物流設備も「シェア」する時代!最新鋭機器や倉庫スペースを従量課金制で安価に使える。日立物流のEC物流サービスが登場。
モノやサービスを複数のユーザーが共同で利用する「シェアリングエコノミー」が、EC業界でも広がり始めた。3PL大手の日立物流は今年、最新鋭の物流設備や倉庫スペースを複数のEC事業者が共同で利用する「シェアリング型プラットフォームセンター」の稼働を開始する。自動化設備やIoT機器、AI搭載システムなどを、従量課金制で利用できるのが特徴だ。2019年9月に予定している本格稼働を控え、すでに多くのEC事業者から問い合わせが寄せられているという。ECの課題を解決し、物流品質を高める「シェアリング型プラットフォームセンター」の全容について、日立物流・営業開発本部サプライチェーン・ソリューション2部の高柳直人氏らに話を聞いた。
新時代のEC物流「シェアリング型プラットフォームセンター」とは?
――「シェアリング型プラットフォームセンター」とは、どのような物流サービスなのでしょうか?
高柳直人氏(以下、高柳):最新鋭の省人化設備や物流システム、倉庫スペース、倉庫内スタッフなどを、複数のEC事業者が共同で利用する物流サービスです。
通常であれば莫大な初期投資が必要な最新鋭設備を、従量課金制で利用できることが最大のメリット。そして、倉庫の自動化や省人化を通じて業務を効率化するとともに、倉庫スペースや倉庫内スタッフも共有化することで、荷主さまのトータルの物流費を抑制します。
2019年9月に埼玉県春日部市内で「シェアリング型プラットフォームセンター」の拠点第1号が稼働する予定です。その後、拠点を全国に広げていきます。
――「シェアリング型プラットフォームセンター」の倉庫には、どのような物流設備が導入されるのでしょうか?
高柳:自動梱包ラインや自立運転型の運搬ロボット、AIを活用した在庫最適化システムなど、弊社の強みであるIoTとロボティクスを組み合わせた「スマートロジスティクス」の設備を導入します。また、倉庫内で同梱チラシのオンデマンド印刷を行うなど、荷主さまの売上拡大やLTV(Life Time Value)の向上につながる付加価値サービスも提供します。
単独で物流設備への投資が難しかったスタートアップ企業や中小企業は、「シェアリング型プラットフォームセンター」を利用することで、物流の品質向上が実現可能です。
物流コストの抑制とサービス向上を両立
――物流設備や倉庫スペース、倉庫内スタッフなどを複数の荷主がシェアすることで、1社当たりの物流コストの抑制が期待できそうですね。
高柳:はい。単独で設備投資を行う場合と比べて、荷主さまが負担するトータルの物流費は下がると試算しています。また、倉庫内の管理者や作業人員、作業スペースなどをシェアすることにより、コストを抑制できるだけではなく、人材採用やシフト管理の負担も軽減されるでしょう。
――物流の品質向上と、コスト面でのメリットが両立する、というわけですね。
高柳:その通りです。荷物の出荷個数が1日当たり100〜3000件程度の荷主さまは、特にメリットを実感していただけると思いますよ。
「シェアリング型プラットフォームセンター」の利用企業の商品ジャンルは問いませんが、オペレーションを標準化する関係上、化粧品やサプリメントなど定期購買商品だと、より高い効果を得られると考えています。
宅配クライシスの解決へ、多くのEC事業者が期待
――「シェアリング型プラットフォームセンター」を開始するのは、なぜでしょうか?
芦沢恭平氏(以下、芦沢):倉庫スタッフの人件費の高騰や、配送会社による運賃の値上げなど、ECビジネスにおける物流環境も厳しさを増しています。こうした中で、荷主さまのコスト負担を抑えながら、質の高い物流を実現するには、物流設備をシェアする仕組みが不可欠だと考えました。
スタートアップ企業や中小EC事業者は、倉庫内の省人化や自動化を進めるための設備投資を行いたくても、莫大な初期投資がネックとなり、なかなか実行できません。その課題を解決するために「シェアリング型プラットフォームセンター」を立ち上げます。
――EC事業者にとって利便性が高い物流の仕組みですから、期待を寄せているEC事業者も多いのではありませんか?
