サブスクリプションが日本のECを変える!お菓子のサブスク『Tokyo Treat Shop』
「越境EC」「サブスクリプション」「コミュニティーマーケティング」。これらは、日本のEC業界においては比較的新しい施策であり、今取り組めている企業が多いかと言えばそうではない。
そうした企業が多い中で、海外向けECサイト「Tokyo Treat Shop」でお菓子のサブスクリプションサービスを提供し、業績を伸ばしているのが合同会社ムーブファスト(以下、ムーブファスト)だ。今回、同社で商品企画を担当する鈴木健徳氏に話を伺った。
お菓子のサブスクTokyo Treat Shop
ムーブファストが運営する『Tokyo Treat Shop』はECプラットフォーム提供の経験がある代表の近本氏が”日本の文化を世界へ発信したい”とスタートさせたサブスクリプション型のECサイトだ。現在、米国を中心に120か国へと出荷を行っている。
サブスクリプションと言えば、定期購入の一種で1人のユーザーが継続的に商品を購入するものだが、ムーブファストが提供する日本の文化とはなんと”日本のお菓子”。お菓子と言っても日本に住んでいれば、コンビニやスーパーで見かけるようなスナック菓子などだ。
「毎月テーマを決めて、そのテーマに合わせたお菓子やドリンクを詰めているのですが、商品の選定には1ヶ月はかかりますね。私が入社した時、最初は何も考えずに新商品ばかり入れてみたんです。その際に『一つ一つの商品が良くてもボックスを開けた時のインパクトやテーマ性がないと、ごちゃっとして、良いものに見えなくなってしまう』と代表に言われたんです。
『Tokyo Treat』は、基本的に1ヶ月で3,800円程になるのですが、日本人の感覚でいうと1ヶ月で3,800円は高いじゃないですか。ですから、購入される方々にとって珍しいものや払う価値のあるラインナップを提供しなければならないんです。」
そう鈴木氏が語るように、『Tokyo Treat』のボックスが作り上げられるまでには、購入してくれた会員に対して価値を提供するため、そしてビジネスをしていく上でも様々な調整がなされている。
「季節やテーマも大事なのですが、珍しいフレーバーや限定商品など、いかにインパクトのある商品を入れるかという部分も意識しています。常に卸やメーカーと連絡を取り合い、発売情報や終売情報をいかに前倒しで入れるかが重要ですね。テーマとラインナップ、そして予算組。結構こまごまとした調整が必要なんです。」
その他にも、シェアパック枠やドリンク枠、機能性を持つお菓子の枠などを設け、パズルのように商品の選定をしていくのだという。
”データファースト”を大切に
バイヤーとしてムーブファストに入社した鈴木氏ではあるが、同社では販売する商品を選定する上で他社とは異なるポリシーを持っているのだと語ってくれた。
「商品の選定にあたって、弊社では”データファースト”を大切にしているんです。普通、バイヤーはバイヤー自身が売れると思ったものを販売しようとするのですが、この会社ではそれがNGなんです。会員の意見をデータとして取り、活用をしています。他所で売れているということと、Tokyo Treat Shopの会員に合っているかは別の話ですから。
というのも、昔一回抹茶ボックスというのをやったらしいのですが、すごくいい評価と悪い評価で真っ二つに割れたらしいんです。中国では大人気なんですがね。
逆に中国と同じように人気なのはインターナショナルブランドで日本限定のフレーバーですね。海外のブランドでも日本でしか食べられないものにはとても興味があるようです。」
サブスクリプションと越境ECの難しさ
継続するユーザーが増えれば増えるほど新規獲得のコストが下がるサブスクリプションモデルだが、そこには継続してもらうことへの難しさがあるという。
「サブスクリプションモデル全てに共通することだと思いますが、解約するということは興味がなくなったり、お金が高く感じたということ。お金の部分は経済的な事情もあると思うんですけど、興味の部分に関しては、購買意欲を掻き立てられるようなものがあれば、解約率を下げられる可能性はまだまだあります。」
ここまで話を伺っていると、越境ECであることを苦とせずに運営をしているように思えるが、実際にはどのような課題を持っているのだろうか。
「基本的に商品の選定に制限はないのですが、米国の場合、商品の成分表に”meat”や”chicken”という表記があると、検疫で引っかかってしまうんです。これが中国や欧州との違いでしょうか。あとはもう社内の問題で代表の近本からいかにボックスの中身にOKをもらうかですね(笑)」
サブスクリプションの可能性は無限大!
「サブスクリプションは日本ではまだ馴染みがないですけど、海外で販売する際、モールに出店して販売するのではなく、自分でセレクトして送るという通販のあり方もあるということは、多くの方に知ってもらいたいですね。
世界の人口は70億人。中国は面白いのですが、ハードルが高いですし、決まったものしか売れない印象があります。ですが、その中国を除いても55億人を相手にビジネスができるということです。日本の55倍の規模を相手に日本のものを届けるのはすごく面白いなと思います。現在は、私たちバイヤーが選んだお菓子を送る形式ですが、お客様を納得させられるようなものを送ることができるのであれば、様々な見せ方ができると思います。」
それぞれの商品がもともと持っている強みに、テーマ性や物語を加えることで、無限大の可能性も持つサブスクリプションモデル。そこに鈴木氏は日本経済の発展を見出しているのだという。
「今後、日本の存在やお菓子が注目されればされるほど、日本のビジネスはもっと伸びるんじゃないかと思いますね。日本のお菓子の魅力って日本のことが好きな人しか伝わっていないですが、そういう人たちから波及して、日本に興味のない人も日本のお菓子に興味を持ってくれたら嬉しいなと思います。
それこそ、インバウンドの影響もありますし、日本のファンが増えて経済が回っていけばいいなと。Tokyo Treat Shopはまだ始まったばかりのビジネスですが、是非注目してほしいなと思います。」