eBay、2019年の動向が明らかに。Qoo10買収を経て目指すは「コネクテッドコマース」の実現

利根川 舞 [PR]

イーベイジャパン合同会社 コミュニケーション室長 テーウン・キム氏 eBay Japan合同会社 コミュニケーション室長 テーウン・キム氏

9月の取材ではeBayの歴史と今後について語られ、その中でeBayが大切にしていることの一つとして語られた「コネクテッドコマース」。日本ではまだ耳馴染みのない「コネクテッドコマース」という言葉ではあるが、今年行われた「Qoo10」の日本事業買収を経て、どのように「コネクテッドコマース」を進めていくのか。eBay Japan合同会社 コミュニケーション室長 キム・テーウン氏に話を伺った。

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eBayが掲げる「コネクテッドコマース」とは?

ーー日本だと「コネクテッドコマース」という言葉はまだ馴染みのないものだと思うのですが、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか。

キム 「コネクテッドコマース」という言葉は、会社や立場によっていろいろな意味を持っているかもしれませんね。たとえば、eBayの場合ですと、設立後プラットフォーム上に購入者がプラットフォームに事前に支払った代金を、購入者が商品を受け取ってから、販売者に代金が支払われるエスクローの仕組みを取り入れ、現在でいうイーコマースの基礎を作り上げました。実店舗で買い物をするのではなく、お互いの顔を知らずともプラットフォーム上で買い物ができる。これが創業当時eBayに実現させた「コネクテッドコマース」です。

そして、現在eBayが掲げている「コネクテッドコマース」は、創業当時のものとは少し変わってきていて、3つの要素が含まれていると思います。


まず1つめが”越境EC”です。当時のコネクテッドコマースには越境ECの概念はまだありませんでした。しかし越境ECが特別なものではなくなった今、お客様がどの国に住んでいても、欲しいものを買える環境がないとそれはもうECサイトである意味がないのではないでしょうか。

2つめは”決済”です。決済機能がないプラットフォームはもう意味がないですし、さらにはその決済機能も越境ECに対応しているものでないと意味がありません。

そして3つめはやはり実店舗とECサイトの”ハイブリット店舗”の存在です。現在、百貨店やスーパーマーケットでもECサイトを運営するケースが多くなっています。しかし、もともとの得意としてるビジネスはECではありませんから、あまり上手くいかず、お客様の満足度を、かえって下げてしますこともあります。逆にもしeBayが実店舗を作ったとしても、百貨店やコンビニのように上手くはいかないでしょう。ですから、両者を上手く組み合わせてお客様が好きな店舗でプラットフォーム上の決済手段を利用しながらショッピング体験を提供できるようハイブリッドなコマース、これこそが本当の「コネクテッドコマース」だと思います。

これからは、これらの3つの要素を全部合わせていかないと、ECどころか小売業としても生き残ることができなくなります。もちろんeBayもQoo10もその要素を満たせるように改革を行っていきます。

コネクテッドコマースは世界ではすでに当たり前?

コネクテッドコマースは世界ではすでに当たり前?韓国でeBayが運営しているサービスロゴ

ーー世界ではすでに「コネクテッドコマース」の考えが普及しているということですが、具体的にはどのようなことが行われているのでしょうか?

キム 例えば5、6年前、韓国の小売業界は日本と同じような状況で、大手小売業者や有名百貨店はECをやりたいものの、大きな投資が必要なため上手くいかないという課題を抱えていました。

その一方で、イーベイ・コリアが運営するGmarketは韓国のEC市場で大きなシェアを占めてはいるものの、試着や直接商品を見る、という経験を提供できず、商品のジャンルによっては、お客様は実店舗に流れてしまうという課題を持っていたんです。つまり、実店舗とGmarketは、ある意味、競争関係にありました。

しかし、今ではGmarket上で数々の有名百貨店が出店しショップが運営されています。以前では考えられなかったことですが、今ではもう常識になってきており、例えば、韓国の最大手百貨店であるロッテ百貨店や大手スーパーマーケットも出店しています

これにより、Gmarketとしては、お客様に実店舗での経験を提供できるようになりました。Gmarket上で見たものを実店舗で見たり試着をしたりして、Gmarketが提供する決済手段を利用して購入する。しかも、オンラインで発行されたクーポンも利用できるというハイブリットな体験です。

また、最近では「コネクテッドコマース」がさらに発達しています。韓国の大手ベーカリーチェーンではGmarketでケーキやパンを見て、Gmarket上で決済することができます。決済後に発行されるコードを持って実店舗に行くと、韓国に何千店舗もある店舗のどこへ行ってもその商品と引き換えることができるのです。これは利益というよりも、お客様の囲い込みを重視しているんです。

どうやってお客様を囲い込むかというのは、日本の小売業界にとっても大きな課題だと思いますが、解決するためには日本でも、ハイブリット形式でやっていくことが一番合理的なのではないかとeBayでは考えているわけです。

「コネクテッドコマース」実現に向けてQoo10のポテンシャルの高さに注目

「コネクテッドコマース」実現に向けてQoo10のポテンシャルの高さに注目

ーーハイブリットコマースの実現を加速させるために、日本ですでに展開していたQoo10に注目されたわけですね?

