コメ兵戦略に見る「オムニチャネル成功事例」~前編~

16億6千万円の出来高記録を持つリユースオークション事業

16億6千万円の出来高記録を持つリユースオークション事業株式会社コメ兵商品センター IT事業部長 藤原義昭氏


「リユース」という言葉の浸透とともに、業界そのものの拡大が著しい古物商業界、様々な企業のニュースが日々リリースされている。中でも、日本最大級のリユースデパートを展開する株式会社コメ兵(以下、コメ兵)のグループ会社であり、中古品の業者向けオークションを運営する株式会社KOMEHYOオークションの出来高が、2014年9月に16億6千万円を記録したというニュースは記憶に新しいだろう。
一点物であるリユース品をインターネットで全国販売し、ECサイトで商品を取り寄せ、店舗で実際に商品を見てから購入してもらうという「オムニチャネル型EC」を展開し、各所で「オムニチャネル化成功事例」としてその名を聞くことの多いコメ兵。実店舗とネットのつなぎ込みを成功した裏にはどのような背景があるのだろうか。
客単価が店頭の約5倍の収益をあげるという同社のオムニチャネル戦略について、株式会社コメ兵商品センター、IT事業部長の藤原義昭氏に、お話しを伺った。

オムニチャネルは言葉でなく戦略

――実店舗在庫とネットをつなぎこんだEC事業のスタート経緯についてお聞かせ願えますか

○ECの立ち上げ自体は、2001年にまで遡ります。現在では、包括的に品目を扱う総合組織なのですが、当時は事業部制で、「貴金属」「ブランドバッグ」「時計」「カメラ・楽器」「着物」と5サイトに分かれていました。その頃はECという呼称というよりも「ネット通販」という名称で呼ばれることが多かったです。スタートのキッカケは、「やらなきゃいけない」という感じではなく、「やってみようか」という自発的なモチベーションから始まりました。
その後、通販を総合化した部署を作ろうという流れが出てきまして、別々だった事業部を統合した「WEB事業部」という部署ができました。縦割りの商材ごとの事業部に横串を入れ、機能性組織にするとともにサイトを全て統合し、その結果、貴金属を欲しいお客様が時計を買ったり、ブランド品を探していたお客様がカメラを買ったり、という現象が起こり始めてきました。「ネット上のどこの店舗で見た商品の実物を見たい」という声に応えるため、近隣店舗にお取り寄せし実物を見ていただく、ということが自然発生的に生まれてきまして。その接客を繰り返すうちにリピーターも急増し、カタログ的にネットで商品を見て実物を店頭で受け取る、という形がスタートできたわけです。

――リユースというビジネスモデルの場合、在庫のほとんどが一点ものですよね、一点しかない商品をネットで全国展開して販売するというのは非常に大変だと思うのですが、ネットと実店舗のつなぎ込みの面で特に苦労なさったポイントなどは

○そもそも最初EC事業部は、在庫を持って展開していくという考えはありませんでした。となると、元々店にある在庫をそのままECで販売する形になるのですが、そうした場合売上を巡ってEC事業部と現場店舗で不仲が発生してしまうのです。一体どっちの売上になるのか、そのポイントが明確にならないと、いわゆる在庫の取り合いのような状況も発生してしまう。在庫が一点ものという特質上、平等に成果をシェアをするのは難しいわけです。
そこで、店舗の予算とECの予算を管理会計上同じ枠に計上し、店舗の商品が売れたら店舗の売上、ECで売れた商品も全てカウントし、総合して評価を振り分けるという、EC事業部と店舗がウィンウィンになる評価制度を導入しました。その結果、ECという販売窓口を増やすことで店舗も自分たちの商品が売れ、EC事業部も評価をされ、自然と協力体制が生まれてきました。
ネットで見て店舗で買いたいと言って来店してくださるお客様は、購買意識が非常に高いです。特に貴金属などは、通常の店舗で来店されたお客様を接客し売れるかというと、高額商品のため売れにくい傾向があります。しかし、既にネットで当たりを付けていたり、現物を見たいとお取り置きされているお客様は購買に至るハードルが低いため、コンバージョン率が高いという特徴があります。

――予めセグメントできた層に最短距離でアプローチができるということですか

○その通りです。そのような背景があり、店舗にも徐々にECという形体が浸透してきました。店舗が感じていたことは、「インターネットを見て来た」と言うお客様が非常に増えてきていると。そして実際に売れていくわけです。そうすると、在庫の一部しかECサイトに出品していなかった店舗も意識が変わりはじめ、店舗の方からEC事業部に在庫を掲載して欲しいという声も聞こえるようになりました。そのようなうまいサイクルが回り始め、取り寄せ販売という形式が確立され始め、冒頭でお話した事業部の統合の流れにつながったわけです。


※コメ兵藤原氏へのインタビューはまだまだ続く!
気になる後編は、こちらから!
http://ecnomikata.com/ecnews/detail.php?id=5388