越境EC加速へアリババが動く、大手メーカーがアジアへ
アリババのビックデータ×日本メーカーの技術
昨日、虎ノ門ヒルズにて、アリババグループとアリババ株式会社(以下、アリババ)が日本企業向け中国・アジア EC支援サービス「Japan MD Center」のオフィシャルキックオフミーティングを開催した。これは、日本メーカー企業の中国・アジア ECの売上拡大に向けてアリババがどのような支援を行うか、理解を深める場として設けられており、ベビー・マタニティ、化粧品、健康食品、トイレタリー、食品などの分野から約200社のメーカーが出席する越境ECに携わる企業にとって重要な場となった。
Japan MD Center キックオフミーティングは、ソフトバンクグループ 代表 孫正義氏のメッセージ動画に始まり、アリババグループのCEO Daniel Zhang(ダニエル・チャン)氏、アリババジャパンの香山 誠氏の講演が行われた。
ダニエル・チャン氏は、世界最大のインターネットショッピングイベントとなった独身の日(11月11日)を発案するなど、アリババグループまた、EC市場をけん引する存在とも言える人物だ。講演では、中国、東南アジア、インドなどアリババグループがEC事業を広げる地域のマーケット拡大を強調した。その上で、日本メーカーがアジア諸国でのブランド認知を広げる場としてのアリババ、次世代商品開発のための情報提供をする存在としてのアリババであると語った。
続いて香山氏から「Japan MD Center」の説明があった。「Japan MD Center」では日本メーカーに対して「中国消費者のニーズを可視化」「マーケティング活動を支援」「1~3年の販売見込みを査定」「Tmall販売店舗の設定支援」の4つの支援を行っていくという。これらの支援をアリババが行う意味は、アリババが保有する中国の消費者やそのニーズに関する”ビックデータ”にある。香山氏はビックデータの活用事例として「第一子を迎える母親が紙おむつについてどのような行動をとるか分析したデータを挙げ、同一商品であっても日本と中国でニーズが異なることを説明した。こうした中国市場に関する分析を日本メーカーで行うには困難が多い一方、日本の商品は品質が良くアジア諸国においても人気が高い。つまり市場ニーズを知る”アリババ”と商品に魅力をもつ”日本メーカー”双方の強みを持ちより、より効果的な越境EC事業を行おうというのだ。
資生堂など「Japan MD Center」活用企業の展望
「Japan MD Center」を説明を受け、実際に活用する企業として7社(資生堂、アスクル、HABA、MTG、協和、ジャパンゲートウェイ、ユニ・チャーム)の代表から、中国市場で展開実績や今後の展開について発表があった。以下でその概要をまとめる。
株式会社資生堂
登壇者:代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 魚谷 雅彦さん
・1981年よりブランド展開や合弁会社の設立など中国進出を進める
・現在はプレステージやコスメティックス、パーソナルケア、ヘアサロン向けブランドなどを幅広く展開
・2020年までに中国EC事業年平均成長率+30%超を目指す
株式会社ハーバー研究所
登壇者:代表取締役社長 末広 栄二さん
・2018年、中国EC販売目標50億円
・中国ECはTmall独占販売
・Tmallは重要ブランドとしてリソースを提供
アスクル株式会社
登壇者:代表取締役社長 兼 CEO 岩田 彰一郎さん
・約90社のメーカーとオープンデータで分析を行っている
・越境ECに必要な物流の構築などにおいて役立つ存在を目指す
株式会社 MTG
登壇者:代表取締役 松下 剛さん
・2018年、中国EC販売目標100億円
・Tmall限定商品の共同開発
・Tmallは重要ブランドとしてリソースを提供
株式会社 協和
登壇者:代表取締役 堀内 泰司さん
・2018年、中国EC販売目標30億円
・中国越境EC販売をTmall国際に集中
・Tmallは重要ブランドとしてリソースを提供
株式会社 ジャパン ゲートウェイ
登壇者:代表取締役 堀井 昭一さん
・Tmall年間販売目標300万本
・中国越境EC販売はTmall国際独占
・Tmallは重要ブランドとしてリソースを提供
ユニ・チャーム株式会社
ビデオメッセージ:代表取締役 社長執行役員 高原 豪久さん
・Tmallは重要ブランドとしてリソースを提供
「Japan MD Center」は越境ECを促進するだけでなく、越境ECのあり方を大きく変える可能性を秘めた存在のように思う。これまで多くの日本企業が行ってきた越境ECは、日本向けに開発した商品を持ち込むというような方法が主流だった。しかし、「Japan MD Center」が目指すのは中国・アジアの消費者ニーズに合わせ、新たな商品・ブランドを開発し販売することだ。これは中国のEC市場を牽引してきたアリババの存在があってこその展開である一方、日本メーカーの商品、技術力が世界で評価されている証とも言えるだろう。今後の越境ECがどのような展開を見せるのか目が離せない。