楽天2025年Q3決算 国内ECは堅調、AIの浸透が楽天エコシステム拡大を後押し
2025年11月13日、楽天グループが2025年度第3四半期の決算を発表した。連結売上収益は全セグメントで二桁増収を達成。国内EC事業では楽天市場とトラベルが堅調に推移し、AIの浸透がエコシステム拡大を後押ししている。発表会では、AIエージェントの進化によるユーザー体験の革新が強調され、楽天が描く「プロアクティブな未来」への布石が示された。
全セグメントで二桁増収を実現

2025年度第3四半期の連結売上収益は前年同期比10.9%増の6286億円と、全セグメントで二桁増収を達成した。フィンテック、モバイル、インターネットサービスの各事業が好調に推移し、グループ全体の収益成長を牽引した。インターネットサービスは11.1%増、フィンテックセグメントは20.3%増、モバイルセグメントは12.0%増となった。
連結Non-GAAP営業利益は、前年同期比212.8%増の386億円。AIアバターとして登場した三木谷浩史会長は「昨年に続き、通期でのNon-GAAP営業利益及びIFRS営業利益の黒字化を目指します」とした。なお連結EBITDAは、前年同期比で28.8%増の1187億円となった。これは第3四半期として過去最高額で、通期では4000億超のEBITDA創出を見込んでいるという。
国内ECは楽天市場とトラベルが増収牽引 AIとモバイルの相乗効果が加速

インターネットサービスセグメントの売上収益は3496億円で、先述したとおり前年同期比で11.1%増加している。Non-GAAP営業利益は前年同期比14.5%増の242億円となり堅調。

国内EC流通総額は前年同期比14.5%増の1.7兆円となった。特に楽天市場では、10月からの「ふるさと納税」ポイント付与ルール改定に伴う駆け込み需要もあり、流通総額の増加に貢献。トラベル事業はインバウンド等のグローバル関連取扱高が牽引し、前年同期比で7.6%増加した。

国内EC事業の売上収益は前年同期比10.0%増の2655億円、Non-GAAP営業利益は33.6%増の339億円。営業利益については、今年6月に実施した物流事業の料金改定効果も寄与しているという。
ECの個別カテゴリに目を向けると、楽天市場では、AI活用の推進が加速している。ユーザー向けには、エージェント型AI「Rakuten AI」をアプリ内にソフトローンチ。店舗向けには「RMS AIアシスタント」の利用が拡大し、毎月2万3000店舗が利用している。
国外では、電子書籍事業Rakuten Koboが端末とコンテンツの両面で力強い成長を見せている。特に新カラー端末のロングヒットに伴い、コンテンツ販売やサブスクリプション会員数が拡大した。
AI活用はユーザー体験と店舗運営の両面で深化
発表会の後半では、チーフAI&データオフィサーのティン・ツァイ氏(AIアバター)が、楽天のAI活用について最新情報を開示した。

楽天市場では、先述のように「Rakuten AI」をアプリ内にソフトローンチ。追加質問や、複数ニーズを商品検索要件にマッピングすることでユーザーの曖昧なニーズを明確な購買行動へと導く。これにより、ユーザーの迅速な意思決定を促せる。
店舗向けには「RPP」(Rakuten Promotion Platform)の全店舗展開が完了した。RPPはAIを活用し、広告のタイミング、チャネル、価格を最適化して、ユーザーにより適した広告コンテンツをもたらす。

AI×モバイルで深化する楽天エコシステム
今期の決算発表会は、既存アプリへのAIと体験の再構築を推進することで、新規ユーザーを呼び込み、あるいはエンゲージメントを高める楽天エコシステムの拡大を強調する内容となった。AIエージェントについて、ティン・ツァイ氏は「今後、私たちは大小の言語モデルのさらなる開発を進めつつ、様々なツールを活用することで、より良い収益性を実現することを目指します」と語った。

将来的には、楽天エコシステム全体にAIエージェントが広く浸透し、ユーザーの日常をより生産的にするだけでなく、楽天グループの各種サービスへのアクセスを容易にし、生活のあらゆる場面で価値を提供する「プロアクティブなアシスタント」として機能する未来像を描いているとのこと。
AIとモバイルの融合が加速するなか、エコシステムの深化という独自の成長戦略を着実に進めていることを強調する決算発表となった。


