モノの流れが変わる。 Eコマースという言葉は なくなるかもしれない。
EC市場を盛り上げ牽引してきた楽天は、楽天スーパーSALEでその存在感をさらに強く印象づけた。日本最大級のモールを中心とした楽天経済圏を拡大し続けるその先に、EC業界の未来をどう見ているのか。楽天(株)執行役員の城戸氏にうかがった。
——「楽天スーパーSALE」は国民的イベントになりつつありますね。
今回(2014年3月実施)の楽天スーパーSALEでは、100時間で640億円以上という楽天スーパーSALE史上最高の流通総額をあげることができました。これは東京の一等地にある百貨店様の一年間分の売上に匹敵する金額です。この数字は楽天市場だけで作ったのではなく、楽天市場にご出店いただいている42,000店舗の皆様と一緒に作った数字だと思っています。
——モール全体で、新規のお客様が増えているということでしょうか。
実際に買っていただいている新規のお客様は非常に多いですね。特徴的なのは、楽天スーパーSALEには「事前エントリー」ページがあって、このページのユニークユーザー数とエントリー数が、毎回記録を更新していること。これはつまり、リピーターのお客様だけでなく新しいお客様も、カウントダウンをしながら待っていただいているという状況だと思います。リピートで楽天市場にきているお客様については、買い物というよりはエンターテインメントとして楽しみにきていただいている。楽天市場の店舗は楽天の仕組みでセグメントマーケティングができるのが強みで、それぞれのお店の色が出せるのが特長です。店舗がページやメールマガジンを通じてお客様がコミュニケーションをとり、個性的な企画を打ち出してお客様をひきつけていると思います。
——出店者様とは、どのようにコミュニケーションをとっているのですか。
全国に15拠点の支店を持ち、500名のECコンサルタントが出店者様の身近なところで相談しやすい環境を整えています。単なるページ作成や店舗運営の相談だけではなく、どうすればお客様に買っていただけるかという、ロイヤルマーケティングの部分に踏み込んだ分析・提案もさせていただいています。マーケティング分析が楽天のECコンサルタントの強みですので、今後はより人数を増やし能力を向上させることで、面積で楽天市場の出店者様へのサポート力をあげていきたいと思っています。
——やはりスマートフォンからのお客様も増えているのでしょうか。
スマホとタブレットからの閲覧数とユニークユーザー数は、爆発的に伸びており、楽天としても大きな可能性を感じています。2013年の年末時点で、既に約40%がスマホ・タブレット経由の流通でした。今回の楽天スーパーSALEでも、最初の一時間では過半数を圧倒的に超えるお客様が、スマホ・タブレットからアクセスされていたという数字があり、本当に近々に、今年か遅くても再来年にはPCからの流通を超えるのは間違いないと思います。
——これから未来に向けて、どのような取り組みをしていくのでしょう。
2014年の年始から社内に「品質向上委員会」というものを設置し、より質の高いモール運営・質の高いショップ運営・質の高い商品とサービスの提供を行う「プレミアムモール宣言」をさせていただいております。創業以来、ステークホルダーの皆様と二人三脚で進んできたのですが、この混沌としたECの世界で、楽天市場では規定された法律以上の細かいガイドラインを制定し、安心して安全にお買い物を楽しんでいただけるモールを目指しています。非常に細かいガイドラインとルールを出店者様にも強いてしまっているのですが、結果的には楽天市場全体の信用と安心感が高まって、ユーザー様にはよりよい買い物環境を提供できていると考えています。
実際に今年に入ってからも、出店者様の売上流通総額は堅調に推移しています。特に4月1日の消費税増税を控えて高単価な商品が伸びていることに加え、前回の消費税アップ時の状況を非常に細かく分析し、それに基づいた需要予測による施策が功を奏していると言えます。もちろん、増税後の対策も色々と講じております。
——今後のEC業界はどうなっていくと思いますか。
中長期的なビジョンで申し上げますと、ひとつのキーワードとして「Eコマース」という言葉自体、特に「E」の部分が希薄化していくんじゃないかと考えています。今まではインターネット販売とリアルなチャネルの販売は別々のものと考えられていましたが、おそらくこれからは、よりシンクしてくる。誰もがECを意識し、誰もがリアルタッチポイントを求めていく。ECをしない会社はなくなっていき、逆にリアルタッチポイントを不要だという会社は存在し得なくなるでしょう。
もうひとつのEC業界の流れとしては、モノの流れ、取引というものが国を越えて、ボーダーレス化・グローバル化が進んでいく。今存在している貨幣価値や国の概念が変わっていくかもしれません。その流れの中で楽天もビジネスモデルを進化していく可能性があります。楽天グループも、世界一のインターネット・サービス企業を目指してチャレンジしていきます。