無印、パルコ、ハンズが語る!オムニチャネルの”今”

利根川 舞

App Annieが語る、アプリ市場のトレンド

 先日、世界規模のアプリ市場データと分析ツールを提供するApp Annieが「DECODE ノンゲーム編」を開催した。「DECODE」はサンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドンを始め、世界中でアプリコミュニティ発展のために開催されているApp Annie主催のイベントだ。

「DECODE」は四半期ごとにに2回開催されているが、そのうちの1回はゲームに関する内容となっているのだが、今回はノンゲーム編ということで、アプリを活用したオムニチャネル化を進めている株式会社パルコ(以下「パルコ」)、株式会社良品計画(以下「良品計画」)、株式会社東急ハンズ(以下「東急ハンズ」)から3名が登壇した

。

3名の登壇前にはApp Annieの向井俊介氏が登壇し現在のアプリ市場のトレンドを解説した。今現在、Google Playでのダウンロード数が急激に増加しているという。世界のなかでも、ベトナムやインド、メキシコなどの新興国が牽引しているそうだ。また、中国におけるiOSの収益は2014年から倍増しており、日本やアメリカに比べると規模感は小さいものの、今年中には収益面でも日本を抜く可能性があるという。

日本でのトレンドというと、iOSでのダウンロードが未だにリードしているが、ダウンロード数的にはどちらも鈍化しているという。その一方で収益については伸びているという現状だ。カテゴリ別のアプリの利用時間では、ゲームやコミュニケーション系のアプリが優勢となっているそうだ。

今後、2020年には端末数が世界で60億を越えるとの見解をApp Annieは出しており、それにともなってダウンロード数も増加するだろうとしている。

「POCKET PARCO」がつなぐ店舗スタッフと消費者

「POCKET PARCO」がつなぐ店舗スタッフと消費者

 その後、各社の担当者が登壇し、各社のアプリを利用したオムニチャネル化への取り組みについて語った。

トップバッターはパルコのWEB/マーケティング部で部長を務める林直孝氏。

パルコはコンセプトとして「24時間PARCO」を掲げており、それには「いつでも、どこでも テナントショップスタッフとお客様がコミュニケーション可能なオムニチャネルプラットフォーム」という意味が込められている。そして、それに沿って段階的に施策が行なわれてきた。

まず初めに、ステップ①として、ショップブログページを基点とした、商品・接客情報拡充のため、パルコ全店のWebサイトにメール投稿型ブログシステム「ショップブログ」を設置。実店舗において、店員がコーディネートの提案をするように、ブログでもコーディネート例を掲載したり、商品の説明がおこなわれた。これがパルコの「WEB接客」始点になる。

次に、ステップ②ではテナントショップのECサイトとパルコサイトの情報連携が行われた。テナントショップのECサイトから商品情報画像を収集し、パルコのサイトからはECサイトの詳細商品情報への送客が行われた。それにより、約100ブランドの圧倒的な商品情報が一箇所に集約され、いつでも商品が購入出来るようになった。

ステップ③ではショップブログページを基点とした、オムニチャネル化が行われた。ショップブログに掲載されている商品をWEBで取り置き予約し、店頭で商品購入出来るようになったのだ。そして同時に、ショップブログに掲載された商品をパルコのサイトでも購入出来るようにもなった。

そしてステップ④ではついにPARCOのアプリ、「POCKET PARCO」がスタート。「POCKET PARCO」では買い物をしたり、実店舗に訪れた際、チェックインをするとコインが貯まり、「POCKET PARCOご優待券」などの特典に交換することができる。アプリを利用してもらうことで、利用データが蓄積され、WEBでは難しかったパーソナルな接客ができるようになった。

また、アプリにはショッピング毎にその接客やサービスを星で評価するアンケート機能もあり、その評価はテナントにフィードバックされ、消費者の生の声を聞くことができ、接客サービスの向上に生かされている。

無印は「MUJI passport」でリアル店舗へ誘導!

無印は「MUJI passport」でリアル店舗へ誘導!

