2025年の休廃業・解散企業、年間7万件超えペース TDB調査
年別休廃業・解散件数 推移(2025年は8月までの累計値)【帝国データバンク調査】
株式会社帝国データバンク(以下、TDB)は2025年1〜8月の全国企業「休廃業・解散」動向を発表した。同期間中の件数は4万7078件と前年同期比9.3%増で、3年連続の増加。TBDでは現行基準で集計を開始した2016年以降で、年間で初めて7万件台に達する可能性があるとみている。
休廃業・解散、初の7万件台に到達か
2025年1〜8月に全国で休業・廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む、以下「休廃業」)は4万7078件。前年同期(4万3071件)を9.3%上回り、3年連続で増加した。
2024年以降、休廃業・解散件数は増加ペースを早めており、年間では現行基準で集計を開始した2016年以降で最多だった前年を上回った。初めて年7万件台に到達する可能性があるという。
2023年以降は企業の休廃業・解散件数は持続化給付金や雇用調整助成金などといった「給付」支援策が徐々に縮小された。そのほか、電気代などエネルギー価格をはじめとした物価高、代表者の高齢化や後継者問題といった経営課題が押し寄せた。
こうした状況を背景にTDBは、「自社の事業や業界全体の将来性が見通せず、現状のままではさらなる業績悪化が避けられないと判断した中小零細企業において、手元資金に余裕があるうちに会社を畳むことを決意した、余力ある『あきらめ廃業』が増加した可能性がある」と分析する。
「建設業」は2016年以降で最多更新の可能性
業種別にみると、その他(詳細不明を含む)を除く7業種すべてで前年から増加。最も件数が多い「建設業」(5938件)は、前年から6.5%増加し、年間では2016年以降で最多を更新する可能性がある。
「運輸・通信業」(494件、同10.5%増)でも、トラック輸送などを中心とした運輸業での増加が目立った。より細かくみると「建設用金属製品製造」(35件、133.3%増)や「靴小売」(29件、123.1%増)、「畳小売」(23件、110.0%増)など、製造業や小売業、サービス業で大幅に増加した。
「前向きな廃業」が浸透する予想
本結果を受けTDBは、次のようにコメントする。
「中小企業支援の軸足が『資金繰り』から、抜本的な『事業再生』へと変化するなかで、無理に事業を続けて経営資産を目減りさせた結果、廃業のステップを踏むこともできない状態へ至るよりも、M&Aなどを活用してあらかじめ経営資産を第三者に引き継いだうえで事業を畳む方が望ましいという『前向きな廃業』の考え方は、今後さらに広く浸透していくものとみられ、年間での休廃業・解散は7万件台への到達も予想される」
「経営者保証に関するガイドライン」の改定をはじめとした各種廃業支援による市場環境の整備が求められる。同時に、取引先の突然の廃業を未然に防ぐ「サプライチェーン事業承継」の導入など、高まる連鎖廃業・連鎖倒産のリスクを軽減する取り組みも、中小企業支援策として同時並行で進めることが求められる。
各事業者は常に最新の状況を注視し、柔軟に対応していきたい。
調査概要
◆帝国データバンクが調査・保有する企業データベースのほか、各種法人データベースを基に集計
◆「休廃業・解散企業」とは、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(但し「みなし解散」を除く)を確認した企業の総称
◆調査時点での休廃業・解散状態を確認したもので、将来的な企業活動の再開を否定するものではない。また、休廃業・解散後に法的整理へ移行した場合は、倒産件数として再集計する場合もある
※:X年の休廃業・解散率=X年の休廃業・解散件数/(X-1)年12月時点企業数
◆出典:全国企業「休廃業・解散」動向調査(2025年1-8月)(株式会社帝国データバンク)