越境EC最前線!中国での成功法と東南アジアの可能性

ECのミカタ編集部

6月21日開催のECのミカタセミナーフェア。eBay、アリババをはじめとして、越境ECの最前線に立つ5企業による講演が行われた。今回はその詳細第二弾。中国越境ECで成功するための方法と、中国に次いで注目されている東南アジア市場についてお伝えする。
★登壇5企業の講演概要はこちら<https://ecnomikata.com/ecnews/9659/
★国内ECとの違い、不正対策についてはこちら<https://ecnomikata.com/ecnews/9708/

今後中国越境ECで成功する条件とは

今後中国越境ECで成功する条件とは

登壇企業:アリババ株式会社

 昨今「インバウンド」が話題になっているが、それと同規模の数字が越境EC市場で動いている。特に中国では、実店舗の小売消費額よりもECでの消費額の方が大きく、あくまでも実店舗が主体のアメリカや日本とは事情が異なっている。なぜなら、実店舗が普及した上でEC市場が生まれたアメリカや日本などとは異なり、中国では実店舗の普及より前にEC市場が一気に普及したからだ。それを後押ししたのが、モバイルの普及だ。中国越境EC市場に参入するなら、こういった経緯を押さえておくことが必要だろう。

 中国越境ECで成功するためには、商品・価格・在庫数という3つのポイントを押さえる必要がある。当たり前のことのように思えるが、このポイントをきちんと押さえて実践することは、なかなかできないのだという。

 商品はまず、日本で売れているモノで、その中でもインバウンドで売れているモノ、さらに日常利用できるものが向いている。特に人気があるのが、ベビー、コスメ、ヘルスケア用品だ。日本で売れないモノを在庫処分しようとして中国で売っても、まず売れることはない。また、インバウンドで売れていても、お土産品などは、越境ECには向かない。

 価格では、いかに競争力のある価格設定をするかで、そのためにはいかに物流コストを削減するかが重要になってくる。特に今年4月8日の税制改正は、直送の場合はあまり影響はないが、保税倉庫を利用する場合には、逆風となっている。混乱が生じたこともあり、1年間の猶予期間が設けられることになったが、いずれにせよ、物流については慎重に考えないと、競争力のある価格設定ができない。そもそも保税倉庫は、売れる商品しか入れさせてもらえず、それも大量に入れる必要があるので、少量多品種には向いていない。そのため、保税倉庫に入れられないような商品はまずEMSで始めるなど、商品ごとに物流戦略を立てる必要があるのだ。

 在庫数については、一番難しいところでもある。中国越境EC市場はとにかく規模が大きいので、売れ筋商品は圧倒的な在庫を用意する必要がある。しかし、保税倉庫はいったん商品を入れると戻すことが難しいので、リスクを取ることになる。また、それだけの量を調達するためには、メーカーも含め協力が必要となる。実際、中国EC市場において最大のイベントと言える、11月11日の独身の日のアリババのセールに向けて、早いところでは春頃からメーカーで増産を始めたり、今の時期には既に各社商品を選定してエントリーをするような状況だ。簡単なことではないが、チャンスを取るためにはリスクも取らなければいけないのだ。

 以上は、現状の中国越境ECにおいて成功するための条件となるが、アリババとしては、既に有名な商品だけではなく、有名ではないが良い商品ももっと販売したい、人気商品を作っていきたいという意向もある。そのために重要なのは、ソーシャルEコマースだ。中国EC市場では、ユーザーは口コミを非常に重要視し、SNS等で商品が一気に拡散されるケースが多いという。今は有名ではない商品でも、口コミで広まることで、人気商品化できる可能性があるのだ。

 また、今年の5月18日には、「Japan ME center」という新たなサービスも開始した。これは、出店は難しいという規模のメーカーや販売店に、最適な小売店を紹介するなどのマーケティング支援を行うものだ。中国越境EC市場で売るための選択肢はどんどん増えてきているので、既存の状況にこだわらず、自社に一番合った方法を探すことが、成功の鍵と言えそうだ。

 さらに、アリババの新たな挑戦として、中国国内において、実店舗とECをハイブリッドした形の「農村淘宝」というサービスも立ち上がっている。これは、ECに慣れていない農村に拠点を置いて、代わりに注文したり、商品を売ったりするという取り組みだ。こういった新たな試みも、今後、中国越境ECの変化につながる可能性があるだろう。

「中国越境EC」運用代行サービスの活用法とは

「中国越境EC」運用代行サービスの活用法とは

登壇企業:株式会社ナセバナル

 ナセバナルは、中国越境ECに特化した運用代行を提供している。越境EC元年とも言われるように、特に今、中国EC市場は信じられないスピードで成長している。日本の5年、10年の成長が1、2年で起こるようなスピードで、1ヶ月でも状況は大きく変化する。調査に時間をかけても、その結果は当てはまらなくなってしまう。素早いスタートが重要だ。