 続いて、良品計画のWEB事業部CMTの濱野幸介氏が登壇。無印良品は元々、西友のプライベートブランドであったが、今や商品数は7000品目を超え、国内では400店舗、海外でも300店舗を超えている。そんな無印良品では、リアル店舗へ来てもらうための施策としてアプリを活用している。

過去、無印良品が行った調査によれば、無印良品のECサイトで商品を購入したことのある人はわずか4割であったという。ではどんなことに利用しているのか?実は多くの人々は、無印良品で行っている良品週間というセールのお知らせやクーポン、リアル店舗で買い物をする前に商品をチェックすることに利用していたことがわかった。そういった結果を受け、WEBで見て、リアル店舗で購入してもらうためのマーケティングを行うという軸が決まった。

その当時はあくまでリアル店舗への集客という面が強かった。そのため、無印良品のアプリである「MUJI passport」をリリースする以前、ユーザーへ配布するクーポンはメールに添付した画像であったという。ただの画像であるため、ユーザーの情報を得ることができなかったが、着実に来店者数は上がり、「WEBは敵じゃない」と感じたそうだ。そして、今に至る。

「MUJI passport」は"ポイントカード+ニュース媒体+お買い物支援ツール"として利用されている。無印良品ではアクティブユーザーの数を重視しており、現在のアクティブユーザーは月間200万人に登っている。

また、リアル店舗での商品購入、チェックイン、コメントをすることで「マイル」を貯めることができ、店舗とユーザーとの関係性の中で特典として付与される「ポイント」があり、ポイントは1ポイント1円で利用することができる。

東急ハンズアプリの目的は・・・?

東急ハンズアプリの目的は・・・?

 最後に、Skypeを繋いでの登壇となった東急ハンズオムニチャネル推進部オムニチャネルコマース課で主任を務める緒方恵氏だ。

東急ハンズは幅広いスタッフの豊富な知識に基づくコンサルティングセールスが特徴だ。そして、東急ハンズアプリの目的は「ネットとリアルのごちゃ混ぜ化」。アプリとリアル店舗の間でユーザーが循環しておりオンラインからオフライン、そしてオンラインへと流動的な環境とっている。

現在も利用されているが、東急ハンズにはプラスチックの会員カードがある。それがアプリ化されることによって、大きなコスト削減に至ったという。また、スマートフォンにアプリがダウンロードされているため、カード忘れの防止やポイント付与の向上につながった。

東急ハンズのアプリの大きな特徴としては、リアル店舗の商品のバーコードをスキャンすることによってアプリの「欲しいものリスト」へ追加し、いつでもネットで商品が買えるようになっていることだ。ECサイトによくあるお気に入り機能というものは、リアル店舗ではなかなかないものであるが、東急ハンズアプリでは柱になる機能となっており、お気に入りからの購買率は高くなっているそうだ。

今後の展望としては、まずスマートフォンアプリの機能追加として、一人ひとりに合わせたクーポンの配布やアプリ内での保証書・領収書の発行など様々な取り組みを構想中だそうだ。また、オムニチャネル型購買プラットフォームの育成・強化として、コミュニティの強化なども展望の中にあるという。

その後、モデレーターとして向井氏が加わり、3名への質問により各社の取り組みについての深堀りが行われた。その中で向井氏が最後に「顧客接点のチャネルはどのように変化していくのか」という質問をすると、PARCOの林氏は、自社の取り組みとして、今後は”衣・食・住”ではなく、医療・美容、食、充実の”医・食・充”をキーワードに接点を持つと語った。

また、良品計画の濱野氏はオムニチャネル化する中で、他社メディア、他社アプリや広告などとどうやって連携し、利用者に気持ち悪いと感じさせないコミュニケーションを実現していくのかが課題であると回答した。今後は無印良品の提供するアプリでどう楽しんでもらうか、突き詰めて行くという。


最後に東急ハンズの緒方氏。スマホが基点となることは変わらないだろうが、センサーやAI領域、ビーコンなどが活用されていくのではと語った。

2時間という短い時間ではあったが、3社の取り組みや開発での苦労、そして今後の展開まで、盛りだくさんの内容であった。もちろん企画者や開発者だけでなく、販促を行う上でも学ぶことは非常に多かったに違いない。

近年、スマートフォンの普及により、アプリでサービスを提供する企業は、今回登壇した良品計画や東急ハンズのような小売業者やPARCOのような商業施設、メディアなど多岐に渡っている。だからこそ、自社のサービスを提供していく上で、ユーザーに選ばれやすく、そしてユーザーに使い続けもらうアプリ作りが重要であるに違いない。

実店舗とECサイト、どちらも持っているが、実店舗で売り上げをあげているからといって、ECサイトがおざなりになってしまっている企業は少なくない。そういった状況のなかで、今回登壇した3社は、アプリの導入することで実店舗への来店と、ECサイトでの購入を同時にサジェストすることができており、オムニチャネルを上手く活用している例といえるだろう。


記者プロフィール

利根川 舞

メディア編集部
ロックを聴きつつ平安時代に思いを馳せる文学人間。タイムマシンができたら平安時代に行きたいです。
ライブハウスやフェス会場に出没しては、笑って、泣いて、叫ぶ姿が目撃されている。ACIDMANや10-FEET、ROTTENGRAFFTYが大好き。

サービスやその場の雰囲気がイメージしやすくなるような記事を書いていきたいと思います。

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