心に響く、優秀ECサイトデザイン大集合~JECCICA発表~

ECのミカタ編集部

 一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会(以下、JECCICA)は、ECサイトの優れたデザインを選出する表彰式「ECサイト制作デザイン大賞2016」を開催した。

 ここでいう”優れたデザイン”というのは、ただ単に”商品が売れる”ためのデザインではなく、いかに消費者をひきつけるインパクトをもち、消費者の生活を豊かにできるデザインなのかといったところが重要になっている。

 ノミネート店舗は計6店舗。この日のために、全国各地から駆けつけた。一体どのような店舗が、どのようなECサイトデザインで、自店舗の魅力を消費者に届けているのだろうか。

今後の飛躍にも注目!シルバー賞・テクノロジー賞・エントリー賞

今後の飛躍にも注目!シルバー賞・テクノロジー賞・エントリー賞The NUDE CABLE

【エントリー賞】
The NUDE CABLE(http://www.nudecable.com/

 数々の著名なミュージシャンも愛用する楽器用のシールドケーブルを展開。ECサイトを始めたのはなんと今年の2月からだという。ECサイトのデザインで特に気をつけたのは、パソコンとスマートフォンそれぞれでHPを見たときの見え方の違いだ。スライドバナーの色とフォントの色を工夫することによって、見やすいHPで商品の魅力を伝えている。HPの写真は「使用している本人たちにしかわからないポイントがある。」と、代表 池田佳則さん自らが撮影したもの。池田さんの人柄同様、温かさがよく伝わるECサイトであった。

カガセイフン

【テクノロジー賞】
株式会社カガセイフン(https://soba-sueyoshi.co.jp/

 明治10年に創業し、139年の歴史をもつ福井県の高級そば粉屋さんのECサイト。福井県産の硬い蕎麦の実にこだわり、100年を超える石臼で丁寧な挽きにこだわっている。ECサイトリニューアル前は、1ページに載っている情報が煩雑していて、新規購入者にとっては見づらいECサイトであった。

 なのでリニューアル後は、トップページでカガセイフンの世界観を見せ、商品ページに遷移するまでに顧客の購買意欲を上げる工夫を施した。例えば、サイトデザインの色を蕎麦の茶色・石臼の灰色と統一し落ち着きを演出、そしてスライドを使用してワンページでできるだけ情報を載せるなど。するとリニューアル後は、見やすいサイトデザインにより、スマホからの購入率がアップ、新規のお客様が増えたとのこと。見せ方を工夫するだけで、購入者に与える印象がガラリと変わるのだ。

Mammy Jewel Box

【シルバー賞】
Mammy Jewel Box(http://mammy-jewel-box.ocnk.net/

 子供服や婦人服の型紙を販売するソーイング型紙ショップさん。サイト開設から10年、サイトの運営は、運営者山岸かおりさんがお子さんを育てながらお一人で行ってきたというから驚きだ。型紙を買い求めにくる世代は、1枚の型紙で様々な商品を作れる面白さからなのか、20代~80代までと幅広い。

 HPの商品ページを作るときに気を付けていることは、販売している商品が”型紙”であるということをお客様に伝えるということ。というのも、HPには型紙から既に作られた洋服などの写真を載せているため、HP開設当初は型紙ではなく、その商品が販売されていると勘違いされるお客様が多かったそうだ。なので、お客様に商品がどういったものかをしっかりと伝えるために、商品ページをテンプレート化せず、商品ごとに沢山の説明と写真を用い、デザインと構成に気を付けているとのことだ。

 また、サイト内に”お客様作品集”といったカテゴリーを設け、クリックするとFacebookページにとび、型紙を購入した顧客が実際にその型紙からどのようなものを作ったか共有できる場を提供している。運営側と顧客、顧客と顧客、それぞれの距離をぐっと縮め、商品を販売するという目的だけでなく、コミュニティを作ってあげるといった優しさが、私は特に素敵だなと感じた。


 そして次ページでは、ダイヤモンド賞・プラチナ賞・ゴールド賞の登場だ。もっとも優秀なECサイトデザインと評価されたのは、果たしてどの店舗なのだろうか。また、どのようなこだわりのデザインで、消費者の心に感動を与えているのだろうか。

キラリ輝く、ダイヤモンド賞・プラチナ賞・ゴールド賞

キラリ輝く、ダイヤモンド賞・プラチナ賞・ゴールド賞日本デザインストア

【ゴールド賞】
日本デザインストア(https://japan-design.imazy.net/jp/

 日本の工芸品を海外へ発信することを目指している多言語のECサイトだ。ECを始めた当初は、モールに出店をしたり、海外サイトに出品をしたりしていたものの、モールでの月の売り上げはわずか10万円、海外ではひとつも商品が売れ無かったそうだ。しかしそこから自社サイトを立ち上げ、顧客にとっての有益なコンテンツ作りとSEO対策、そしてSNSやキュレーションサイトへの写真提供など、お金をかけないプロモーションを行った結果、EC参入当初からたったの13か月で売り上げが35倍にもなった。

