ヤマトDM便が変わる!DM便を利用中の事業者が行うべき対策とは?
カタログやサンプル等が安い料金で送付できることで、多くのEC事業者に活用されてきたクロネコヤマトDM便の取り扱い品目が、2018年4月1日より変更となった。これにより「受取人さまのご依頼をもとに出荷元から発送される販促物」をDM便で送ることができなくなった。
具体的に何が変わるのか、これまでDM便を利用してきた事業者はどうすれば良いのだろうか。1都3県を中心に全国3位のメール便配達実績を持つ、株式会社ポストウェイ代表取締役 芝 宏彦氏に伺った。ポストウェイでは、来る7月26日(木)にセミナーも開催する。
クロネコヤマトDM便変更の大きなポイント
今回の変更で扱えなくなる「受取人さまのご依頼をもとに、出荷元から発送される販促物」とは、EC事業者で言うと、顧客が申込ボタンを押したり、メールや電話をしたりして、顧客のリクエストに応えてEC店舗から発送する販促物のこと。主にカタログやサンプルなどが該当するだろう。
今回の変更について、ヤマト運輸は「荷物のお問い合わせに適切にお応えできないため」と説明している。実際、受取人の申込により発送する商品サンプルや会報誌などは、配達日など受取人からの問い合わせが多く、ただでさえ人手不足の宅配の現場にあって、対応が難しくなっていたようだ。
ヤマト運輸の公式情報ではこの変更は「2018年4月1日(日)」となっているが、支店や担当者ごとに順次案内を行っており、しばらくは支店によって対応が違うこともあるようだ。ただし、今はとりあえず大丈夫でも、いずれは完全に変更されるので、現在クロネコDM便を利用している事業者は、対応を考える必要がある。
クロネコDM便の代替としては、宅急便コンパクトやネコポス等のサービスがあるが、DM便に比べると料金は大きく上がってしまう。今までDM便を利用してきた販促物について、見直しが必要になるだろう。また、今回の変更は、単なる1サービスの変更ではないと、芝氏は言う。
「クロネコDM便は、2015年3月に、信書に関する問題からクロネコメール便が廃止され、代わりに始まった非信書を送付するサービスです。それが、今までは件数がほしかったので、配送数が多いほど安くなるボリュームディスカウントだったのが、件数が多いから受けられなくなるという風に、理屈が逆転しました」。
その背景には、人手不足と長時間労働の是正があるという。2018年10月に発表された宅急便のサービス・運賃改定にも、同様の背景がある。ヤマト運輸はこれまで、顧客の要望にはコストを度外視しても応える、ある意味「やせ我慢」をしてしまうところがあったそうだ。
「一般的な配送会社は法人向けサービスをベースにしていることが多いのですが、ヤマト運輸の場合、個人向けサービスをベースに法人向けサービスが提供されているという意識が強く、世間の反応にすごく敏感です」。
しかし、それ故に現場に過度の負担を強いているところもあった。その反省から、現場にこれ以上無理をさせられないため、コストに見合ったサービスを提供するという方向にシフトしてきているのだという。
「ヤマト運輸では、DM便の配送は委託で行っていました。しかし、問い合わせがあれば宅配便などを扱うセールスドライバーがフォローせざるを得ません。また、時には配達されないなどの事故もありますが、これまでは、事故を起こさないよう品質維持を目指していました。しかし、今回のDM便の変更で、DM便の値段でやるならば配送の品質は下がる、確実に届けたいものは宅急便やネコポスなどを利用してほしいということを表明し始めたのだと思います」。
現場の負担が大きい状態が続く場合は、今後、さらなるサービスの変更や料金の値上げの可能性もあるだろう。
DM便利用者はどうすれば良いのか
ヤマト運輸がダメなら日本郵便に持って行くという考えもあるかもしれないが、日本郵便でも、低価格のゆうメールなどのサービスでは、配達日の保証や追跡は難しい。配達の保証がほしいならば、料金をプラスしたサービスを利用することになる。やはり、コストに見合ったサービスになるのだ。
では、大手がダメなら、地方のDM配送会社はないのかという話になるかもしれない。しかし、実は過去、郵政民営化が進んでいた時期に、冊子小包郵便物(現在の「ゆうメール」)の料金が引き下げられ、これと競うことができず、地方のDM配送会社が軒並み姿を消してしまったという歴史があるそうだ。
そもそも、かつてのメール便のようなDM配送の形は、ヤマト運輸が基準を作ってきたサービスだ。そのため、「ヤマトの基準が変わるとなれば、弊社もそうですし、業界全体が変わっていく感じになると思います」と芝氏は言う。
これまでのように安い料金で何でもDMで送るというやり方は、今後数年で成り立たなくなっていく可能性が高い。
これまでDMを活用してきた事業者の対応として、「ECの事業者様も費用対効果は常に考えられていると思うので、DMに関する費用が上がるとなれば、これは本当にDMで送るべきものなのか、メールで良いのではないかなど、本当にDMで送るべきものしかやらなくなるということはあるかもしれません」と、芝氏は考えている。
ただ、そもそも今回のDM便の変更についてよく分かっていない、公式発表は知っているけれどどうしたら良いか分からないから対応を保留している、思考停止に陥っているEC事業者も珍しくないそうだ。
ヤマト運輸側も、公式発表は行ったものの、現場レベルではいきなり取り扱い拒否をできず、徐々に変わっているという状況がある。
「年単位で振り返ってみるとあの時そうだったんだという、気づいたら大きく流れが変わっていたという話になると思います」と芝氏は言う。
そのため、すぐに影響はなくとも、今対応しておかないといつの間にか時代の流れに取り残されるという事態になりかねない。
これからのDM施策に必要なこと
ポストウェイでは、首都圏の1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に特化した「ポストウェイメール便」を提供している。1都3県に関しては特別料金で配送可能なため、このエリアに顧客の多い企業に重宝されている。平成28年度のメール便取扱冊数は94,904,000冊で、全国第3位の実績だ。
1都3県以外でも、ヤマト運輸や日本郵便のサービスを利用して、全国配送にも対応している。そういったところからも、今回のクロネコDM便の変更に関する事情に詳しく、事業者からの問い合わせもあるそうだ。
ヤマト運輸の公式発表はあったものの、現場レベルでは支店や営業所ごとに順次案内、対応となっているため、今回の変更で何がどう変わるのかが分かりにくい。ポストウェイでは、そういった事業者の問題認識の場となるセミナーを、2018年7月26日(木)に開催する。
「『基本のルールが変更』ということをベースに、目の前の細かな変化について話をしたいと思っています。自社としてどのように考えていくかというスタンスが決まらないと、何もできないので、思考停止に陥らないよう、全体の枠組みとしてどういう変化が起こって、どういう方向に向かっているのかということを考えることのできる場になると思います」と芝氏。
冒頭で述べたように、今回の変更は単なる1サービスの変更というわけではなく、人手不足への対策、働き方の改善といった、業界全体の変動が背景にあり、そこから派生した変化となっている。この流れをつかんでおかないと、目の前の変化に対応しようとしても、失敗してしまう。
特に、これまでクロネコDM便を活用してきた事業者にはぜひ参加していただきたい。また、ポストウェイは1都3県に強い企業なので、ここに顧客が多いという事業者も役立つことが多いはずだ。
【DM荷主様限定】ヤマトDM便が変わる!
〜DM便を利用中の事業者が行うべき対策セミナー〜
日時:2018年7月26日(木)15:00〜
会場:ビジョンセンター田町 405号室
住所:東京都港区芝5-31-19 ラウンドクロス田町 4階