小川菜絵氏(以下、小川):多くの荷主さまが期待してくださっていると、感じています。「シェアリング型プラットフォームセンター」の構想を荷主さまにお伝えすると、多くの方が興味を持ってくださいますし、すでに数社は利用を前提に準備を進めています。
AIやIoTを活用した「スマートロジスティクス」でEC物流を改善
――日立物流は、AIやIoTを活用し、倉庫内の自動化や省人化などを実現する「スマートロジスティクス」が特徴です。「シェアリング型プラットフォームセンター」にも生かされているという「スマートロジスティクス」について、あらためて教えてください。
高柳:「スマートロジスティクス」の特徴は、先端技術で「効率性」 と 「柔軟性」 を両立させることにあります。例えば、自動梱包ラインや自立運転ロボットなどを活用して倉庫内の自動化・省人化を図るほか、AIを活用して在庫管理や需要予測、物流拠点配置の最適化などを行います。
画像認識/ロボティクス技術を活用し検品レス/緩衝材自動投入を図るなど、生産性向上にも取り組んで参ります。
――物流効率を最大化するための、物流オペレーション設計も支援していると聞きました。
小川:荷主さまのビジネスモデルや業務の現状を分析した上で、物流効率を最大化するための物流拠点選びや配送会社の選定をサポートしています。弊社は全国約333カ所に物流拠点を展開しており、約20拠点でECや通販の荷物を扱っています。荷主さまが持つビッグデータをAIで分析し、さまざまな配送ルートをシミュレーションすることで、最適な拠点配置と配送ルート、倉庫内オペレーションを構築します。
宅配クライシスを乗り切るために「拠点最適化」を推進
――日立物流はBtoB物流が主力事業ですが、EC向け物流も強化しているそうですね。
芦沢:はい。近年はEC物流にも注力しており、2018年にはEC専用倉庫を4拠点、新たに開設しました。
これまで国内外で培ってきたBtoB物流の経験や「スマートロジスティクス」を、EC物流にも生かしています。
――EC業界全体に目を向けると、いわゆる「宅配クライシス」が深刻化しています。「宅配クライシス」を乗り切るために、どのようなことに取り組んでいますか?
高柳:企業ごとに、物流拠点の配置を最適化することが、「宅配クライシス」を乗り切る重要なポイントだと考えています。
宅配会社の配送キャパシティは、地域ごとに上限があります。そのため、EC事業者が倉庫を1カ所に限定してしまうと、その地域の配送会社が荷物を受け取ってくれなくなったら、ビジネスが止まってしまう。弊社が荷主さまの物流拠点をシミュレーションする際は、こうした配送のリスクも考慮して拠点を選択、提案します。
事業継続性の観点からも、物流拠点を分散し、いざとなったら拠点を移せるようにしておくことが、今後は重要になるでしょう。
――大手配送会社と連携し、出荷個数の最大化を図っていると聞きました。
芦沢:そうですね。例えば、倉庫内で荷物を出荷地別に仕分けるなど、以前は配送会社が担っていた業務の一部を弊社が代行することで、出来るだけ多くの荷物を運んでもらえるようにしています。
「宅配クライシス」を乗り切るためには、こうした取り組みの積み重ねが必要だと考えています。
――ECを取り巻く環境の変化に合わせて、ソフトとハードの両面で対応することが必要なのですね。
高柳:その通りだと思います。弊社は、荷主さまからの要望を出来る限り取り入れながら、物流を常に改善し続けています。荷主さまと一緒に、物流をより良いものへと進化させ、荷主さまの業績拡大を支援していきたいと考えていますので、物流に課題を抱えている事業者さまは、ぜひご相談ください。
また、日立物流は今春行われる【第7回通販ソリューション展 】にも参加する。
そこでは、日立物流の「シェアリング型プラットフォームセンター」について担当者に直接話を聞くことができる。
この機会に是非、足を運んでみてはいかがだろうか。
【日程】
5/8(水)10時~18時
5/9(木)10時~18時
5/10(金)10時~17時
会場:東京ビッグサイト(西ホール)