~AIと人間の未来とは~PepperからiPhoneが買える?
Pepperだらけのソフトバンクショップ、表参道に出現
2001年に公開された、スティーヴン・スピルバーグ監督による「A.I.」というSF映画はご存じだろうか。地球温暖化が進んだ未来の地球で「愛情」をプログラムされた最先端のAI(人工知能)ロボットが冒険を繰り広げるストーリーなのだが、当時はその近未来的なAIロボットの姿に、誰もが未来に夢を馳せたのではないだろうか。
「A.I」公開から15年経った2016年、当時はまだ近しいものとして想像もできなかった人工知能が、今や私たちの生活にとって身近なものになりつつある。特に現在、人工知能として一番注目されているのは、ソフトバンクグループ株式会社(以下、ソフトバンク)の「Pepper」ではないだろうか。
その「Pepper」が、期間限定で「Pepperだらけの携帯ショップ」を東京・表参道にオープンさせた。このショップは「Pepper」が客の呼び込みや受け付け、商品紹介、スマートフォンの契約手続きなどの業務を行う実験的な店舗である。「Pepper」の案内でソフトバンクの「iPhone 6s(16GB)」が購入できてしまうことには特に驚きを隠せない。
もちろん、スマートフォン購入の最終契約確認などは人間のスタッフが行うので全くの「無人店舗」というわけではないが、それでもスマートフォンの複雑な契約自体は「Pepper」が行うわけで、人工知能の急速な発達にただただ唖然とするばかりだ。
そんな「Pepper」は、現在、国内500社もの企業に採用されている。「Pepper」の活躍の場としては、ソフトバンクショップはもちろん、銀行の窓口、カフェ、福祉施設など多岐に渡るのだが、実は個人向けとしても販売されているのだ。将来的には、「Pepper」が一家に一台ということもあり得るかもしれない。
リクルートも導入、Web接客の進化
人工知能は、一度経験したことを学習し、そこから先の展開を推測して、次の言動に反映させられる。EC業界でも話題な「Web接客」もその一つで、サイトにきたお客様の特性を理解し、一人ひとりにあった商品の紹介や、クーポンの提示を行う。消費者にとっては、今やその「Web接客」が当たり前で、何気ないサービスに気付かないかもしれないが、「Web接客」の進化は、AIの、そしてECの、躍進なのである。
最近では、株式会社リクルート住まいカンパニーが、「スーモカウンター」のWebサイトへ、AIアドバイザー「スミヨ」を設置した。スミヨには、リクルートテクノロジーズの研究開発機関アドバンスドテクノロジーラボ(ATL)が自然言語処理技術を活用して開発した会話エンジン「TAISHI」が組み込まれており、話の内容を理解した自然対話に近いテキストメッセージでやりとりすることが可能だ。住まいに関する質問や店舗の検索に加え、簡単な雑談にも24時間いつでも返答する。
また、全国各地のスーモカウンター店頭に導入した「Pepper」のように、音声認識機能や読み上げ機能を組み合わせれば音声でのやりとりも可能となる。ここで「Web接客」と「人工知能によるリアルな店舗での接客」に垣根がないことに気付く。
AIと人間が共存する未来
お客様の顔が見えないECにとって「Web接客」は、ネットショップとお客様をつなぐ大切なツールである。そして人工知能による接客は、「Pepper」のように、リアルな店舗でも広がりを見せている。
しかし、この十数年でECの歴史、そしてAIの歴史がガラリと変わったように、これから先更なる進化が見込めることを考えると、人工知能によるリアルな店舗での接客もそこまでに珍しくなくなるのではないだろうか。
既に「Pepper」が国内500社に導入されていることからもわかるように、人工知能はリアルな店舗でも並ぶところにまできているわけで、それは人工知能がリアルな店舗のリアルな対応に近いレベルにきていることを意味するのだ。
つまり、EC業界において、リアルな店舗に近づく一つのあり方として、人工知能を受け入れる必要がこれから出てくることを意味しているように思う。EC業界で「Web接客」を導入し”おもてなし”を行うことは、リアルな店舗との差をなくしていくことはもちろん、ネットショップの質にもかかわってくるのではないだろうか。