025年に歯止めがかかることに期待しつつ今後の推移をウォッチしていきたい。