越境EC、海外進出、次なる市場は?ヨーロッパ・イギリスの可能性
今、越境ECや海外進出を志す日本企業にとって、ヨーロッパ、そしてイギリスの市場が大きな可能性を持っているという。ここ数年、日本企業の越境ECや海外進出というと中国などアジア圏の展開が目立っているが、実はヨーロッパに大きなチャンスがある。それを教えてくれたのが、ECサイトの制作から運営までをサポートする株式会社アイ・オーダーだ。特に楽天出店を得意とする同社は、その事業の中でヨーロッパのEC事情にも詳しい。今回、ヨーロッパのEC市場を知るために紹介されたのが、Trade Japan(トレード・ジャパン)という会社だ。
ECのスペシャリスト2人が日本企業のために会社設立
Trade Japanは、イギリスを拠点として新しく設立された、日本企業のヨーロッパ市場やイギリス市場への進出を支援する会社だ。この会社は、Josh Rouse(ジョシュ・ラウス)とPatrick Kelly(パトリック・ケリー)の共同運営により、日本のブランドや企業がヨーロッパのEC市場に迅速かつ簡単に進出できるようにサポートしている。
Joshは、EC業界で10年以上の経験を持ち、あらゆる商品ジャンルを扱ってきた、ECのスペシャリストだ。彼はイギリスの楽天で国際貿易のリーダーとして働いた経験があり、AmazonやeBayにもビジネスを展開し、成功を収めてきた。PatrickはイギリスでCMディレクターとして務め、楽天のイギリス地区カントリー・マネージャーを務めた経験も持つ。15年以上にわたる小売とEC業界での経験を持つ彼は、イギリスとヨーロッパの市場に精通している。
今回、日本の企業にとって、今、ヨーロッパやイギリスの市場に大きなチャンスがあるということ、そしてそれに対してTrade Japanがどのような支援を行っているか、2人に伺った。
ヨーロッパ市場、そしてイギリスに大きなチャンス
—はじめに、Trade Japan設立のきっかけを教えてください。
Josh:私たちは、ヨーロッパで日本の有名なブランドと長く付き合う中で、有名ブランドに限らず、日本の製品がヨーロッパの市場に参入する大きなチャンスがあると感じていました。しかし、ヨーロッパでは中国からの越境ECが盛んで、他の国々もヨーロッパへの越境ECを積極的に促進していますが、日本にはそういった動きがありませんでした。
Patrick:そこで私たちは、ヨーロッパの消費者が日本の製品を簡単に手に入れられるようにしていきたいと思っています。同時に、日本の企業やブランドが、簡単かつ効率的に、EC市場に参入できる環境を提供していきたいです。
—ヨーロッパ市場の規模感はどのぐらいですか。
Patrick:欧州は過去10年間、EC市場が好況です。2016年にオンライン上で使われた金額の総額は5,090億ユーロに達すると予想されています。ヨーロッパ全体では2億9,600万人のオンラインユーザーがいて、昨年一人当たりが使った平均金額は1,540ユーロでした。ただ、実はこれでもヨーロッパの人口の約43%にとどまっています。さらにオンラインショッピングを楽しむ人が増えれば、今後も大きな成長の余地があり、大きな可能性を秘めた市場です。
Josh:ヨーロッパ市場に進出するためには、ヨーロッパが非常に多様な地域であることも認識する必要があります。支出の習慣というのは国ごとに違っており、ヨーロッパのe-コマース市場においては、イギリス、フランス、ドイツのユーザーの利用が大半を占めています。
特に、イギリスのEC市場は歴史が長く、世界で3番目の大きさとなっており、2016年には、1260億ポンドにものぼりました。さらにここから10%以上の市場成長が予測されています。ヨーロッパ市場に進出するなら、まずイギリス、そしてフランス、ドイツについて考えるべきでしょう。また、スペインやイタリアなど他の国も、現時点では市場規模は小さいですが、年々ECユーザーが増加しているため引き続き注目しています。
日本企業がヨーロッパ市場に進出するために
—ヨーロッパでの日本製品のニーズはどうでしょうか?
Josh:ヨーロッパですでに人気のある日本のブランドは多くあります。食品、雑貨、健康や美容グッズ、ファッションなど幅広いジャンルの日本製品が愛用されています。例えばユニクロは、おそらく最もよく知られている成功事例です。オンラインストアと実店舗を含め、2014年に144百万ポンドの売上に達しました。この他にも、オンラインショップや、ヨーロッパ各地のデパートでも販売されている、成功した日本ブランドの製品は非常に多くあります。
Patrick:ヨーロッパで日本の製品やブランドというのは、全体的に良い印象を持たれています。特に、ヨーロッパで一般的な製品とは違ったテイストのものを購入したいと思う人が多いようです。私たちは、長年日本との付き合いがある中で、まだヨーロッパ市場に参入していないけれども、ヨーロッパで売れる可能性の高い日本の小規模なブランドやビジネスがたくさんあると気づいています。そういったブランドや製品にも、大きなチャンスがあると考えています。日本の企業はぜひヨーロッパ市場への参入を考えるべきです。
—日本企業がヨーロッパ市場に参入する際に、まず何から始めるべきでしょうか?
Josh:海外の市場に参入するとなると、言語などの障壁は当然あります。しかし、eBayやAmazonなど国境を越えたプラットフォームやサービスの登場により、越境ECや海外進出は簡単になっています。例えば、Amazon FBAネットワークはヨーロッパの大部分をカバーしています。日本の企業がヨーロッパで商品を販売したい場合、Amazon販売アカウントを登録し、Amazonフルフィルメントセンターに在庫を送りさえすれば、ヨーロッパのAmazonやeBayで販売することができます。この方法では、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポーランドをカバーしています。
Patrick:しかし、簡単になったとはいっても、やはり全てを自分たちだけで完結させるのは難しいという方が多いと思います。そこでTrade Japanでは、日本企業がより簡単にヨーロッパ市場に参入できるよう、全面なサポートを行っています。具体的には、Amazon や eBayへのアカウントの登録、出品、顧客サービス、そしてAmazon FBAの出荷も含んだ物流についてサポートしています。また、Trade Japanが管理しているAmazonの販売アカウントからヨーロッパ全域に商品を販売することも可能です。
—日本企業がヨーロッパ市場に参入する際に気をつけるべきことは何でしょうか?
Josh:言語の障壁をはじめ、自社でできないこと、分からないことに関しては、頼れるサービスを探すということでしょうか。Trade Japanもその1つです。Trade Japanは、ヨーロッパ市場での取引におけるアドバイスや案内ができ、ヨーロッパのEC市場に参入しようとしている日本企業に対して、それをできるだけ簡単にすることができます。
特に、EC市場の歴史が長く規模も大きいイギリスでは、ユーザーのサービスに求めるレベルは非常に高くなっています。例えばカスタマーサービスでは、ただ英語で対応できるというだけでは不十分で、ネイティブの言葉遣いが必要とされます。あるいは、配送サービスも重要です。高い送料や配達までに時間がかかることは、イギリスのECユーザーにとってはマイナスです。そういった点も、Trade Japanで対応しています。
Patrick:多くの企業が、ヨーロッパという巨大な市場ですでに大きな成功を収めています。これまでヨーロッパ市場を検討していなかった企業にも、ぜひ視野を広げていただきたいです。そのためにも今は良いタイミングだと思います。そしてTrade Japanは、そんな企業をパートナーとして助けていきたいと思います。