 また、貧富の差の問題はあるが、富裕層だけでなく中間層も所得が上がり、日本製品を積極的に買うようになっている。富裕層と中間層を合わせた人口は約3億4,000万人とも言い、日本の人口を上回っている。また、中国ECの特徴として、モバイルからの注文が多く、モバイルの普及は、中国EC市場の成長を後押しした要因の一つでもある。中国は、世界の工場から世界の市場へと成長したのだ。

 中国越境ECに参入する際、C2Cで販売する場合は、淘宝網(タオバオ)・微店(WeChatShop)、B2Cで販売する場合は、天猫(Tmall)・天猫国際・微店・京東国際、B2Bで販売する場合は、1688.com(中国アリババ)がある。微店は、中国版LINEとも呼ばれる微信(WeChat)の新しいサービスだ。中国ECではチャットが非常に重要なツールとなっており、ユーザーが店舗の信頼性を図る基準となっていたり、SEO順位に影響したりする。中国国内で商品を広めたい場合、まず影響力のあるWeChatメディアで情報を配信、そこからプラス情報を拡散して、購買へとつなげるという方法が有効なのだという。



 他にも、中国越境ECに参入する際に、日本のEC事業者が苦労するのが、法規制や輸入制度、規約など中国側のルールであったり、出店するモール自体の規約であったりする。また、サイトデザインなど中国で好まれるデザインというものがあり、翻訳などもハードルとなりがちだ。そもそも中国で何が売れるのか、データ分析や販売戦略の作成ともなると、情報やノウハウの蓄積が必要だ。例えば中国ECでの広告は、お金を出せば良いというものではなく、評価が一定以上などの条件を満たす必要があったりする。



 こういった、中国市場ならではの点、日本企業がつまずきがちな点を、ナセバナルでは運用代行している。お客様対応なども、企業に代わって中国語で対応するサービスを提供している。こう言ったサービスにより、企業は商品開発などに専念することができる。そこから、今は無名でも、これから有名となる日本商品なども現れるのではないだろうか。

手軽に始められる越境ECとは

手軽に始められる越境ECとは

登壇企業:ジオシス合同会社

 ジオシスグループは、シンガポールに本社を置き、ショッッピングモール「Qoo10」を運営している。アジアにおける、安心・安全、手軽なマーケットプレイスを志し、アジア5ヶ国7地域へと急成長中だ。そんな中で、2010年6月、日本法人としてジオシス合同会社が設立された。

 越境ECというとまず中国が注目されるが、東南アジアはこれからの成長の可能性が大きい。現時点ではEC化率が低いのだが、モバイルの普及によりモバイルショッピング市場が急成長しており、アプリの使用件数も右肩上がりだ。ジオス合同会社のデータでは、注文の約8割がモバイル経由、またユーザーの約8割が女性だというデータもあるそうだ。東南アジアにおいて8.6兆ドルとも言われる小売市場が、これからEC化していく可能性が高く、越境ECにおいて見逃せない市場と言えるだろう。

 そんな状況で、Qoo10は、シンガポールにおいては既にローカルナンバー1サイトとなっており、その他の国や地域でも順調な広がりを見せている。ポイントは、グローバルプラットフォームとして、5ヶ国7地域、販売管理システムを全て共通で持ち、グローバルハブサイトに出品するだけで、5ヶ国7地域のサイトに出品が完了する。ユーザーはどこからでも商品が購入でき、国境を越えてモノの取引ができるのだ。

 また、決済は、Qoo10が一旦お金を預かり、商品の受け取りが確認できたら完了するという方法で、店舗とユーザーが直接お金をやり取りしない点も、ポイントだろう。さらに、前述のモバイルショッピングには創業時から注力しており、モバイルアプリも、ショッピングアプリ・コミュニケーションプリ・メッセンジャーアプリの3種類を提供している。

 東南アジアでどんなモノが売れているかというと、実は国によって売れているモノが違う。例えば、最近で言えば、グローバルサイトではビューティ・コスメ用品、中でも栄養補助サプリメン後が、インドネシアではデジタル用品、中でもモバイルSIMカードが、マーレーシアではビューティ・コスメ用品、中でも毛穴パックマスクが、シンガポールではデジタルよう品、中でもスマートフォン保護フィルムが売れるなど、様々だ。まずこの国で売りたいという対象を定め、その国での売れ筋商品を研究することが、コツとなるだろう。

素早いスタートと効率的な運用が鍵

 今回の三社の講演を聞いていると、越境EC市場においては、先行者利益が大きい。変化の激しい成長市場にあっては、まずスタートすることが成功の第一条件なのだと思える。

 だが、ただスタートすれば良いのであれば、既に成功している企業が数多くいるはずだが、そこまでではない。そこには、やはりハードルがあるのだ。ただ、今は、そのハードルを越えるのを助けてくれるサービスも登場しており、越境ECにおける環境が整ってきていると言えるだろう。

 それに伴い、今までは世に出にくかったような商品も評価される機会が生まれている。そういった状況を踏まえると、改めて、まずはスタートすることが重要なのだと思う。


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