キム 日本なら技術やアイディアで常識をディスラプト(破壊)するようなものができるんじゃないかとeBay CEOであるデビン・ウェニグも考えているんです。Qoo10はeBayに比べて組織も小さいですし日本のEC市場内でのシェアもまだ小さいので、小回りが利く分、韓国では考えつかなかったことが自由にできる環境です。

実際、Qoo10はeBayが買収する前から、トレンドに敏感でしたし、何よりもプロダクトを作る開発組織の動きがすごく早いんです。この機敏さは、営業と開発のコミュニケーションの早さにあるんじゃないかと思うんです。

Qoo10の組織の良さは、機敏に動ける大きさで、さらにはスタートアップの精神がまだ残っていることです。この機敏さを無くさずにQoo10が成長できるよう、何が何でも頑張っていきますよ。私たちは他社さんと同じ様になるためにQoo10を運営しているわけではありません。これまでにない新しい道をつくっていくことがイノベーションを起こす唯一の道だと思っていますから。

実は最近、急成長しているQoo10の現場を一目見たいというeBay本社のリーダーたちがeBay本社から視察に来るんです。しかし、この成長は組織文化とも言える機敏さが要になっているわけですから、ノウハウを説明して欲しいと言われても難しいところがありますね(笑)。

成長と言えば最近嬉しかったことがあって。ある企業さんが実施された「2018年版:スマートフォン利用者実態調査」という調査内の「よく利用するショッピングサイト・アプリ」の上位10位にQoo10がランクインしていたんです。テレビCMなどのキャンペーンで認知度が上がったこともありますが、Qoo10の成長の早さが表れていると思っています。

eBayとQoo10が目指すボーダーレスなコマース体験

eBayとQoo10が目指すボーダーレスなコマース体験

ーー「コネクテッドコマース」の実現に向けては具体的にどのような取り組みをされていくのでしょうか。

キム これまでの10年間、eBayは日本国内において、日本のセラーさんが世界で商品を販売できるようにする越境ECの支援ビジネスをしてきました。eBayとしては日本に対する期待感がすごく大きい状況です。、今後は、越境ECの支援ビジネス(イーベイ・ジャパン株式会社)と、日本のインターネット総合ショッピングモール「Qoo10」(eBay Japan合同会社)が連携することによって、日本の質の良い商品を各国のeBayやGmarket、その他にもまだ販売していないプラットフォームで販売するなど、形に囚われないコマースを作れるのではないかと考えています。

ーーすでに世界中でビジネスをしているeBayが、日本を基軸に世界へ商品を販売する。とても大きなミッションですね。

キム そうですね。でも日本だからこそかもしれません。日本の商品や日本企業に対する信頼性は世界的に高い。それはeBayという会社にとっても同じで、イーベイ・ジャパンにもQoo10にも信頼がある状態です。この日本でECをさらに発達させて、発信できれば世界中の人たちは信頼を持った上で商品を購入してくれるようになるでしょう。

ーーでは、直近の2019年はどのような取り組みをされるのでしょうか?

キム ECはビジネス規模が大きくならないと、できることがあまりないんです。可能な限り成長をしないと、バイヤー(買い手)・セラー(売り手)へメリットの提供ができません。また、テクノロジーの革新もできません。ですから、この1年くらいはマーケットシェアをできるだけ拡大し、eBayとQoo10というブランドの認知向上に注力していきます。

そして、いずれはeBayとQoo10のサイトでボーダーレスな販売が出来るようイーベイ・ジャパン株式会社とeBay Japan合同会社の連携を強化していきます。私たち自身がボーダーレスな仕組みで動くことで、セラーさんたちにもボーダーレスな環境を提供できると思っています。

今すぐではないとは思いますが、Qoo10のセラーさんたちとeBayのセラーさんたちが相互のプラットフォームで販売できる環境の実現は、そんなに遠くない未来だと思います。

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記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

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EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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