越境EC最前線!アリババ/eBay登壇セミナー
2016年6月21日、ECのミカタセミナーフェア「越境EC最前線」が開催された。このセミナーでは、アリババ・ジャパン、イーベイ・ジャパンをはじめとした、越境ECの最前線で市場を牽引する企業が登壇し、現状と今後の展開、EC店舗はどのように越境ECに取り組むべきなのかを語った。今回は速報として、登壇全企業の紹介と、講演の概要を紹介する。今後、各企業の講演について詳細を順次公開していく。
越境ECの今、セミナー開催の意義とは?
越境ECという言葉が話題にのぼるようになってしばらくが経つ。今、越境EC市場は確実に拡大している。一方で、日本市場は人口の減少などにより消費は縮小傾向だ。EC事業を安定的に運営しようとするならば、越境ECは見逃せない市場と言えるだろう。また、日本の商品は海外で信頼性が高いことや、オリンピックに向けた盛り上がりも、背中を押す。
これを一過性で終わらせずに、継続した市場にするためにはどうすれば良いのだろうか。越境EC市場の成長と共に、支援会社のサービスも充実してきている。今回のイベントでは、そんな支援会社の中でも、ここぞという会社に、越境ECについてそれぞれの専門分野について語ってもらった。
世界最大級の越境ECプラットフォーム「eBay」について
登壇企業:イーベイ・ジャパン
イーベイは、21年前、CtoCのオークションサイトから始まり、今や200カ国以上にユーザーを抱える、世界最大級の越境ECプラットフォームだ。BtoB、BtoC、CtoCの区別がなく常時多数の商品が取り扱われているが、その80%は固定価格での取引で、ショッピングサイトとしての存在感を増している。また、2014年は20%だったインターナショナルな取引が、2015年には25%にまで成長しているとのことで、ここでも越境ECの可能性を感じることができる。
講演の中で繰り返し強調されたのが、国による事情の違いを知り、対策をする必要があるということだ。商品選定を始め、決済方法や配送など、一口に越境ECと言っても、国が違えば事情が違う。越境ECにおいて、日本の商品は人気があるが、その中でもどんな商品が良いのか。それも国によって変わってくる。グローバルに展開するイーベイでは、出店に関することはもちろん、そういった点においてもEC店舗をサポートしている。
グローバルEC万引き・EC詐欺の実態と対策
登壇企業:かっこ株式会社
今、クレジットカードの不正利用において、ECが狙われやすくなっているという。原因としては、カードの偽造が必要な実店舗に比べ、ECサイトではカード情報だけで決済が可能であることが大きい。また、CtoC市場の拡大によって、盗品を簡単に換金できるようになったことも、原因としてあげられる。これらを利用して、犯罪集団だけでなく、一般の消費者までもが、不正を行っている現実があるそうだ。そして、大手モールから大手サイト、中小サイトへと、不正対策が厳しくなるに従って、不正の対象も広がってきている。
いつ、どのECサイトが被害に遭うか分からない状況なのだ。また、今後、民泊やロッカー受け取りなど、ECを使ったサービスが便利になればなるほど、残念ながら不正の可能性も上がっていく。では、どのように対策をすれば良いのか。方法はいくつかあるが、それぞれのメリットもあればデメリットもある。それを踏まえて、対策を選ばなければならない。
手軽に始められる越境ECとは
登壇企業:ジオシス合同会社
ジオシスが運営する、ショッピングモール「Qoo10」。アジアにおける、安全・安心、手軽な、Pan Asia eマーケットプレイスを志し、2010年6月にスタート、東南アジアを中心に、アジア5ヶ国7地域に急拡大し、特にシンガポールにおいてはローカルナンバー1サイトの地位を築いている。
越境ECというと中国のイメージが強いが、東南アジアは、今後の大きな成長が見込めるという点で、中国以上に注目の市場だ。Qoo10では、アジア5ヶ国7地域において、グローバルプラットフォームを展開。グローバルハブサイトに出品することで、この全ての国と地域で自由に物の取引ができるようになっている。販売管理システムも全て共通という、革新的なシステムだ。
東南アジア市場の特徴として、モバイルからの注文が大部分を占めることがある。Qoo10は創業時からモバイルショッピングに注力しており、モバイルアプリも3種類提供している。実際に、約8割がモバイルからの注文、またユーザーの約8割が女性となっている。こう言った、現地事情に通じた商品提供ができるのも、Qoo10の強みだ。東南アジアと言っても、国によって事情が違うところもあり、ターゲットの国に合わせた商品を探るなど、効率的な場を提供している。
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次ページにて、ナセバナル・アリババの講演をご紹介!
「中国越境EC」運営代行サービスの活用法とは
登壇企業:株式会社ナセバナル
ナセバナルは、中国越境ECに特化した運営代行を提供している。中国越境ECにあたり、日本企業が苦手な部門を代行することで、日本企業は商品開発などに専念することができる。中国市場日は非常に変化の激しい市場で、調査に時間をかけているうちに状況が変化しているということが当たり前の世界だ。日本の5年、10年の変化が1年、2年で起こってしまうというようなスピード感で、素早いスタートが非常に重要だ。
中国市場は、富裕層はもちろん、中間層の数も増え、世界の工場から世界の市場へと成長を遂げている。中国ユーザーのEC利用はモバイル経由が主流だ。こういったニーズに合わせ、主要モールの他にも、モバイル特化型ネットショップの微店(ウェイデン)なども登場している。
また、サイト制作一つとっても、中国で好まれるデザインがある。さらに、データ活用や分析、販売戦略の作成などは、ノウハウの蓄積に時間がかかる。加えて、中国では法規制や規約、輸入制度など、ルールを把握し認知することもなかなかに難しい。こういった点は、専門家の力を借りることで、結果的に無駄なコストを抑えることにつながるものと考えられる。
中国越境EC最前線-今後中国越境ECで成功する条件とは-
登壇企業:アリババ株式会社
昨今、爆買い、インバウンドが話題になっているが、実は越境EC市場も同等の売上を誇っている。その背景としては、中国では、日本や欧米と違い、実店舗の小売よりもECの小売の方がよく利用され、売上が大きいということもある。また、モバイルの普及がこのECの売上をさらに後押ししている形だ。
中国越境ECで成功するためには、商品・価格・在庫数の3点がポイントになるという。これは、当たり前のように思えるが、ここがきちんとできている企業は僅かだそうだ。簡単に言うと、商品は、日本で売れていて、インバウンドで売れている、日用品が良い。価格は、物流コストをいかに削減するかが鍵になる。越境ECにおける物流では、直送と保税倉庫を利用する2パターンがある。コスト的には保税倉庫の方がはるかに安く済むが、売れる商品でないと扱えなかったり、大量に輸入しなければいけなかったりなど、縛りやリスクが存在するため、2パターンをうまく使い分ける必要がある。これが、在庫数の管理にもつながる。
さらに、アリババの新たな挑戦として、実店舗とECをハイブリッドした形の「農村淘宝」を立ち上げ、農村に拠点を置き、ECに慣れていない人の代わりに注文をしたり、逆に商品を売ったりという取り組みをしている。また、先月「Japan MD center」というサービスを立ち上げ、ここでは、出店は難しいといEC店舗やメーカーに最適な小売店を紹介するという、マーケティング支援を行っている。これにより、有名ではないが良い商品が売れる機会を作りたいとのこと。
ポイントはおさえつつ、新たなマーケットに挑戦する。現状にとどまらないアリババの姿勢、そして越境ECのさらなる可能性が感じられる講演だった。