メガネスーパーのEC改革最前線〜オムニチャネルの裏側
ネットの直営店は、300店舗中、2位にまで成長
オムニチャネルを推進するにあたり、まず社員の意識を改革
今期中にリアル店舗とEC店舗の顧客情報を紐付けしていく
パソコン教室も実施し、オムニチャネルを推進
近年、ECを積極的に取り入れ、急激に成長を遂げているのが、メガネスーパー。聞けば、自社ECの売上は第一四半期で前年比178%だという。リアルな店が合計300店舗ある中で、直営のネット店舗の売上は第2位。メガネスーパーは次なる布石として、オムニチャネルについても積極的に取り組み始めた。もとはネットに縁が遠かった社員も、インターネット通販の盛り上がりを契機に、オムニチャネルを推進していく意志が少しずつ見え始めた。今、メガネスーパーに何が起きているのか、川添隆氏に聞いてみた。
「メガネスーパーは、オムニチャネルに向け5月から店頭受け取りを開始し、7月に入ってその成果も徐々に出始めています。しかしながら、メガネスーパーの社員はそれまでインターネットには縁がなかった人たちで、パソコンの使い方に明るくない人も多い。店頭受け取りの取り組みは、現場に戸惑いが走りました」と川添氏。インターネット通販の勢いは感じつつも、それが自分の店舗にとって考えてみれば、売り上げを脅かすだけの存在と捉えていたりもする。そういうオムニチャネルにどこか積極的になりづらい環境があったのも事実だろう。
だが、現実はその逆である。お客様にとっては、それが店であるか、ECであるかはそれほど大きな問題でなく、自分の置かれている状況や都合に合わせて利用しているに過ぎない。それだけお客様側が賢く買い物をするようになってきているのだ。故に、ECの売り上げ増加は来店の機会を増やし、また店舗での購入者でもECがあることで利便性の向上につながる。
このギャップを埋めるべく、メガネスーパーではまずエリアマネージャーや店舗スタッフなどを集め、パソコン教室の実施を行った。パソコン教室では「今、お客様は時と場合、気分によって購入するチャネルを使い分けている。それなのに、店舗とECのサービスが違かったり、購入履歴が共有できていないとお客様はがっかりされる。どこで買っても同じ体験ができるのがオムニチャネル。それには、各店舗のみなさんがWEBを理解することが必要となってくる。その第一歩として、このパソコン教室があること」を強く謳い、目的を提示した上で、なぜこのパソコン教室があるのかの意識付けをしたという。
ECの成長が結果、店舗の成長につながる。それを現場が理解。
「もちろん会社全体の利益のためにやるべき順番を考えたときに、お店としてやらなきゃいけないのは、ECの話ではない。まずは自分の店で今やらなければいけないことをやっていって、でも、その先にいずれ、ECやWEBについても取り組むべき時が来る。その時が来たら、必ずここでやったことが生きてくると捉えています」と川添氏。
「最初はパソコンやスマホの操作ができるようになるだけかもしれないが、それができてこそ、例えば、FacebookやTwitterの良さを感じるきっかけとなる。それどころか、それがリアルな店にお客様を呼び込む要因になりうることを感じるようになる。そうした中で、そこまでネットに慣れ親しめば、ECやWEBの成長が結果的に、店舗の成長につながることに、自分で気づくようになっていくはず」と続けた。自分でECの意味に気づかせ、一人ずつでも社員の意識を変えていったのだ。
この動きは、いずれ会社のキャリア形成にも影響を及ぼす。というのも、そういった知識に長けた社員はWEBを使ったPRの仕事をすればいい。実際に、長野の店舗には、そういう社員がいるという。今までは、ステップアップの方法がエリアマネージャー等に限られていたのが、企業でのWEBの活用やECができたことで、会社組織のあり方も変わってくるのではないか。ECがもたらした利点である。
その一方で、課題もある。メガネスーパーには、長らくリアルな店を軸にしてきた。そこには、600万もの会員データとそれに紐づく購買データがあり、それらに基づきスタッフは接客をしている。ただ、このデータにECで購入した人たちのものはまだ入っていないので、今期内でこれらのデータを統合していく、とした。
社員の気持ちも、システムも、ちょうど両軸がしっかり噛み合ってきて、オムニチャネルのできる環境が少しずつだが整おうとしている。数年後には、それがやってくる。リアルもECも垣根はない。オムニチャネルに向けたメガネスーパーの施策はようやく形になるが、でも、それはメガネスーパーの発展にとってはまだ序章に過ぎない。ECとともにメガネスーパーが、お客様にとってどんな価値のある施策を見せてくれるのだろうか。そこに注目していきたい。
構成:石郷“145” マナブ