コメ兵戦略に見る「オムニチャネル成功事例」~後編~
自然と回り始めた「オムニチャネル」
今までの流れをおさらい!
前編はこちらから!
http://ecnomikata.com/ecnews/detail.php?id=5386
――店頭在庫をネットで販売するようになり、EC事業部と現場店舗の軋轢の回避も進み、ECサイトをカタログ的に使われるお客様が増え、そこから取り寄せ販売という形が浸透し確立化が進み、さらに発展していったという流れというわけですね
○世の中に「o2o」というキーワードが出始めたときには、既に弊社では同じ事をやっていたんです。もう少し踏み込み、オフラインである店頭から入ったお客様でもオンラインのECを利用し購入できるようにサービス展開を進めていこうという流れになり、店頭スタッフによるECへのオペレーションを中心に進めていきました。お客様が探している商品をしっかりヒアリングし、全国のECデータベースと照合して在庫の取り寄せを行う。そのようなサービスの展開と拡充を目指していくうちに、必然的に結果としてオムニチャネル化の実現ができていたという認識が正直なところです。
――そのような社内体制の構築には課題なども多かったと思うのですが、どのようなポイントを意識して進めていったのでしょうか
○ECと店頭を合わせて1つの予算として組むことで、どちらも活用しないと予算の達成ができない仕組みを敷きました。そうすることにより、店舗でもいかにECを利用し売上を上げるかに関心がいきますし、EC事業部でも店舗とのコミュニケーションを大切にしようという意識が生まれる。そこが相乗効果を生み売上全体につながる制度が浸透できたことが大きいです。違う部署で違うビジネスを行っている人間同士が同じ目的を持つことで、成果の横取りなどを防ぎ、協力し合い前に進んでいける環境の構築を一番意識いたしました。店舗には、ECシステムを利用することで、お客様からも喜ばれ売上も上がるという認識の啓蒙を。EC事業部はその実現に向けてのサポートやオペレーションを行う中で、相互関係を構築していきました。
――そういった内部での努力に加え、競合の多いリユース業界において抜きん出るため外部に向けた意識のようなものはありますか
○適正価格による買い取りと、丁寧な接客です。弊社に浸透している考え方の基本に「商品は高く買えばたくさん集まり、安く売れば人が集まる」というものがありまして、安価での買い取りで利益を出すというモデルは正義ではありません。徹底した適正価格による買い取りという文化がまずあり、その上で業界自体のイメージ向上というミッションに向けお客様に喜んでもらうことが第一と考えています。
――全国から商品を集めて販売するには様々なコストがかかると思いますが、そういった条件下でも適正価格での買い取りを実現でき、かつ販売も順調に伸びていっている。御社はオムニチャネル実現のロールモデルのように語られることも多いですが、オムニチャネルという「戦略」を展開する上での方向性などはございますか
○何よりもまず「お客様ありき」で、満足度が高く喜んでいただけるかどうかが全てということです。理想としては、店舗までご来店いただき商品の説明を聞いてもらい、全て理解した上で購入していただくというのが一番イイと思っています。なぜなら弊社の大きな強みの1つに、店頭での接客力があるからです。特定のブランドショップのスタッフの場合は自社商品しか販売できませんが、幅広いブランド品を取り扱うリユース業界のスタッフは全てのブランド商品を販売できます。幅広い知識の中からお客様に最適な提案ができるため、接客によるヒアリングから本当にマッチした商品をセレクトすることができるのです。EC事業部では、ECにおける接客も実店舗のクオリティに近づけるため、コールセンターには店頭での販売経験があり現場の接客を分かっているスタッフを配置するようにしています。「買い取り」も「販売」も根本は接客なので、どのチャネルにおいてもハイクオリティな接客を、というのが方向性です。
――内側での企業努力と外側に向ける意識も、お客様の満足度向上が第一という方向性の戦略で展開されているわけですね。それが自然と時代の潮流にマッチしたオムニチャネルという形態になっていったという
○時代や技術の進化に合わせ、その時々で最大限お客様の利便性を追求していくことが重要だと思っています。単なるバズワードとしての認識で終わってしまうのでは意味がありませんから。
――最後に、今後リユース業界やEC業界はどのように偏移していくと思いますか
○リユース業界に限って言えば、業界自体は間違いなく拡大していくでしょう。ただ、昨今変わってきている点としては、プレイヤーの入れ替わりが出始めているように感じます。十年くらい前までは質屋やリサイクルショップがほとんどを占めていたことに対し、CtoCのアプリが出てきたり、リユースの概念自体拡大していって個人間取引が大きくなっています。単純にそこに参入するというよりは、CtoCで動いてるお客様にリーチしていくことが重要と考えています。所有している商品を売却してお金に変えるという手段の選択肢が非常に広がっているので、マクロな視点で言えば分母はさらに大きくなっていくのではないでしょうか。
もう一点では、グローバル化も進むでしょう。日本で仕入れた物でも海外で需要があれば持っていきますし、外国人のお客様が日本に来て大量に買っていくケースも増えています。そこで懸念していることは、日本からどんどんモノが出て行ってしまうということ。日々大量の商品が国外に流れていく光景を目の当たりにしているので、流れに抗うことは難しいと思うのですが、弊社は日本で育っている企業なので、世界中のお客様にグローバルにお付き合いという気持ちはもちろんありますが、日本というマーケットを非常に大切にしていきたいと思います。