売り手保護の範囲拡大に見るペイパルの次なる戦略とは

ECのミカタ編集部

「買い手」と「売り手」両者に安心・安全・簡単を提供!

 PayPal Pte. Ltd.(以下「ペイパル」)は昨日、これまで物販のみを対象にしていた「売り手保護制度」をイベントチケット販売、旅行チケット、ホテル・旅館での宿泊サービスまで拡大することを発表した。今回の対象拡大で、より多くのビジネスを不正利用から保護することが可能になる。

「売り手保護制度」とは、購入・決済・発送がすでに行われているにもかかわらず、消費者から「決済・購入を承認していない」「頼んだ商品が届かない」などを理由にクレームや注意・支払いの取り消しがあった場合、売り手側の被害金額をペイパルが負担する無料サービスだ。

多くの場合、このような保護制度は、消費者(買い手)のみを守るサービスだ。しかし、ペイパルの場合は「買い手保護制度」で不正利用から消費者を保護するサービスを提供すると同時に、ショップやブランド側も不正利用から同時に保護する「売り手保護制度」を提供することで、ペイパルを利用した売買が行われるエコシステム全体を安心・安全にし、消費者にも、ビジネスにも双方にメリットのあるオンラインショッピング環境を整えられることになる。

増加するインバウンド対策は今から!

 今回、「売り手保護制度」の適用範囲が従来の物販からサービスへ拡大することにより、海外のユーザーに対して安心・安全な決済を提供できるだけでなく、サービスを提供するビジネス側も安心してビジネスを行うことができる。

具体的には、急増する訪日観光業における各種チケット、宿泊、交通などのネット決済でペイパルを利用する場合がこれに該当する。先月、日本政府観光局は8月の訪日外国人旅行者数が前年同月比63.8%増の181万7100人で、8月としては過去最高であったと発表した。また、2015年に入ってからの訪日客は9月10日時点で1342万4000人で、過去最多であった14年実績(1341万3400万人)をすでに上回っており、観光庁も、2015年通年での見通しを1800万人から1900万人に上方修正するなど、訪日観光対策は急務となっている。

ペイパルは越境ECにおけるグローバルスタンダードとして、203の国と地域、100通貨以上に対応しており、デジタルウォレットという次世代の決済サービスとして1億7300万人が利用する利便性と安全性を兼ね備えている。

すでに国内において、積極的に訪日観光・越境ECとの連携を行っており、北海道最大のオールシーズンリゾート「ルスツリゾート」への導入や、中国銀聯カードや中国建設銀行などとのコラボレーションによって、中国の消費者と国内EC事業者を結ぶ「ペイパルチャイナコネクトプログラム」のローンチを進めてきた。

越境ECに挑む企業がペイパルを導入する理由とは…?

 今月18日には日本最大級のブッキングエンジン「OPTIMA」を提供する株式会社エス・ワイ・エス(以下「SYS社」)がペイパルを導入することを発表し、国内における数千のホテルにおいて、2016年初旬よりペイパルを決済手段のひとつとして導入することが可能となる。

ペイパルの導入はホテル側ににおいても大きなメリットとなる。具体的には、ペイパル決済ではカード情報を直接取り扱う必要がないため、情報流出などのリスクが軽減できること、最短三日で銀行へ出金できるのでキャッシュフローが改善できること、何か不正にあった場合でも「売り手保護制度」により被害額をペイパルが負担することなどが挙げられる。

今後もペイパルは日本の中小企業やスタートアップから、越境ECや訪日観光までに対応するネット決済におけるグローバルスタンダードとして、国内のビジネスを支援していくという。

2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピックでは長期的に滞在する観光客も多いに違いない。そんな観光客にとって、切っても切れないのが滞在中の宿である。カード情報を取り扱わないペイパルでの支払いが可能となれば、ホテル側も安心と安全を提供すると共に、自社の安心と安全を確保することができる。

もちろん、訪日観光客対策だけでなく、普段のネットショッピングやビジネスなどにペイパルは活用されている。無料で使えて、決済が「かんたん」に、そして「安心」になるサービス、それを「買い手」「売り手」両者に提供できるのがペイパルの大きな強みと言える。

不正対策の専門チームが24時間、365日不正な取引に監視していることから、それだけの保護制度が設けられているわけで、今回のサービスの拡大はそれだけ、同社のセキュリティ技術が高くなっていることをうかがい知れる出来事だ。この信用度こそが、EC店舗が決済を活用する上で、ペイパルを選択することのヒントになるかもしれない。


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