 海外の顧客に対しても、言葉だけではなく写真で商品の良さを理解してもらえるように、自社ECサイトとは別に写真ギャラリーサイトも並行して運営しているという。実は、工芸品業界ではECに対する抵抗感が強く、工芸品をECで販売する許可を職人さんからもらうのは大変だった。しかし今では、工芸品業界内でも”信頼されるECサイト”として地位を確立、これからも日本の文化を海外に届けたいと、展望を語る姿が、アツく、印象的であった。

伊藤久右衛門オンラインショップ

【プラチナ賞】
伊藤久右衛門オンラインショップ(http://www.itohkyuemon.co.jp/site/index2.html


 京都で180年続く宇治茶・スイーツを販売している実店舗のECサイト。実店舗で展開する商品と同じ感動を届けるべく、サイト掲載写真は、京都の町屋や庭園を貸切り、作家の作品や茶道の茶器など商品に合ううつわを探し、200~300枚以上撮影するなどのこだわりよう。また、京都のお店だからこその季節感も大切にするべく、季節ごとに写真を変更している。「そういった細やかな季節感へのこだわりがお客様から愛されているのではないか。」と、WEB営業部マネージャー 足立さんは温かな関西弁で語った。

 顧客の動向は常にグーグルアナリティクスで調査、デバイスごとでサイトへアクセスする顧客の世代が異なる為、それぞれでHPのテイストを変更し、顧客の興味をひくようなサイト作りを工夫している。そういった気配りをもってECサイト作りをしたことが、堂々のプラチナ賞受賞という結果に結びついたのだろう。

中道農園

【ダイヤモンド賞】
中道農園(https://www.ocome.com/

 江戸時代から200年続く滋賀県のお米屋さん。今回プレゼンテーションを行った中道農園 中道菜穂さんは、農家であるご家族が農薬の影響で次々と倒れたことから、まだ20代という若さで安全なお米作りに向き合い、無農薬のお米作りを徹底し、ECで安心とおいしさを全国に届け続けている。ちなみに、現在全国で無農薬のお米作りをしている農家は0.2%しかいないそうだ。そして、中道さんと一緒に登壇した、中道農園のHP制作を行うAISHA株式会社 代表取締役 伊東 美沙貴さんは、中道さんが高校生の時からのお知り合いということで、後程お二人にお話しを伺った際にも、お二人のお姿からは、一緒に多くのことを成し遂げてきた歴史とお互いがお互いを信頼している気持ちが伝わってきた。

「お米作りにおいて、自然を味方にできるような農家になれることを心がけています。またECサイトでは、商品の紹介よりも私たち中道農園の歴史やお米作りの情報を掲載している方が多いです。それは安心を届ける立場として、商品に嘘や偽りがないことをお客様に判断してもらえるようなECサイトを作るうえでの工夫なのです。」

 中道農園のECサイトの特徴として、無農薬のお米作りの歴史を伝える情報が商品紹介よりも多いこと、そしてもう一つ、広告や宣伝を一切行っていないということがあげられる。それにも関わらず、商品の人気は高く、完売してしまうこともしばしば。

「中道農園のお米を求められるお客様の声で多いのは、やはり、お米の安全に対するものです。お客様のなかには、お体を壊されているお客様もいらっしゃるので、そういったお客様のニーズにこれからも応えていきたいです。」

 ”同じように農薬に苦しむ人を生み出したくない”と奮闘し、様々な困難を乗り越え、現在の支持を獲得した中道農園。その歴史を交えたECサイトのデザインは、納得のダイヤモンド賞受賞という結果に幕を閉じた。

ECサイトのデザインは店舗の表情

ECサイトのデザインは店舗の表情

 実店舗とは違い、相手の表情が見えないECサイトであるからこそ、商品の写真や説明にこだわったECサイトのデザインは、その店舗のイメージを顧客にどう与えるか左右するため、とても重要だ。逆に言えば、各々の店舗の色を存分に出すことができるので、ちょっとしたこだわりが顧客に与える印象に大きな変化を与え、確実に顧客の生活に”豊かさ”をもたらしているのだ。

 ”あのサイトのデザインが綺麗で使い勝手が良いからまた買い物をしたい”そんな風に思ってもらえるサイト作りを、EC店舗はデバイスの画面上で勝負しているからこそ意識していかなければならない。

 そのヒントとして、今回6店舗がみせたECサイトに対するこだわりを参考にするのも、とても素敵だと思う。自分たちの店舗は、何を、誰に、どうやって発信していくのか、その根幹部分が一貫していること、それさえ見失わなければ、ECサイトでのパフォーマンスは無限の可能性を秘めているのではないだろうか。

 もちろん、モールにも素敵な魅力があるわけだが、独自性を持ったECサイトがこれからもEC業界をけん引していくことを応援していきたい。


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