カクヤスグループ、2025年7月から社名を「ひとまいる」に 酒販から「物流のプラットフォーム企業」へ事業再編
(左から)株式会社カクヤスグループ 取締役 飯沼勇生氏、取締役会長 佐藤順一氏、代表取締役社長兼CEO 前垣内洋行氏
2025年5月28日、株式会社カクヤスグループは、メディア向けの戦略説明会を開催し、事業変遷と中長期戦略、そしてグループの新社名「ひとまいる」について発表し、今後の展望を披露した。登壇したのは、取締役会長の佐藤順一氏、代表取締役社長兼CEOの前垣内洋行氏、取締役の飯沼勇生氏。“なんでも酒や”のイメージから大きく変貌を遂げるカクヤスグループの姿が明らかになった。
お酒のディスカウントストアから酒類販売のワンストップ企業へ
株式会社カクヤスグループ 取締役会長 佐藤順一氏
説明会では、最初に取締役会長の佐藤順一氏が登壇し、1990年代からこれまでのカクヤスグループ事業変遷について語った。
1990年代はお酒のディスカウントストアとして地域最安値を出して集客していたものの、1996年に種類市場はピークを迎え、酒販免許が自由化されて市場は大きく姿を変える。そこで2000年代には配送網を強化し、飲食店向けの卸販売を本格化。これにより、物流機能が強化されていったという。
ポストコロナの現在、ピーク当時7兆円とされていた酒類のマーケットは、現在3兆円にまで落ち込んでいる。佐藤会長は「酒離れが急速に進むなか、この2025年を『第二の創業』として、物流そのものを中心とする会社へと変わっていきます」と、さまざまな商品の受注・配達・請求決済までの一連のサービスを顧客に提供する販売プラットフォーム企業として成長していくことを宣言した。
中期経営計画~事業再編と機能進化で成長を加速~
株式会社カクヤスグループ 代表取締役社長兼CEO 前垣内洋行氏
続いて登壇した前垣内社長は、佐藤会長が宣言を行った事業再編を踏まえ、カクヤスグループが進める中期経営計画について説明した。成人人口の減少と一人当たり酒類消費量の減少により厳しい事業環境に立たされていることから、物流に力点を置き、機能の進化を進めていく。
事業再編による成長戦略
「物流」を軸とした新体制を始めるにあたり、社内商品だけでなく、外部アライアンス先の商品も提供する販売プラットフォームを形成する。受注・請求業務・マーケティング機能を他社にも提供することにより、自社商材カテゴリを拡大させるとともに、M&Aやアライアンスによる商材カテゴリも拡大。グループ外の企業の荷物配達も行うことにより、収益力を強化する。
物流の変化とグループ各社の機能変更
事業再編により、物流センターの増床を行って他人物配送を実現し、現在の「1時間枠配達」に加え、クイックデリバリーや当日中配達も実現可能な体制を整える。そして、現在は酒類販売のみを行っている「株式会社カクヤス」の機能に他人物配送をプラスし、グループ内企業である「明和物産」に乳製品の定期販売に加え酒類以外カテゴリの販売という機能を与えるなどの再編を行う。
既存事業の成長戦略と連結数値目標
既存事業については、物流の2024年問題で同業企業の配達力が低下していることに注目し、「お客様のご要望にきめ細かく対応できるカクヤスモデルをさらに磨き込み、残存社利益獲得を狙う」とした。また政令指定都市(札幌・仙台・名古屋・広島など)への進出を検討しつつ、顧客ニーズに応じた店頭販売のあり方を再構築するといった対策で、売り場づくりをブラッシュアップしていく。
そして前垣内社長は、「2028年3月までに売上高1700億円、営業利益40億円を目指す」とグループの連結数値目標を掲げた。もし実現すれば、売上だけの年平均成長率は8%、営業利益の年平均成長率は30%になる。
配達効率化に向けたDX戦略
株式会社カクヤスグループ カクヤスデジタルイノベーションセンター管掌 取締役 飯沼勇生氏
続いてカクヤスデジタルイノベーションセンター管掌 取締役の飯沼勇生が登壇し、配達効率化に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みについて紹介した。
まずは配送の効率化について。現在は拠点ごとの配達エリア内で、1時間ごとにピストン輸送を行っている。新しく配送管理システムを作ることで、時間の制約を取り払い、各注文を動的に制御することで、最適な車両とルートを検索できるよう体制を整えていく。理論上は現状よりも30%ほど多くの商品を運べるようになるという。
なお、注文全体の3%しか受注できていない「お客様注文アプリ」からの注文を改善したいと、2024年10月から顧客の要望を吸い上げ、アプリからのウェブ注文を行いやすくした。すると初回購入転換率が1.8倍、アプリの平均レスポンスタイムが8.5倍になり、App Storeでのアプリ評価が1.8から4.7へと上昇したという。
さらに、電話注文の一部をAI音声応対(佐藤愛子Ver1.2)に移行したことで、人手不足を補いながらカスタマーサポートの24時間対応を実現する体制が構築できているとした。
新社名を「株式会社ひとまいる」に
佐藤会長は、2025年7月1日付で株式会社カクヤスグループの新社名を「株式会社ひとまいる」とすることを発表した。
「『地域の人々の暮らしのどんな小さな願いも叶えたい』を新たな理念とし、『人財』である自社の社員がご自宅までお届けに『参ります』という意味と、毛細血管のように張り巡らせた配送網を活用してお客様へのラストワンマイルをお届けするという意味を込めました」
さらに佐藤会長は「人と人との関係性を大切にし、お客様や地域に暮らす皆さまの日常を少しだけ豊かにできる、人間味あふれる事業を今後も進めてまいりたいと考えております」と語り、「配送機能のプラットフォームを提供する会社になりたいという意識、そして間違いなく弊社の社員が商品をお届けいたしますという意味を込めて、社名を変えることで意思決定させていただきました」と宣言して説明会をしめくくった。
酒販から物流へ。カクヤスグループの新体制となる「ひとまいる」は、構造的な問題を抱える物流業界にあえて挑んでゆくことにより、さらなる成長を狙う構えだ。